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2010年6月27日 (日)

あたりまえの話

 「ゼイぜい税」と喘いでいた労働者の実感を為政者は真剣に考えてくれるかどうか分からない。彼らは選挙に有利であれば、どんなことでも手段にするから、「あなたたちの気持ちはよく分かります。ですから私たちはあなたがたの暮らしがよくなって雇用が回復するように、消費税を上げて、企業の課税率を下げて景気浮揚を図っているんです」とか言うのだろう。

 だけどちょっと待ってくれよ。例えば25年前のバブル期の「労働生産性」を基準としてもそれから25年間に生産性はかなり上がっているはずであるし、世界中の労働人口は急激に増えているはずである。したがって世界中の年生産量は相当増えているはずであり、それが市場に投入されて貨幣資本になった価値量は天文学的数値になっているはずである。それらの一部は、さらなる生産手段への設備投資に向けられただろうし、先進国の労働者やリッチな中間層や本当の大金持ちたちが消費する商品として生活の中で消費されただろうが、残りの大半は遊休資本として金融資本が所有し、それを再び「成長株」に投資して利ざやを得ている。そしてそういった流動的な過剰資本が世界中を回転しており(グローバルマネー)、それをめぐって、「頭のいい」投資家やトレーダーなどが争奪戦をやっている。世の中では「頭のいい人間がお金儲けをして何が悪いんだ」という考え方があたりまえになっている。そして資本家たちや比較的リッチな人たちが消費するエネルギーを生み出すための石油を産出する国の人たちは頭脳的な努力をしなくても、その利権でガボガボ金を得ており、使い道に困っているのである。世界中が求めている資源を所有しているんだから金が儲かってあたりまえ、というわけである。

 しかし、そのカネの元になった生産物の価値を誰が生み出したというのだ!世界中に数十億もいて、四六時中地球のどこかで働き続けている生産的労働者たちではないのか?資本家の「国際競争力」をつけさせるため、日々過重労働を課され、驚くほどの低賃金で働かされている数十億の労働者ではないのか?

 例えば、アメリカ、カリフォルニア州にあるApple社のデザイナーたちは、iPadのデザインをし終えて、休暇でヨットで世界巡りでもしているかもしれないが、さんざん前評判を演出して、発売当日に販売店に客が殺到し、予約も含めて1週間で100万台も売れたとなると、これを生産している中国の工場では、おそらく厳しい品質管理のもとで、夜に日を継いでの過酷な労働が続いていることだろう。この製品を5万円足らずの市場価格で販売するために、彼ら中国の労働者は賃金を最低限に押さえられているだろうし、一方でカリフォルニアの本社ではジョブス社長はじめ経営陣やデザイナーたちはガッポリ大金を懐に入れているはずである。

 そう考えると、いま私の手元で電子書籍リーダーになっているiPadができあがるまでに通ってきた労働者たちの汗にまみれた多くの手と喘ぎが聞こえてくるような気がする。あたりまえの話だが、どんなに優れたデザインの製品でもそれが実際の製品として生まれるためには多くの労働者の手を経なければ不可能である。資本家とデザイナーだけが「がっぽり」お金をもらい、外国の工場でそれを必死になって作ったいる労働者がその何万分の一にもならない賃金しかもらえないというのは、あたりまえの話ではないのだ。

 世の中で、常識となっていて当たり前のようであっても、よーく考えてみると本当はとんでもないことになっていることが実に多いのだ。そして為政者は世の中の常識の中でしか考えないから、それがとんでもない間違いであることに気づかず、あたりまえの話としか考えていない。労働者は、ただでさえ、自分たちが生み出した巨額の価値の大半を持って行かれ、消耗した労働力の再生産に必要な消費財の価値分を「労賃」として資本家から前借りするのに、これに「所得税」が掛かり、それで生活資料を購入しようとすると、さらにまた消費税なるものが掛かってくるのだ。おまけに病気になっても高額な保険料が払えないと医者にもかかれないでのたれ死にしかねないという事態も起きる。ただでさえ不当に剰余価値を搾取されているのに、税の二重三重取りである。これが何であたりまえの話といえようか!

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