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2007年4月24日 (火)

Made in India

先月インドに初めて旅行した。私の友人のインテリアデザイナーI さんがP氏が経営する インドの会社を通じてインテリア用品のデザインをしており、たびたびインドに行くので一度一緒に連れて行ってもらおうと考えたのがきっかけであった。

夕暮れのデリー周辺の街では、猛烈な交通ラッシュに驚いた。普通のクルマはもちろんのこと、小型オート3輪タクシーやバイクが10センチでも先に割り込もうとクラクションを鳴らして猛烈なせめぎ合うをやり合う。そこに大型のトラックやボディーがベコベコになって窓ガラスもないバスが小型車をかき分けながら割り込んでくる。車線の真ん中には牛が交通ラッシュなどどこ吹く風かと言わんばかりにのんびり寝ころんでいるのでクルマはそれをよけて通らねばならない。そしてそれらの間隙を縫って歩行者が乱れ歩く、といった具合である。交差点で信号待ちしていると、どこからともなくぼろを纏って幼い子供を抱いた物乞いたちが現れ、クルマを取り巻いて窓をトントンと叩く。悲しそうだがきつい視線で中にいる私を見つめ、金をくれとせがむのである。私は目にやり場に困った。

ようやく信号が青になってクルマが走り出し、ホッとするが、窓外の町並みは、貧しい。ほとんど崩れかかったような2階建てに煉瓦積みの家並みが続き、窓ガラスもない部屋の中は外から丸見えである。そしてやたらと多い人間の数。用もなさそうなのにブラブラ歩いている人たち、露天の周りでしゃがんで何か食べながら仲間と話をしている人たち、路上にツバを吐きながらいいカモはいないかとねらっているような目つきの良くない人たち、哲学者のような容貌の孤独で貧しそうな老人などなど。

しばらく公園のような樹木の多い地区を過ぎて、番人の居る踏切のようなゲートを通過すると、その中は高級住宅地区であった。入り組んだ城下町のような道を何度も曲がって、ようやくインド人実業家のP氏の邸宅に着いた。

邸宅の前でヘッドライトを上向きにすると、門番がガラガラと大きな門扉を開けた。中にはいるとそこには高級車が何台も駐車している。それぞれ家族のクルマだそうである。それに専属の運転手もいるらしい。美しいサリーを着た家族の女性たちに案内されて、入った邸宅の中は、どう見ても我が家の10倍くらいの広さである。広いホールを挟んで大きなキッチンとダイニングが2つづつあり、状況に応じていろいろと使い分けているのだそうだ。親や兄弟家族も一緒に住んでいるので、大家族である。食事は専属の料理人がおり、いつでもすぐに用意してくれるらしい。インテリアはちょっとクラシックで、派手ではないが贅沢な造りである。朝になると庭に野生のクジャクがやってくるそうである。P家の人々は実に親切で明るく感じの良い人たちであった。

インド製の絨毯や家具などは、欧米や日本で安くて良質なデザインのインテリアグッズとして人気があるが、それがどのようにして作られているのかはあまり考えたこともなかった。P氏は、このような先進国の買い手の要望に応じて日本人デザイナーにデザインさせ、インド人職人の安い労働力で作らせた絨毯などを日本や欧米に売り込むことで富を築いたのであろう。

わずか数時間の間に、デリーの街角でかいま見た下層庶民の生活と、上流階級の人たちの生活のあまりにかけ離れた世界。これがインドの現実なのだと少なからずショックを感じた。そしてわれわれ日本人もインテリアデザインという「個人的な趣味の世界」においてこのインドの現実にコミットしているのである。インド人職人たちの生活を実際に見る機会はなかったが、おそらくは、下層階級に属する人々であろう。インドでは古いカースト制が残存していてそれがインド社会発展のための大きなネックになっていると聞いたことがあるが、実はそのカースト制をうまく利用しているのではないだろうかという疑問も湧いた。

その後のインド旅行中でも、いろいろと考えさせられることが多かったのである。

デリー近郊の市街地にて

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