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2010年9月 7日 (火)

自殺・うつ病の「経済損失額」という意味不明な数値

 本日の朝日新聞夕刊に、小さく、「自殺・うつ病の経済損失を試算」という記事が出ていた。経産省の依頼を受けて国立社会保障・人口問題研究所が推計した結果、2兆7千億円の経済的損失なのだそうだ。

 それによると昨年中に自殺した人が32,845人でこのうち15歳から69歳の人が70歳まで生きて働き続けたとして、得られる所得の合計は、1兆9,028億円。うつ病関連では、休業しなければ得られる賃金所得が1,094億円、うつ病で掛かる医療費が2,971億円、うつ病がきっかけとなった生活保護者への給付金が3046億円、となっていた。

 さて、私にまず分からないことは、いったい誰が「経済的損失」を被るのかである。ここに挙げられた数値を合計すると、2兆6142億円になるので、これが「経済的損失」の内訳なのだろうと思う。そうなると、15歳から69歳の人が70歳まで生きて働き続けたとして、得られる所得の合計である、1兆9,028億円と、うつ病関連では、休業しなければ得られる賃金所得が1,094億円というのは、労働者が自殺やうつ病にならなければ得たであろう彼らの「所得」である。だからそれが、得られなかったことは、自殺したりうつ病になった労働者にとっての経済的損失であろう。そうであれば、治療に掛かった医療費2,971億円は、それがすべて健康保険などからの支出として、国や共済組合などの「損失」と考えるのか、全額個人負担として労働者の損失と考えるのかが分からない。

 では政府が被った損失は、といえば、労働者が生きていれば、あるいはうつ病で休業しなければ得られたはずの「所得」から税金が取れなくなったという意味で「損失」であろうし、国保や生活保護などへの支出が増えた分だけ「損失」となるだろう。

 どちらにしても資本家は何ひとつ損失を出していない。労働者が勝手に死んでしまったのだから、補償金も保険料も払わなくてすむし、潜在的失業者があふれている現状で、別の生きのいい労働力を獲得することなど彼らにとってはたやすいことであろうから。

 そして、何よりも、失われてしまった32,845人の命はもう戻らないのであり、その家族や関係者の被った、心理的・人間的な損失は計り知れないものがある。彼らは得られたはずの「所得」を失っただけではなく、人間としてのすべてを失ってしまったのである。これを「経済的損失」として計算する人たちの心情が私にはもっとも分かりにくい。

 どなたか、この「経済的損失」の真意をお教え願えないでしょうか?

 

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コメント

コメントしてくださった方ありがとうございました。
なるほどね、そういうことなのですか。お金が動けば、だれかが得をするが、一方ではだれかが損をするので、結局富は生み出されないけど、「経済効果」はあったということなんでしょうかね。分かったような分からないような話ですが、朝日の記事ももう少しその辺を分かりやすく書いていただけると私のような「普通の人間」にも理解できるようになると思いますが。

投稿: 著者より | 2010年9月15日 (水) 21時53分

経済効果の説明です。

あることをした場合に、それが経済に与える影響。一般的には「予測」されるもので、実際にそれがどの程度あったのか測定されることは稀。

どれだけ「金が動くか」の指標であって「それだけの富が生まれる」わけでないことに注意。生産を伴わないもの(祭りとか)の場合には、経済効果があっても「資金がそれだけ通過した」だけのことで、そこから富を持ってこれるかどうかはまた別の話だったりする。


この裏が経済損失ですね。それだけ収入が生まれるわけでも損失が発生するわけでもないんですよ。動くはずのお金が動かないという試算ですよ。良く調べましょうね。

投稿: r | 2010年9月15日 (水) 00時32分

自殺者が居なければ、1.9兆円の損失はなく、うつ病の人が居なければ、0.8兆円の損失はなく、計2.7兆円の損失がないという単純至極な計算以外のなにものでもない。何の条件もないようである。

これをGDP換算すると、1.7兆円の損失に当たるという。単純な換算式は、0.63倍ということである。条件は、特にはないようである。

誰が損失を受けるかということであるが、GDP換算ができるのであるから、付加価値ということになる。国内総生産額であるから、日本国の当期の付加価値生産額が損失を被ったということになる。

さて、見方を代えれば、自殺者の付加価値は、当然ながら当期には算入しない。上記は単なる予想値である。うつ病者の付加価値も当然ながら算入しない。従って、損失は結果的にはない。
うつ病者は生きているため、労災とか、失業給付とか、医療費とか、生活保護のための社会的な支出が必要であるが、その合計値は、0.666兆円と計算される。本人負担分が0とすれば、この約0.7兆円弱が見方にもよるが、試算者の考えとして、損失と見なすのもあり得る。無理にGDP換算すれば、0.42兆円となろうか。
だが、これらの費用は限界生活の維持であって、そのまま他の機関等の収入になり、しかも殆どが付加価値額に該当する。つまり損失にはならないで、そのまま経済的売り上げ高として当期に反映されるのであって、損失にはならない。

経済的損失にはならない。のである。前年度額とか予想額にたいするなんらかの差異は生じるが、その差は損失ではない。そう、前貸し資本の回収額から見れば、という話と分かる。だが、回収額には、上記に説明したように、損失はないのである。死んだ者には賃金を払わない。回収する理由もない。うつ者からは、税金を通じて回収している、商品の売り上げで算入されるのだから。ここで剰余価値に言及するなら、かなりの相手だ。真剣に話をしたい。居ないだろうな。

経済界に対して、自殺やうつを減らすと、こんなに儲かりますよと政府が研究者に云わせているようにも見えるが、資本家は、こんな方法で余剰価値を確保してはいないので、全く無視するだけであり、国民に多少の経済効果があるので、考えてくれととんでもない研究をさせているところであろう。出先確保措置。もう少し本気で、労働者個人の生活のために、社会的な方法論に取り組んでもらわないと。いらない。自殺者数とうつ病患者数の1.6倍の雇用を義務づければ足りることである。それで、損失は消え、予想値が達成できる。しっかりしてくれ、なんとか研究所と厚生省と首相。多分1.6とは何かと問われるだろう。政府の好きな抑止力。研究してみてくれ。

投稿: | 2010年9月 8日 (水) 16時35分

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