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2011年2月 2日 (水)

セルジュ・ラトゥーシュの思想に関する考察(その目標)

 ラトゥーシュは、こうした現状認識とそれに対する否定的意識をバネとしながら、その克服の方向性として、「具体的ユートピア」としての「共愉あふれる(convivial)脱成長(decroissance)社会」と「地域主義(Localisme)」を実現目標としている。この中で、重要な位置を占めるローカリズムについて、次のような見解を持つ。「北側諸国では、国民を形成するものとその後ろ盾となる行政が相対的に後退したことによって諸々の制約が緩和され、経済的な共同作用を生み出すことを可能にする文化的な隆盛が引き起こされ、「地方的なもの」と「ローカルなもの」が再び活性化している。余暇、健康、教育、環境、住居および対人サービスが生活基盤のミクロでローカルな水準で管理されている。日常生活のこのような管理は、一部の住民(排除されている人々、反体制の人々、連帯的な人々)の側で豊かで有意義な市民性あふれるイニシャティブをもたらしており、生活世界への影響力を回復させる傾向がある。...(中略)...ローカルな社会を成功させるとは、(経済開発に接合された)「第三セクター」を賛美するのではなく、むしろその他の二つの部門(資本主義と国家)を征服することを意味する。またローカルな民主主義を再興することも重要である」(「経済成長なき社会発展は可能か?」p.119-120)

 ラトゥーシュは、このような自主管理的なローカル社会が目指すは、資本主義経済の内部での市場とは別の「贈与」(互酬性にもとづく与え、受け、返すという義務をもつ)を基本とした交換関係を基本としたものであるべきで、そこでは「関係が財に取って代わる」のだだと主張する。(p.118)

 さらに、「...これらオルタナティブなイニシャティブは「ミクロな次元での経済発展」というよりは、もうひとつの社会を建設するプロジェクトに参画するものであるので、「反開発」もしくは「脱開発/脱発展」として語られねばならない。なぜならわれわれは、生活の非経済的側面の再評価と、三つの義務として理解される「贈与」と、新しい社会関係に立脚する新たな社会的な論理を発明する企てに直面しているからだ。あらゆるローカルな自主管理形態からなるこれらの実験は、それ自体の内容としてよりも、世界のあらゆるものを商品化する権力が台頭するその傾向に対する抵抗と離反の形態としてわれわれの関心を惹きつける」(前掲書p.120)

 ラトゥーシュは、次のように主張する。「今日の生産主義的で労働主義的なシステムから脱出するためには、労働よりも余暇と遊びが価値をもち、そして使い捨てで役立たずのーさらにいえば有害なー製品の生産と消費よりも、社会関係が優先されるようなまったく新しい社会組織が必要である」(p.240)「クリストフ・ラモーが、そしてよりニュアンスを置いた立場からジャン=マリー・アリベーが提案するように、何に代えてでも雇用を確保することは、意識的にせよそうでないにせよ、往々にして労働社会への根深い執着を意味する。しかし、大事なことは労働社会を救済することではなく、労働社会から脱出することである」(p.241)

 つまりラトゥーシュが主張する新たな(オルタナティブな)脱成長社会とは、このような経済市場から開放された「贈与」の精神に則って、余暇や遊びによって「コンビビアルな」人間関係を結べる自主管理的なコミュニティーであると言えるだろう。

 彼はこのような主張を掲げる知識人のグループを<ポスト開発学派>とも言っている。

 そしてラトゥーシュは、これらの目標を実現させるために次のような8つ"R"の再生プログラムを掲げ、それらの「好循環」を生み出すことを提唱する。

 (1)再評価する(re-evaluer)、(2)概念を再構築する(reconceptualiser)、(3)社会構造を組み立て直す(restructurer)、(4)再配分を行う(redistribuer)、(5)再ローカリゼーションを行う(relocaliser)、(6)削減する(reduire)、(7)再利用する(re-utiliser)、(8)リサイクルを行う(recycler)(前掲書p.171-172より)

 ここですべてのプログラムに(再)を意味する"R"がついているのは、彼の目指す「共愉あふれる脱成長社会」が、社会の再生産過程から生まれるという考えがあるからのようだ。

 さて次にその具体的内容を見ることにしよう。

(続く)

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