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2010年7月21日 (水)

コンピュータ関連商品の価値を構成する労働について

 2回に渡って、商品におけるデザイン労働が生み出す価値部分の問題と、ソフトウエアデザイン(開発)労働が生み出す価値の問題について考察してきたが、ここで、それらが統合されているコンピュータ関連商品の価値構成とそれを生み出す労働の関係について考察を進めてみよう。

 ハードウエアとしてのコンピュータという商品は、それだけでは機能を発揮せず、それにあらかじめインストールされている基本ソフトOSと、その上で稼働するアプリ・ソフトによって初めて機能を発揮することができる。その発揮される機能はアプリソフトによって如何様にも設定でき、それゆえコンピュータはマルチファンクション(多機能あるいは多目的)機器としての特徴を持つ。そのため、使用目的にしたがって、それに相応しいアプリソフトをインストールできるように、ハードとソフトは別々の商品として販売されている。

 ハードとしてのコンピュータ本体に含まれる価値は、まず、その本体を製造するのに必要であった原材料や部品を生産するために要した過去の労働成果である価値部分と、製造に必要であった生産機械(これを生産するのに要した過去の労働成果として)の価値が、それぞれの個体に分割されて入り込む価値部分をあわせた不変資本部分(c)があり、そこにコンピュータ本体を製造するために必要とされた労働により新たに創出された可変資本部分(v+m)の価値が加わって全体の価値が構成されている。

 可変資本部分をさらに詳しく見れば、設計やデザインに要したデザイン労働により創出された価値部分と、生産部門で生産労働や検査労働に要した部分に分かれ、それぞれがその内部でv+mを構成しているといえる。しかし、前々回述べたように、デザイン労働により生み出された価値部分は、最初にデザイン開発に要した労働時間が、その後生産される商品一つ一つに分割されて配分されるため、生産個数が増えるほど一つの製品において占める価値の比率が小さくなる。それに対して生産労働部門の労働が生み出す価値部分は、すべての製品に同じ労働時間分が含まれている。したがって生産個数が増えれば増えるほど、1個の製品におけるデザイン労働の生み出した価値部分の比率は小さくなる。

 一方、ソフトウエア商品の価値構成は、ソフトウエア開発に要した労働時間が生み出した価値は、オリジナルをコピーして一つのパッケージとして販売する際に、そのコピー数で割った価値部分として各パッケージの価値を構成する。ここでは生産的労働により付け加わる価値部分はほとんどゼロである。したがって、ソフトウエア商品はその販売数が増えれば増えるほど、それに比例して1個当たりに含まれる労働価値は低くなる。ところが著作権法によってその市場価格は一定に保たれているため、その市場価格は実際の価値よりもはるかに高いものになる。

 こう考えると、商品の価値構成で不変資本部分がほとんどなく(ということは生産手段への投資が殆どないと言うことである)v+mだけであり、しかもハードウエアの場合には避けられなかった生産労働部分がほとんどゼロであるという条件の下で莫大な利益を挙げうるソフトウエア産業はハードウエア産業よりはるかに利益を得やすいことになる。そうなれば資本家たちはいっせいにソフトウエア産業に走ることになるだろうと思われる。

 しかし、実際はそうはならない。その理由は、ソフトウエアはハードウエアがなければ、ただの電子的記号列の並びに過ぎず、何の機能も果たせないのであって、ハードウエアが「ソフトなければただの箱」というのと同じであって、ハードウエア産業とソフトウエア産業が互いの存在意義を認めてその利潤の利益配分を調整しあう仕組みができているからであろう。こうして両者は、一方が実際の価値に対してそれほど高くない市場価格で商品を売らねばならないのに、他方では実際の価値より遙かに高く売れる資本家が互いに譲歩しあって平均的利潤を獲得しながら資本を蓄積することができるのである。

 ところで、ここでもっとも重要なことは、この全過程においてもっとも搾取されているのはハードウエアの生産を行っている生産労働者であって、ソフトウエア産業のソフトウエア開発労働者やハードウエアのデザイン労働者は、さまざまな有利な条件(著作権法やデザイン・ブランドによる「付加価値」など)の下で実際の価値よりはるかに高い価格で売ることが出来るとともに、生産労働者の生み出す価値部分によって資本家にもたらされる多くの利潤のうち、資本家からその分け前の一部を、彼らの労働が市場価格に及ぼす効果の大きさゆえに、与えられているために、生産労働者よりもはるかに高い労働賃金を得ることができているのだという事実である。

 

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