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2010年7月15日 (木)

アメリカ的世界観

 昨日の朝日新聞朝刊に、「嫌われる社会主義ー米政権批判のフレーズ」という記事が載っていた。アメリカでは「社会主義者」といえば、悪の根源のような意味で受け止められる土壌があるということのようだ。そこにはオバマ政権の批判を掲げるプラカードに"OBAMA MARXIST"と書かれている写真が付いていた。

 国民皆保険制度をめざすオバマの医療保険制度の改革に、社会主義的だ!として反対する人が多いのには正直、理解に苦しんでいたが、その恩恵を受けるはずの最下層労働者までも「社会主義的な政策だから反対だ」という意見が多かったというのはさらに驚きである。

 しかし、そのような状況が生み出されてきたアメリカ社会は、「自助努力」が尊ばれる国柄だから、と片付けるのはおかしい。確かにかつて、ネイティブアメリカンたちを蹂躙しつつ西に向けて侵略し続けてきたホワイト・アメリカンたちは、荒野の町で、銃による自営と、自助努力をしなければやっていけなかった状況があっただろうが、その後のアメリカは奴隷解放などで大量に生み出されたアフリカ系労働者を資本主義経済発展の機動力とし、その上に乗っかったホワイトたちが、労働者階級から搾取した資本を分け合い、リッチな生活を享受してきた。その資本主義的成功があたかも自分たちの自助努力のたまものであったかのように、それを美化しつつ。そこにアメリカ的「自助努力精神」のルーツがあるのではないだろうか?

 そのアメリカ的自助精神は、しかし、1920-30年代には大きくぐらついたのである。いくら自助努力をしてもアメリカ経済は危機的な状況から脱し得ない状態がやってきて、ルーズベルト大統領のニューディール政策などによる国家的施策のもとにようやく回復の兆しを得たのであった(ルーズベルトも社会主義者と批判されたらしいが)。

 しかし、その後、第二次大戦での軍需産業の隆盛をテコに、1950年代になってふたたび息を吹き返したアメリカ資本主義が、当時まだアメリカで一定の勢力を持っていた、社会主義的勢力の一掃をを図ったのが、いわゆる「マッカーシー旋風」と呼ばれた悪名高き「赤狩り」である。これによってアメリカでの社会主義的勢力はほぼ壊滅した。その後、東西冷戦下では、「自助努力による自由な国」が国家意識にまで高められ、(資本家の)自助努力で「自由な社会」を築き上げる国と、国家官僚の独裁的管理の下でノルマを課せられた労働が行われる「自由のない国」との対決という図式が定着したのだろう。そしてそれが現在でも続く、イラクやアフガニスタンへの派兵を正当化する「自由世界の警察官」としてのアメリカ、という自負なのだろう。

 "OBAMA MARXIST"には、笑ってしまうしかないが、その同じ意識の先には、日米同盟の強化があり、沖縄の米軍基地確保があることを忘れてはならないだろう。

 オバマがマルキストでないことは、リーマンショックの後に、大手金融資本が「自助努力」の範疇を超えた危機に陥ったことに対して国家予算を投入してそれを支えたことを見ても明らかである。例えマルキスト呼ばわりされても金融資本を守ることこそアメリカ大統領の使命と考えたからであろう。

 アメリカ的自助努力精神の吹聴が横行する中で、だまされ続けてきたアメリカの下層労働者階級は、アメリカ資本主義の犯した甚大な過誤を正当な批判の立場で追求する勢力が壊滅させられてしまったことによる大きな欺瞞の中に取り残されているといえるだろう。真実を知れば彼らは必ずや沖縄の人々の苦しみを理解するに違いないと思う。

 それにしても朝日新聞でアメリカよりまだましな状況とされた、我が国のマルクス経済学者たちは、いったい今日の状況をどのように分析しているのだろう?いや、私が思うに、我が国のマルクス経済学者たちも社会主義圏の崩壊以後、大学から追放されることに危機感を感じ、事実上「死の沈黙」を続けているとしかいえないのではないか?

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コメント

野口さん、皆さん。今晩は。
ニーヨーク タイムズのコラムに、成長のなんやらとはというポール クラッグマンのコラムがあります。

http://krugman.blogs.nytimes.com/2010/07/13/a-quotation-ruined-by-context/

その欄の下の方ですが、そこに、
*By the way, what is marxists.org? And why is it the best site for so many economics classics?
とあり、以下いろいろとコメントが続きます。
マルクス文献に関心が無い分けではなさそうですね。

このmarxists.org日本語部門に、英語版資本論の、第7章までの英文和訳が収録されています。

投稿: mizz | 2010年7月15日 (木) 22時40分

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