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2009年7月19日 (日)

金融工学の盲点

 いまNHK TVで「マネー資本主義」という番組をやっている。

 世界の優秀な頭脳をニューヨークに吸収して膨れあがった「リスクフリー」の借金と投資テクニック。原資の何十倍ものマネーを動かし、莫大な利益を上げるための理論。おそらく「金儲けの理論」たる現代資本主義経済学の研究はここに極まった感がある。

 その結果が、今回の世界金融恐慌である。しかし、この金融工学を開発した人々の大半は、その破綻を決定的矛盾とは受け止めず、さらに理論に修正と磨きをかけて再びマネー資本主義の片棒を担ごうとしている。彼らは、サブプライム・ローンによって貧しい人々にも家が持てるようになった、と自負する。少し返済不能の確率計算方法が間違っていただけだと考えているらしい。しかし、そこに大きな落とし穴がある。

 そもそも金融工学が用いる確率は自然現象の中での物質の振る舞いであるが、経済活動は人間が社会の中で意図を持っておこなう行動が生み出したさまざまな様態の総体である。

 さらに、世界中になぜ金が余っていて、それを濡れ手に粟で獲得することができるのか?その金はだれが生みだした富なのか?その一方で、なぜ働きたくとも働けず、日々の生活に事欠く人々が地球上の全人口の70%以上にも上るのか?

 こうした事実に何の疑問も持たず、ただ金を儲けることが自由に出来るということのみを論拠にして作り上げた工学である。

 まちがっても、こんな研究を始めた学者にノーベル賞などやってはいけなかったはずだ。商品経済社会発達の頂点で開花した資本主義経済体制の行き着く先は結局この姿なのだ。たとえまた一時的に「好景気」が訪れたとしても、長くは続かずその後に必ず再び金融恐慌がやってくる。これが資本主義経済社会の「法則」なのだから。

 われわれは怒りをもって金融工学ような理不尽な研究に反対しよう。かつてマンハッタン計画で核兵器を開発した科学者達が、広島、長崎の惨禍を知って、痛烈な自己批判をしたことを思い出して。

 優秀な頭脳を持った世界中の若者達はいまこそ、この資本主義社会の矛盾を理解し、来るべき次の世代の社会の基礎をつくり出すための研究を行って欲しい。そのためには、マルクスの資本論を避けては通れない。資本論で分析された資本主義社会の本質的矛盾はいまも綿々と生きのびており、ますます人類の未来を危うくしている。

 資本論は未完の書であって、マルクスの資本主義社会の分析はまだ緒に就いたばかりで、宇野弘蔵さんのグループや哲学者の廣松渉さんらがかなり頑張ったが、残念ながらいまは止まってしまっている。これをさらに進め、現代資本主義の分析と批判にまで進展させなければ、研究は次の段階には進めないだろう。

 柄谷行人のように、あまりちゃんと資本論も理解しないで「可能なるコミュニズム」なんて言ってしまってはいけません(私自身のことは棚に上げてますが)。

 的場さん、崎山さん、Mizzさん、がんばってくださいよ! 私も頑張りますから。

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