« 「デザイナー」という種類の労働者の実態を考える(7) | トップページ | 「正論を疑え、正解とは限らない」 »

2010年8月18日 (水)

TVドキュメンタリー「食材生産体験」

 昨夜のNHK 衛生第1Chでやっていた表記の番組はなかなかおもしろかった。

 イギリスの中流階層の若者数人が自分たちが日頃食べているツナ缶の生産現場に体験留学し、そこの生産現場の人たちと一緒に生活し、労働をするという話である。現場はインドネシアのある町にあるヨーロッパ向けツナ缶を生産している工場である。

 彼らはまず、工場に勤めている従業員の自宅に行って、その住み家の貧しさに驚く。そこで寝心地の悪い一夜を過ごしてから、翌朝早く起こされ、彼らはツナ缶工場に向かう。そこで出会った現場監督から厳しいルールを聞かされ、まず訓練場に行く。そこで目にしたのは、まずカツオをさばいて、ゆであがったカツオの皮をむき血合いを取って、身の部分だけを取り出す作業である。

 イギリス人の女の子たちは、まずカツオのはらわたを出す場面で吐き気がしてしまう。そして蒸し暑い工場の中での最初の作業であまりのしんどさに彼女のうち一人は卒倒してしまう。その後で、彼らがカツオのさばき作業に適性があるかどうかのテストを受ける。そこで彼らの仲間うちの一人の男の子がインチキをやっているのを同じイギリス人の仲間が発見し、喧嘩になる。

 結局男の子らは作業を妨害する恐れがあるという理由で外され、カツオ漁船に乗せられる。数時間の航行で小さな漁船にすし詰めの漁師と一緒にごろ寝をして漁場に着いたときは彼らはすっかり船酔いでふらふらになっていた。しかし気を取り直して現地人の漁師と一緒にカツオの一本釣りを始める。漁師たちはものすごい勢いで釣り上げるのに彼らはたった2匹しか釣れなかった。

 一方ツナ缶工場に残った女の子たちはきつい作業で厳しい評価をされながらクタクタになるまで作業を続け、また翌日も同じようなきつい作業が続いた。

 その間、彼らは現場の労働者やその家族たちとその生活や人生観について話し合う。そして最後にイギリス人の若者たちは、賃金をもらう。それはイギリスでは1時間の賃金よりも安い金額だった。彼らは別に賃金が目当てで来たわけではないので、町でスナックやお菓子を買って、その残りのカネを従業員で世話になった女性にあげてしまう。すると、そのインドネシア人の女性は感激して泣きだしてしまうのである。そして「お金はとっても大切なものです」と言う。

 最後にこの体験学習を終わって、帰国するかれらの一人は、「あんないい人たちなのに、あんなに搾取(日本語に翻訳されていたが確かにこう言っていた)されているなんて許せない。僕はイギリスでツナ缶を安く買っていたが、これからはもっと高く買ってでも彼らの生活の足しにしてあげたい」と。

 これが日本の若者であってもきっと同じ思いをするに違いないと感じた。これが現実なのである。われわれが日頃比較的安い食材として食べているものを生産している人々はこういう労働をし、こういう生活をしているのである。日本やヨーロッパの労働者階級が比較的リッチな生活を営めるのも、こういう人たちの厳しい労働と生活があるからなのだ。そしてそのインドネシア人の女工たちは、これでも自分たちはちゃんとした仕事にありついているのだからありがたいと言っていた。つまり彼女たちは、さらに自分たちの生活より厳しい状態で生きている人たちの労働によって、ヨーロッパ人の労働賃金の何十分の一かの労賃でも必要な生活手段をなんとか買うことが出来るのである。

 マーケットでの価格競争の背後で、世界にはこのような人たちが何億人いもいて、われわれの生活のもっとも必要な生活資料を生み出しているのである。そしてわずか数十人かの人たちに、天文学的金額の富が集中し、彼らはさらなる利益をあげるために「国際競争」を繰り返しているのである。これが資本主義社会の「高度成長」の帰結である!

|

« 「デザイナー」という種類の労働者の実態を考える(7) | トップページ | 「正論を疑え、正解とは限らない」 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/49179153

この記事へのトラックバック一覧です: TVドキュメンタリー「食材生産体験」:

« 「デザイナー」という種類の労働者の実態を考える(7) | トップページ | 「正論を疑え、正解とは限らない」 »