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2007年4月28日 (土)

Viva Kerala ! -(1)

インド旅行記はいよいよ佳境に入る。

デリーからムンバイ経由の国内便で2時間ほど南に飛ぶとケララ州の港町コーチン(コチともいう)である。ここはかつて大航海時代を切り拓いたヴァスコ・ダ・ガマが不慮の死を遂げた場所であり、その後、ポルトガルなどを通じてカトリックが入り込み、いまだにキリスト教徒の多い地域である。またオランダ、イギリスなどによる香辛料争奪戦が繰り広げられたところでもある。コーチンの街はクルマで通り抜けただけであったが、デリー周辺に比べるとこざっぱりした町並みで、ものすごい交通ラッシュもなく、あの物乞いの姿も見えない。街には大きなカテドラルがあったりしてどことなくヨーロッパ風である。まず最初に気になったのは、街のあちこちにある看板の、デリー周辺では見なかった不思議な文字である。その渦巻き状の文字は、後にマラヤラム語というケララ地域特有の言語の文字であることが分かった。コーチンからクルマで40分ほどのところにバックウオータと呼ばれている水郷地帯で有名なアレッピー(アレップラともいう)という街がある。アレッピーに向かう途中は、田園の中に所々ヤシの木が生い茂るのどかな農村地帯である。街道筋から細い道を折れ、水田地帯をしばらく走ったあと大きな運河縁の空き地でクルマを降りると、やがて対岸から客を乗せて渡し舟がやってきた。古い手漕ぎの木造舟である。ちょうど矢切の渡しのような雰囲気である。舟に乗ると船頭が一本櫓でゆっくりと漕ぎだした。あたりは夕暮れ時で舟の櫓がたてる水音以外に聞こえてくるのは、少し離れた場所から聞こえてくる「バチン、バチン」という不思議な音だけであった。両岸はヤシの生い茂った林が続き、木の間越しに農家が散在しているのが見えた。水面にはホテイアオイという浮き草が島のようにいくつも群生して漂っている。やがて対岸の民宿の岸壁に着き、舟を降りた。そこで対岸の農家のあたりで白っぽいサリーを着た年配の女性らしい人が洗濯物を石に叩き付ける昔ながらの「タタキ洗濯」をやっているのが見えた。さきほどの「バチン、バチン」という音の出所はこれであった。

民宿エメラルド・アイルの門をくぐるとさまざまな種類の熱帯樹の繁る広い敷地の奥に小さな広場を取り囲むような不思議な形をした瓦葺きの建物が見えてきた。民宿の主と2人のスタッフは、大変親切に出迎えてくれ、4部屋のうち3つが空いているので適当に入ってくれといって案内してくれた。残る一部屋にはフランス人のグループが泊まっていた。説明によると、この建物は主の祖父が150年も前に建てた古い木造建築で、それを大切にメンテしながら使っているのだそうだ。コの字型の間取りも面白いが、広場に面した部屋の前は深い庇が出ていて、その下の空間にはベンチが置いてあり、夕涼みができるようになっている。寝室の奥のドアを開けるとシャワールームとトイレがあり、大変清潔であった。さらにその奥にオープンエアーの露天シャワーがあった。私は夜暗くなってから、この露天シャワーで頭上の月を眺めながら体を洗ったが、実に快適であった。この建物には、昔、穀物などを貯蔵したらしい床の高い小部屋があり、そこは絵が掛けられていて小さなギャラリーのようになっていた。

そして夕食である。南インドではさぞかし辛い香辛料を使った食べ物が出てくることだろうと覚悟していたら、予想に反してマイルドでさっぱりとしたカレーであった。細かく切り刻んだ野菜をペースにしたカレーをチャパティーやナンに乗せて食べるのであるが、ご飯もある。このご飯が、あの細長いインディカ米かと思いきや、まるっこくて大きくしかもふんわりとしたお米のご飯なのである。インド製のビールKing Fischerもちょうど中国の青島ビールのような軽さでさっぱりしてうまかった。ここの食事は、あの北インドのバイキンマンと強烈な「特効薬」のパンチのために弱っていた私の胃腸にはまことにマッチしていたのである。おまけにここで出されるマサラティーがまた美味しかった。さらに驚いたことには、熱帯であるにも拘らず、あまり不快な虫や蛇などにお目にかからないのである。私はこの民宿エメラルド・アイルが痛く気に入ってしまった。

そこで考えた。ケララは北インドとは異なる別の文化を持っているらしい。しかもそれはわれわれ日本人が2000年以上も慣れ親しんできた田園風景のルーツのようなものを感じさせる。民宿の古い建物も、出てくる食べ物もどこか、われわれの心を安堵させる雰囲気を持っている。これは最近になって政策的に観光化された結果なのだろうか、それとも昔からそのままに続いてきた状態なのだろうか?同宿したフランス人グループの一人と食事の際に話をしたが、彼らも私と同じような気持ちを味わっていたのかどうかは分からなかった(私の語学力がなかったので)。

この後、私はより深くケララに魅せられることになるのである。

民宿エメラルド・アイル

エメラルド・アイルの門

すぐ前に広い運河がある。

エメラルド・アイルの夕涼みベンチでご機嫌のせがれ。


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