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2011年4月 6日 (水)

今後の日本社会を考える(その8 税制の矛盾)

 追記:この項は「ラフスケッチd」というサブタイトルであったが、内容的にはラフスケッチのために必要な問題把握の一環であるため、サブタイトルをこの項の内容に即したものに改め、前項の一部をこの項に移動した。

 前々回も書いたように、そもそもいま全世界を徘徊している過剰流動資本という怪物は、その出所を明らかにすれば、あらゆる過去の具体的労働の成果なのである。過去の労働の成果が私的に所有され、資本として現在の「生きた労働」を支配するのが資本主義経済体制の原理である。その現在の生きた労働は、毎日の労働の中で、労働力の再生産に必要な価値を超えた剰余労働時間に生み出される価値を無償で資本にもって行かれ、資本家的企業はそれを商品の価値の中に埋め込んで市場に送り出し、その販売で利益を獲得するのである。

 資本家的企業から労働者に支払われる賃金とは、その労働力の再生産に必要な価値量としての資本(労働力という形で価値を生み出す資本としての可変資本である)の貨幣形態であって、労働者に生活資料商品を買い戻すために前貸しされる資本である。決して労働者の「所得」ではない。それにも関わらず資本家代表政府はそこから所得税を取り、健康保険税を取る。そして企業はそこから年金のための積立金を先取りする。そして資本家的企業は不当に搾取した剰余価値を資本として用いて生産手段を「設備投資」や「原材料」(これらは過去の労働の結果であり新たな労働生産物の中に組み込まれその価値部分を構成する不変資本である)として購入し、労働力を「雇用」という形で購入する。それによってこの不当な剰余価値の搾取を「合法的に」繰り返すのである。その意味で労働者の支払わされる「所得税」や「年金積み立て金」と、資本家的企業が支払う「法人税」はまったくその位置や意味がことなる税である。

 いま世界中で金融資本によって争奪戦のターゲットとなっている巨額の過剰流動資本は、そっくりそのままそれを生み出してきた労働者階級のための年金や福祉に必要な社会的ファンドとして還元されるべきものなのである。それによって、全世界の労働者の生活は一変するだろう。

 次に土地に関する税制のおかしさを指摘しておこう。私の例でいうと、私は40年前にいまの居所に移ってきたが、そのときはまだ田舎の雰囲気が残っている閑静な住宅地で、そこは風致地区であった。したがって土地の評価額も比較的安く、固定資産税もそれほど高額ではなかった。ところがそれから40年後のいま、最寄り駅に新しい地下鉄も開通し、近くの商店街には高層ビルが建ち、私の住む家の目の前に住宅地の良好な環境をぶちこわしながら「都市計画道路」がつくられつつある。そのため、いつの間にかこの場所は「市街化地域」指定となり、評価額が上がり、毎年高額の固定資産税と住環境悪化に反対しているにもかかわらず「都市計画税」を支払わされているのである。もはや年金生活を送る私のとっては莫大な支出なのである。

 人間が居住し生活するための必須の条件である土地が「財産」とみなされ、知らぬ間にそれが法外もない高価な価格をつけられ、個人の住環境を犠牲にして資本の流通に奉仕する「都市計画道路」建設のために高額な税金が課せられる。まことに不合理ではないか。土地を売れば大金が入るのだから当然だ、という考え方は基本的に間違っている。土地は本来商品ではないからだ。不動産会社から見れば土地は「開発」されるのだ、というかもしれないが、もともと森や浅瀬であった場所を人手を加えて居住することのできるようにしたに過ぎない。その「場所」としての土地は誰がつくったものでもないのだ。これを売るとすれば森や浅瀬を居住可能の地味にするために要した労働時間に相当する価値でしか売れないはずなのだ。それが法外もない価格で売れるとすればそれは需要供給の原理によって増産できる商品ではない土地の価格がつねに実際の価値から大きくかけはなれた市場価格で売買されるからなのである。これは芸術作品や骨董品の価格と同じ性質のものである。

 付け加えて言えば、居住する土地が初めから「売ること」を想定して「財産」とみなされ課税されるということは、税金が支払えなくなったらそこを売って立ち退けということを意味している。これも土地が水や空気と同様に本来人間の生活に不可欠な共有財であって、個人が私有財産として売買する商品ではないにも拘わらず「私有財産」とみなされるという矛盾の表れである。

 こうした視点から見てはじめて、社民党や共産党が目のかたきにしている「消費税」だけではなく、もっともっと大きなレベルでの現代資本主義社会の税制がいかに矛盾に充ちたものであるかが分かるであろう。

 (続く)

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