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2011年4月 8日 (金)

今後の日本社会を考える(その9 産業構造の矛盾a)

 世界的「不況」と日本の大震災をきっかけにして、今後の日本社会の在り方を考えるためにさまざまな問題提起を行ってきた。ここでは日本の産業構造とその矛盾について考えて見ようと思う。

 資本主義社会以前、鎖国政策を採っていた日本がそうであったように、一つの「国」がその内部で生産と消費のバランスを保つための経済機構が成り立っていたような場合を「自立経済社会」と呼べば、今日の日本を初めとする資本主義諸国の経済体制は、国際的な分業体制を前提として成り立っているといえるだろう。これを「対外依存経済社会」と呼ぶことにしよう。

 そこで、まず自立経済社会がどのような社会的分業体制で成立するのかを考えて見ると(もちろんそれはその社会が置かれている世界史的な背景が必須の要因となるが、ここでは単純化するためにそれを考えないことにする)、第一に食料、衣類、住居など社会構成員の生活を維持するために必要最低限の「モノ」を生産する労働がなければならない。これらは生活において直接的に消費される対象である。しかし、それを生み出すためには、それらの直接的消費対象を生産するための労働に必要な生産手段を作らねばならない。例えば、農機具や漁労具、紡績、紡織機、縫製具、大工道具そしてそれらに必要な原材料の生産のための労働が必要である。自立経済社会ではこれらの労働手段の生産に必要な労働は、直接的消費対象を生産する労働者自身が「片手間」に行ったりすることも多く、資本主義社会でのように完全に工業として「産業化」することは多くはなかったと考えられる。

 次にそうした基本的なモノを生産してから消費するまでに必要な流通分配機構が必要であり、それに従事する労働が必要である。この領域には資本主義社会以前の社会でも商人が担当していた。

 さらに、こうした自立的経済社会全体を維持するための「メンテナンス」的機構に必要な労働、例えば、医療や、法律など社会的ルールを実施・管理する労働(これらは例外なく支配階級の管理のもとに置かれていた)などが必要である。

 その上で、さらに外敵や災害などの社会全体にとっての突発的な危機に対応する機構を稼働させる労働が必要である。例えば消防・防災・自衛軍など。こういった労働の多くは、さまざまな常態的機構での労働者が一時的に結集してこれに当たることが多いといえるだろう(常備軍というのはほとんどの場合、支配階級を護るためにかり出される被支配階級の人々である)。

 そして最後に、自立経済社会の中でそれを支えるために働く人々が生活に少しずつゆとりが出てくると必要になる「楽しみ」を充たす娯楽などの労働が登場する。

 おおむねこうしたさまざまな労働がそれを実施するための労働の場を形成し、それが社会的な分業種を形成する。自立的社会の構成員は、支配階級を除いて、そのどれかを分担して行う労働者となっている。

 社会全体での生産力が、それをぎりぎり維持するだけの水準で再生産するレベルから、すこしづつ生産力を上げていく(労働手段の改良などを通じて)と、そこに剰余生産物が生み出され、それは一時的にその社会の再生産機構が危機に陥った場合のために備蓄されたりすることになるが、やがてそれら剰余生産物を支配する人々(生産的労働には携わらずにその労働および労働の成果を占有する人々)が登場する。実在した人類史上のさまざまな文明社会ではそのような人々が支配階級を形成していったのである。

 ところで商人たちは、もともと余った生産物を安く取得し、それを足りない地域に運んで高く売ることにより流通の役割を果たしながら利益を獲得するのであるが、その本質上、ある自立経済社会と別の自立経済社会の間を結んで商売をするようになっていったと考えられる。そのことがやがてそれらの自立経済社会を崩壊させ、「自由な市場と貿易」を旗印とした対外依存経済社会を形成させていくことになったと考えられるのである。

 商人たちは、古い社会体制の支配階級と対立しながらも彼らが支配する剰余生産物を商業世界に取り込み、それによって旧体制を崩壊させながら、一方で、古い農業労働や職人的労働を行っていた人々をその生産手段とともに商人的世界に取り込むことで資本主義社会の原型を作っていったと考えられる。

 そのような視点からあらためて今日の資本主義社会を成立させている社会的分業体制、つまり産業構造の姿を見直し、その矛盾を明らかにしてみよう。(続く)

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