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2009年7月13日 (月)

経済再建のためにクビを切られる人々

 昨日の都議会議員選挙では予想通り自民党が大敗した。8月30日に決まった衆議院議員選挙でも自民党はおそらく勝てないだろう。

 これは多くに人々が、世の中の情勢に不安や不満を持っていて、何かを変えなければならないときが来ていると感じているからだろう。

 さてそれでは選挙に勝った民主党のお手並み拝見というところだが、民主党も景気回復や経済再建を掲げている。そのこと自体は当然であるが、この経済再建が誰のための再建なのかしっかり見極めなければならないだろう。

 一方アメリカでは先に国有化されたGMが新生GMとして再出発した。政府は巨額の公的資金(税金)を注ぎ込んでGMの再建を促したわけであるが、会社を利益が上げられるようになるまで建て直すためには、一部の事業所を労働者ごと売却したり、大幅な人員整理(つまりクビ切り)を行わなければならなくなる。その、売り飛ばされたりクビを切られる人達もタックスペイヤーなのである。自らが支払った税金で再建を促された新GMから解雇通知や配置転換通知が来るのである。

 これと似たようなことは世界中のあちこちで起きている。経済再建とは働く人達のためではなく、労働者からその労働の成果を搾取してきた資本家や投資家たちのためなのである。GMなどでは労働者も資本家の分け前をもらってかなりリッチな生活をしてきたし、解雇の際も再就職先の斡旋くらいはやってくれるのだろう。しかし多くの企業ではそんな甘い状況ではないと思われる。

 一般的には、会社が潰れたら仕事がなくなり、そこの雇用されてる労働者たちは解雇され生活して行けなくなるから、会社が潰れないようにして欲しい。そして世の中景気が良くなれば、会社も利益を上げられるから、われわれの賃金も上がり生活が安定する、というのが社会通念である。

 しかし、資本論を読めば分かるように、実際に社会にとって必要な労働を直接行っている労働者が、生産手段を持つこともできず、出来上がった生産物を自ら所有あるいは消費することもできず、ただ毎日生きて労働力を提供するために必要なだけの生活資料を与えられて生きてゆくという社会の仕組みは、いくら景気が良くなっても決してなくならないのだ。景気が良くなればそのときだけはいくらか楽な生活ができるが、必ず再び不景気がやってきて、生活は危機に立たされる。

 現代の資本主義社会はマルクスの時代とはかなり違って、生産的企業の経営者(産業資本家)は金融資本家や株式証券投資家などによって事実上支配され、彼らのために会社の利益を上げなければならない。したがって経営不振になれば「苦渋の決断」を以て従業員のクビを切らなければならなくなる。何ら生産的な労働を行っていない金融資本家や証券投資家に巨額の利益をもたらすために、産業資本家は企業を経営し、そして市場での競争に勝つために、出来うる限り労働者から多くの剰余価値を搾取しなければならない。この状態はいくら景気が良くなっても変わらないのである。

 この状態を脱するためにどれだけ多くの人々が闘い、そして倒れて行ったか、われわれはその軌跡をもう一度たどってみるべきであろう。

 「経済活性化のため」と資本家やその代表者たる政治家たちに促され、買い物だけが生き甲斐のような消費に明け暮れる、あわれな「消費人間」に成り下がり、その消費とそれをもたらすための労働の搾取によって莫大な利益を得る資本家や過剰マネーでぶよぶよに太った投資家などと一緒になって、地球環境を崩壊させてはならないはずだ。

 いま少し長い時間をかけても、慎重にそしてしっかりとした理論に基づき本当にわれわれが目指す社会を作って行く必要があるのではないだろうか。

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