« 今後の日本社会を考える(その13 ラフスケッチb) | トップページ | 閑話休題「ナバホ」の世界 »

2011年4月13日 (水)

今後の日本社会を考える(その14 ラフスケッチc)

 菅さんが、大震災後の自粛ムードで、人々が旅行やレジャーを取りやめていることに関して、経済の沈滞化を防ぎ、被災者たちを元気づけるためにもすぐにでも自粛ムードから脱するべきだと言っていたが、私は必ずしもそうは思わない。むしろ、人々が「自粛」することで、われわれの生活にとって、一体何が本当に必要であり、何が「なくても済む」のかがはっきりしたではないか。

 いままでの無駄な消費づくめの生活で、本当に必要でもない商品(この中にはレジャーや娯楽・観光なども含まれる)を次から次へと買うことだけが人生の目的であるかのような錯覚に陥らされてきたわれわれの生活が、この大震災とそれ以後の社会状況によって反省を余儀なくされたのだと思う。

 そこで再び日本社会の今後を考え直してみると、そこにまず必要なのは、最低限われわれの生活に必要な資料を自前で生産し供給できるような産業体制である。例えば、食料、衣料、住居、医療、教育などなど、そしてそれらすべてに必要なエネルギー源である。それらの必要にして十分な供給が出来て、初めてわれわれの生活の土台が確保されるのである。

 その上で、さらにその生活の内容を充実させていけば良いのである。もはやこれ以上自動車を増産する必要もないしクルマの保有台数は現状維持でいいではないか。もはやエネルギー供給を際限なく増大させていく社会は必要なく、したがって原発などは不要なのである。グローバル市場でグローバル資本との無益な消耗戦を繰り返し、それによって地球資源を消尽し自然環境を破壊させながら、GDPが何位になったといって大騒ぎし、結局そのために働く人々の人生を賃金奴隷として資本に捧げさせてしまうような社会システムではなく、国内の生活を安定させ、そのために必要な生活条件を生み出す産業を充実させ、そこに必要な適正な労働力の配置が民主的な合意に基づいて行えるような社会システムが必要なのである。生活に必要なものを資本家的企業を媒介せずに直接生活する労働者自身が協働して生産し流通させることができる社会システムである。

 そこで自らの生活に必要な資料を生産するに必要な労働時間を超えて得られた労働の成果(剰余価値部分に相当する)は、資本としてではなく、社会全体が必要とする共有ファンドととして蓄積し、そこから社会の中で足りないものを海外との交易によって獲得し、われわれの社会が生み出せる剰余生産物の一部を輸出に振り向ければ良いのである。社会的共有ファンドはもちろん、そこで働く人々に共通に必要な資金、例えば、教育、働くことが出来なくなった場合の介護や医療そして年金、社会インフラの整備とメンテナンスなどに支出されるものである。

 こうしたイメージのもとでこれからの産業構成を考えるならば、今日のいわゆる第三次産業あるいはサービス産業依存型の産業構造が如何に歪んだ不自然なものであるかが見えてくるであろう。

 例えば、今日の社会ではあまり日の目を見ない分野であるメンテナンス産業は非常に重要であり、これからの社会の中心的な役割を果たすだろうし、「デザイン」は売れる商品を考え出すための偏狭な知的労働から解放されて、あらゆる産業部門で生産物の本来の意味での使用価値を高めるため(出来るだけ少ない資源の使用で最大限の使用価値を生み出し、メンテナンスがしやすく、長持ちする製品をデザインする)に費やされる労働者の能力として、すべての生産分野の労働者に要求される基礎教育に組み込まれるだろう。言い換えれば現在のような職能という形の「デザイナー」は存在意義がなくなるだろう。

 さて、今後の日本社会のためのラフスケッチはこの辺で終わりにしよう。なぜなら、マルクスが言うように、いたづらにユートピアのイメージを膨らませることは、かつての「ユートピアン」が失敗したように何も生み出さないだろうから。問題なのは矛盾に充ちた現実をあるがままに見据え、その批判(否定)として具体的な未来をそのつどその場所から生み出して行くことにあるのだから。

|

« 今後の日本社会を考える(その13 ラフスケッチb) | トップページ | 閑話休題「ナバホ」の世界 »

新デザイン論」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/51376908

この記事へのトラックバック一覧です: 今後の日本社会を考える(その14 ラフスケッチc):

« 今後の日本社会を考える(その13 ラフスケッチb) | トップページ | 閑話休題「ナバホ」の世界 »