「996」に苦しむ中国労働者はまず「資本論」を学ぶべきだ

 昨夜のNHK BS 国際報道の中で報じられていた中国の労働者の実状の紹介で、「996」というキーワードがネット上で飛び交っているという話であった。それは、毎日朝9時から夜9時まで、週6日間働かされている労働者の実状を示している。中国では重厚長大産業が生産過剰で失業者が増えている一方で急速に成長しているIT産業では人手不足で、労働者の過重労働が深刻な問題になっている。街でのインタビューでは、996よりもっとひどい状態で働かされたり、過労で情緒不安定となって街頭で叫んでいる若者が映っていた。

 NHKの司会者も、「社会主義国」の中国でありながら、こうした状況があるのは信じがたいことでもあるが、労働組合はトップダウンの共産党直轄で労働者自らのボトムアップ的結束による形ではなく、労働者の立場を護ってくれていない。しかも市場経済における競争の激化で、企業の経営者も例えば「アリババ」のジャック・マー会長が「996」で文句を言ってる様な場合じゃないぞ、とネットで語っているように労働者を酷使しないと勝てない状況にあると述べていた。こうした状況に当然のことであるが中国の労働者たちは大きな不満を抱いており、労働者自らの手で労働組合をつくる動きもでてきているらしい。

 一方では、トランプと習近平による高関税の掛け合いという「貿易戦争」で米中貿易がどんどん縮小しつつあり、中国製の安価な生活消費財に頼っているアメリカの労働者階級も賃金水準が頭打ちになる中で生活が苦しくなるだろう。そしてアメリカでデザインされ、部品を日本で作り、アッセンブリーを中国で行って完成品をアメリカが輸入する形で世界市場で売りまくっている米アップル社のiPhoneも、ただでさえ「ブランド価値」を利用した高額な販売体制が高額関税で成り行かなくなる可能性もある。そうなるとアップルに部品を調達している日本の企業も苦しい経営となり、工場閉鎖も出てくるとそこで働く多くの労働者は「雇い止め」となる可能性が強い。

 要するに中国労働者の「996」は人ごとではないのである。中国を含め各国の資本家たちが世界市場でしのぎを削る馬鹿げた競争に勝つために、世界中の労働者が犠牲になっているのである。日本でも企業の国際競争力をつけるために法人税は上げないで、乏しい給料で生活する労働者(特に2000万人以上の非正規雇用労働者)およびかつて高度成長期に資本家にボロ儲けをさせてあげた旧労働者である年金生活者たちは、年金だけでは生きていけないことを政府も認めていながら(首相だけは認めていないがこれは事実である)、もうすぐ消費税を上げられてますます生活や老後の人生が危うくなりつつあるのだ。

 いま必要なことは、世界中で労働者階級を窮地に陥れているグローバル資本による、自然破壊をもたらす様な馬鹿げた市場競争に歯止めをかけるために世界中の労働者階級が結束することなのではないだろうか?「そんなことはできっこない」というならば、せめて「社会主義国」中国の労働者はマルクスを学び直すべきである。

 いまの中国ではマルクスの資本論に結実している資本主義経済体制への徹底した批判のもとで生みだされた社会主義思想が、かつてのソ連や中国の共産党指導部による改ざんによってまったくご都合主義的にねじ曲げられ、「社会主義市場経済」などという偽物の理論が主流になっている。中国はいま街に消費財商品が溢れていながら、労働者階級は国際市場で稼ぎまくる資本家企業に雇用されてそこから受け取る賃金によってただ毎日その消費財を買わされて生きていくという生活になっている。しかしよく考えてみれば、その生活消費財は自分たち労働者自身が工場で作り出したものではないか?企業からもらった賃金はその自分たちの作った生活消費財を「買い戻す」ことで再び労働力を養うために企業から「前貸し」された資本の貨幣形態でしかないという事実に気づくだろう。

 そしてこうして労働力を日々再生産するためにそれに必要な賃金を得るため自分の労働力を企業に売らなければ(企業に雇用されなければ)生きて行けない状況が資本主義体制の階級制そのもであること、だからジャック・マーの様な雇用者である資本家経営者が労働者に脅し文句をいえば、クビになったら困るからしんどいけども我慢して働かねばならない、と思わせられてしまうのである。これではいくら資本家たちの「経済成長」が進んでも、労働者階級はいつまでたっても「賃金奴隷」から解放されることはない。

 自分たちが生活を築き上げていくために何が必要であり、それをどのくらい作ればよいか、という判断はあくまでそれを生みだす労働者自身が行うべき事であって、労働とそれに必要な手段を労働者自身が支配することが必要なのだ。雇用主の資本家を競争に勝たせるために労働するのではない。資本家は労働者予備軍に「雇用」を創出してくれるのではない。労働者を雇用して「賃金をもたらしてくれる仕事」を生みだすように見えるのは、社会的な労働を行うために必須の生産手段を資本家階級があらかじめ労働者の手から取り上げて占有しているからなのである。

 こうした賃金奴隷状況から解放されるための指針を与えてくれる最良の理論こそがマルクスの「資本論」なのである。

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2019年6月20日 (木)

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 次の大統領選挙での勝利を目指してトランプがフロリダで出陣式を行った。そして例の"Make America Great"に代わって"Keep America Great"を次のスローガンに掲げた。すでにオレがアメリカを偉大にしたのだからそれをこれからも維持しよう、という意味らしい。  しかし、いまの...

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2019年6月18日 (火)

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 現在、いわゆるリベラル派(その実体はさまざまであるが)の政党を中心として、現状で2000万人(パートタイマーを含めて)といわれるような非正規雇用労働者を正規雇用化させる要求が政治運動の一つの大きなテーマになっているように見える。だがほんとうにそれでよいのだろうか?  高度成長時代には終身雇用が主だ...

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2019年5月28日 (火)

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2019年5月24日 (金)

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2019年5月20日 (月)

経済成長ってナニ?(基本的問題について考えよう:1)

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2019年5月17日 (金)

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 最近Modern Monetary Theoryなる理論がまかり通っているらしい。今朝の朝日新聞「投資透視」欄でも野村證券の人が取り上げていたが、「インフレを招かないかぎり財政赤字は心配ない」という考え方らしい。巨額の政府借金を抱えて低金利、低インフレが続いていても経済破綻せず、「円」も安定してい...

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2019年5月 9日 (木)

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2019年4月30日 (火)

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2019年4月10日 (水)

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«市場経済型民主主義の矛盾