« Viva Kerala ! -(1) | トップページ | Viva Kerala ! -(3) »

2007年4月28日 (土)

Viva Kerala ! -(2)

民宿エメラルド・アイルで一泊した後、翌朝、まだ朝霧の残る運河から再び渡し船に乗った。対岸からクルマに乗り換え、アレッピーの街をしばらく走り、街道筋から林の中の細い道に入り、狭い敷地の中にある小さなホテル案内所に着いた。そこでまずココヤシの身のヘタを切り落としてストローを差し込んだだけのココヤシ・ジュースが出された。冷やしてないので生暖かいジュースがストローを伝って口に入ってくるのだが、これがとても爽快な味だった。

手続きを済ませて、小さな渡し船でいよいよボートホテルに向かった。運河に停泊するボートホテルは、竹か籐のような植物で編んだ曲線的で不思議な形をした船であった。中に入ると部屋は3部屋あり、船の前半分は、結構広いリビング兼ダイニング空間になっている。前方は完全にオープンで、船の進む方向に展望が開け、その真ん中に船長の舵取り席がある。この船全体をわれわれが借り切るのである。船の乗組員が紹介された。船長は年配の男前の風貌で物静かな人だった。シェフはアーリア系でない(おそらくはドラビダ系)民族の人でこの人が一番英語が得意のようだった。、機関長はまじめそうな人であった。

しばらく出航準備の時間があり、いよいよ船は動き出した。スタートのときエンジンはかなり大きな音をたてていたが、一定の速度に入ると小さな音になった。船はゆっくりとした速さで背の高いヤシの茂った運河を進み、やがて大きな海のように湖水が開けた場所に出た。何漕かのボートホテルや帆を張った舟があちこちにゆったりと漂っている。波もなくどこまでも明るく穏やかな風景である。南インドの強い日差しの中で帽子もかぶらず船長は悠々と舵取りをしていた。船の進行方向が完全にオープンなので、リビング空間には心地よい風が入ってくる。やがて昼時になり、湖岸に停泊して休むことになった。運河や湖の岸はどこでも船が係留できるようになっていて、そこには地元の農民たちが使っている生活道路があった。

食事を終えてしばらくすると、岸の農道からかごを持った男が船内に向かって何か話しかけるので、行ってみると、大きな生きたエビを4匹見せて「採れたばかりだが買わないか」と持ちかけてきた。I氏と相談して、値段は少し高めだけれど日本円に換算すれば安いものだという結論になって、そのエビを買った。後になってから考えれば、これは船のスタッフとの見事な連係プレーのようであったが、とにかくこれをシェフに頼んで夕食で料理してもらうことにした。

やがて再び岸を離れ、また別の広い運河へと入った。しばらくゆったりと進んだ後、船はまた接岸した。シェフが出てきて、ちょっと案内したいところがあるので、といってわれわれを船の外に誘った。岸から奥に入る農道をしばらく進むと、小さなキリスト教の協会があった。そこは150年以上も前から地元の人たちが敬愛するある牧師の建てた教会だった。何の変哲もないローカルな教会であったが、礼拝にやってきている農民がみなきれいな衣装を着て待っていた。

この教会への行き帰りに見たものはケララの農民生活を象徴するもののようであった。

まず驚いたのは、カールマルクスの写真を配したポスターである。マラヤラム語の文字で書かれているので内容は分からないが、選挙ポスターのようであった。後に調べたところケララ州は、かなり長期に縄って共産党政権が州を支配していたのである。中央政権ともうまく折り合いを保ち、安定した施政を行っていたそうである。そういえばアレッピーの街角でもあちこちに鎌と鎚をあしらった見覚えのある赤旗が立っていた。

農道を歩いていると向こうから空き缶を楽器のように叩きながらやってくる若者に出会った。私がカメラを持っているのを見ると彼は「写真を撮ってくれ」という。彼はそのまま行ってしまったが、しばらくして学校帰りらしい子供たちに出会った。その子も「写真とって」という。写真を撮ってやると、「見せて」というので、液晶画面にいま摂った写真を出して見せた。すると、「ウアー」と声を上げこの写真が欲しいという。これは紙にプリントしなければならないので無理だといっても通じない。仕方なしにこの写真はカメラの中から出せないからダメ、というと、「じゃそのカメラをちょうだい」と言い出した。邪気のない子供の言うことなので、どう応えてよいものか本当に困ってしまった。

船に戻り、ふたたびクルーズが始まった。ゆっくりと進む船の両岸では、層民たちの生活の気配が漂っていた。子供が水辺でもぐって遊んでいたり、部屋の窓からテレビの画面が小さく見えたりする、どこからともなく祈りの唄のような声が聞こえてきた。祈りの唄はコーランでもなく賛美歌でもない。独特の哀愁を帯びコブシのかかったお経にも似た節回しである。どこかでスピーカーを使って流しているようであった。やがて今晩の停泊地に接岸した。何ということのないあぜ道の岸に船を係留した。すぐ前方に運河が入り江のようになった溜まりがあり、そこに無数のカモが群れていた。そばに、長い棒を持った男が一人小舟の上に立っていた。やがてその男が水面をバチンと叩いた。するとカモの大群が動きだし、男はすばやく舟を動かして群れを追った。カモはぐるぐると渦を巻くようにある方向に動き出した。するともう一人岸の岸の農道にいた男が板のようなものを岸に渡した。カモの大群の先頭がその板を伝って陸に上がり始めた。見る見るうちに1000羽近いカモの大群がそれに従って陸に吸い上げられて行った。見事な「カモさばき」である。ちょうどアメリカのカウボーイが牛の大群をコントロールするのと良く似ているので「カモボーイ」と呼ぶことにした。

その晩の食事には、言うまでもなくあのエビが登場した。油でからっと揚げてカレー味を付けた単純な料理であったが、何よりも水辺を渡る風を感じながら、船のほの暗い照明の下で食べる雰囲気は最高であった。

バックウオーターの典型的風景

ユニークなデザインのボート・ホテル。ほとんどみんな同じデザイン。

ボートホテルの内部から見た景色。


このページは xfy Blog Editor を利用して作成されました。

|

« Viva Kerala ! -(1) | トップページ | Viva Kerala ! -(3) »

デザイン文化論」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/14894690

この記事へのトラックバック一覧です: Viva Kerala ! -(2):

« Viva Kerala ! -(1) | トップページ | Viva Kerala ! -(3) »