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2007年5月31日 (木)

「付加価値」って何?ー(2)

 前回は価値という経済学的カテゴリーについて考えることから、付加価値の問題にアプローチしたが、今回は付加価値の中身についてと、なぜいま付加価値が問題にされるのかを考えてみよう。

 商品市場では、いうまでもなく、売る人と買う人がいる。売り手によって商品の値段は出来るだけ高く付けられるが、買う人がいなければ、買う人が出てくる値段まで値下げされるから商売が成立する。買い手が買っても良いと判断する値段は、それが商品として持つ「価値」(ここでいう「価値」は本来の価値ではなく個人の価値観を含む)に相応しいかどうかである。ここで、商品が需要に対して少ない供給しか得られないことが分かっていれば、売り手も買い手も高い値段で折り合う。したがって、骨董品や美術品などは、途方もない値段がつくのであって、この場合は、それらを生み出すに必要だった労働時間に基づく本来の価値から、遠くかけ離れた市場価格となる。しかし、これはあくまで、買い手があってのことである。社会的需要がなければ、二束三文でも売れないのである。別の言い方をすれば、誰でもが必要とする、社会的に必須のものではないからこそ、恣意的な途方もない値段がつくのである。付加価値の実体はこれである。つまり、付加価値とは、本来の価値とほとんど関係なく、市場において、恣意的に生み出された希少性がもたらす高い市場価格のことである。

 なぜいま、付加価値が云々されるのかといえば、いまの市場が、恣意的な市場価格であってもその買い手が存在するようになったからである。その典型例が、高価なブランド商品とそのデザインである。その商品が高級であることを演出するために有名デザイナーが用いられ、有名ブランドが用いられる。それにより実際の価値より遥かに高価な市場価格がつけられても、それを喜んで買うリッチな人たちがいるからである。ここでは、買い手の個人的価値観によって、「商品価値」が決まり、いくら高くても買い手の満足感を満たせばよいのである。リッチな買い手に取ってお金はそういうことのためにこそ使われるべきであるのだから。しかし、彼らに購入される商品は本来の使用価値のために買い取られるのではなく、むしろ交換価値として買い取られるのである(ボードリヤールは、この中に「象徴的価値」というものを主張しているが、これについては後述する)。

 では、世の中すべての人々が、このような、付加価値の買い手となるようなリッチな人たちであり得るのかどうかを考えてみよう。これは自明のことであるが、市場での希少性は需要に対して供給が圧倒的に少ない場合にのみ生じる。これを恣意的(意図的)にもたらそうというのが付加価値であるから、もし、誰でもがすぐに有名ブランドのグッドデザイン商品を購入することができるようにリッチになれば、たちまち付加価値は消え失せてしまい、本来の価値に近い市場価格になってしまうであろう。あるいは、売り手はより高い付加価値をつけて商品の供給量を減らすであろう。以前このブログで取り上げた¥100 ShopとGood design shopの関係を思いだして頂ければ幸いだが、一方にプアーな人たちがいて、他方に一握りのリッチな人たちがいるという社会構造だからこそ、付加価値は成立するのだから。

 かつてわれわれは、一生懸命働けば、みんながソコソコ余裕のある生活が出来るようになり、世の中ではみんながグッドデザインの世界を楽しむことが出来るようになると信じていた。しかし、その期待は見事に裏切られたのである。日本の国内だけでなく、中国やインドなどにおいても、ニューリッチといわれる人たちが台頭し、一方では貧困層が拡大している。それに従って、デザイン市場も両極化しつつあり、グッドデザインはもっぱらニューリッチのための付加価値を生み出すために利用されるようになったのではないだろうか。

 しかし、付加価値の問題は、たまたま最近起きてきた問題ではなく、実は、デザインの持つ本質的な問題に関係するのである。そして、それはいまや世界全体を危機に陥れている二酸化炭素増加などによる気候変動を含む地球環境悪化の問題や資源枯渇問題にも関わるのである。次回はその問題に入ろうと思う。

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