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2011年9月10日 (土)

何が崩壊しつつあるのかよく考えてみよう

 「国難」とか「崩壊する日本」とかいうキャッチフレーズをよく書店で見かける今日この頃である。

 日蓮上人の蒙古来襲時に言われはじめたと思われる「国難」という言葉は第二次世界大戦中にも用いられ、このときは「非常時」という言葉がしきりに用いられた。それは、それぞれの時代に特有のナショナリズムの表現であるといえるだろう。しかし現在の世界情勢の中で「国難」という言葉を用いる人たちはいったい何を考えているのだろうか?そもそも「日本が崩壊する」という危機感そのものを自問してみる必要があるのではないだろうか?

 いま崩壊しつつあるのは「日本」という国家やその経済体制だけではなく、世界的に支配を確立し、その限界での矛盾を露わにしている、世界資本主義経済体制であるといえるだろう。おそらく今日ほど世界支配を拡大した資本主義経済体制は歴史上なかったことであろうし、まさにそれ故に、その矛盾が極限に達しているということができるだろう。

 すでに1930年代に崩壊の危機にあった資本主義経済体制が、「反共思想」の導入とナショナリズムの扇動による戦争体制の創出を基盤とした軍需生産、そしてやがて戦後においては、労働者階級の生活での浪費を強いることで、階級対立を覆い隠し、過剰資本の圧迫から逃れつつ東西対立の中で生きのびる道を見いだし、やがて「社会主義陣営」の自滅という歴史的出来事にも支えられて、今日の世界支配を確立したのであるが、その矛盾はさまざまな形で噴出し、かつてのような対「社会主義」的なブレーキがきかなくなったこともあって、例えば2001年9月11日以後のアメリカ政府の振る舞いに見るように、絶え間ない戦争体制の創出と浪費経済の道を暴走してきた。そして当然にも世界中の「貧困層」(イスラム圏の人々を含む)といわれる労働者階級を中心とした「被搾取階級」の人々から猛反発を受けたのである。

 世界人口の80%以上を占めると考えられる「貧困層」の人々(正確には貧困化させられた人々)は、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの富裕層の人々が過ごしている浪費生活の、いわば影の犠牲者であり、そうした人々が「富裕国」の人々に反感を持つのはある意味で当然であろう。

 そうした「富裕国」の労働者階級の多くは、自分たちの国の「経済が成長する」ことによってそのおこぼれを頂戴し、軍需産業や浪費産業(いまでは「サービス産業」などという領域も含まれているが)などでの雇用も増えるので「経済成長」を支持している。しかし、実はその「経済成長」は、世界中の「貧困層」の人々の過酷な労働の成果を搾取して蓄積された資本が一方で「富裕層」のための無駄や浪費の山を生み出し、それによる地球環境の破壊や資源の枯渇を拡大しながら、過剰蓄積し、「金あまり」状態になっている過剰流動資本を他方で私的蓄財として奪い取るために奔走する一握りの金融資本企業や投機家などの思惑によって左右されている見かけだけの「成長」なのである。その過剰流動資本の奪い合いが、「グローバル市場の過酷な競争」と表現され、世界中の労働者階級(富裕国も含む)は、ナショナリズムを宣揚されつつ、日々過酷な労働に追い込まれ、「お国の経済発展のために」働かされているのである。やがて「富裕国」の労働者階級の大部分も結局自分たちが誰のために働いているのかを思い知らされることになるだろう。

 そういう事実を目の前にすれば、世界資本主義体制の崩壊過程は、いうなれば歴史の必然として現象しているのであって、むしろそれを危機と捉えるのではなく、その後にどのような本来あるべき社会経済体制が築かれるべきなのかを考えなければいけないということが理解できるだろう。

 唐突ではあるが、マルクスの「資本論」が持つ現代的意義は、その中に、そのことへの解答のカギがあるからなのである。残念ながら「資本論」はある時期にはすでに「死んだ思想」とされ、また資本主義社会の一極化が進み、その矛盾が露わになってからは再び浮上してきたにも拘わらず、難解な読み物の代表とされ、あまり若い人たちの間に浸透していないようだが、マルクスが彼の生きた時代の資本主義経済体制の本質的な矛盾を誰の目にも明らかな形で暴き出したとき、彼は資本主義経済体制が続く限り生きているその矛盾克服のカギをそこに埋め込んだのであり、資本主義社会が続く限りそれを無視して未来社会を語ることはできないと思うのである。

 いまこそ崩壊しつつある世界資本主義経済体制がどのような矛盾を孕んでおり、それはどういう形で克服されるべきなのかを資本論を手がかりにして考え、そこから新しい未来社会を創造するスタートを切るべき時なのだと思う。

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