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2011年9月25日 - 2011年10月1日

2011年9月27日 (火)

東北の現場から

 リタイアした身にもかかわらず、このところいろいろな仕事が集中し、ブログを書く時間がなかった。

 ところで、いま私は東北のある都市にいる。ここの大学の授業を二つ、ある先生から頼まれ、集中講義という形で8月と9月に行っている。

 ここで、その先生と一緒に産学連携および地域連携推進の組織のメンバーとして仕事をしている方々と食事をしながら話しをする機会があった。彼らはそれぞれ別の自治体の職員だが、大学と連携した業務を行うためにこの組織に来ているのである。

 かれらの一人は沿岸地方の街に住んでおり、大震災のときに実家を津波で流されている。しかし幸い家族は無事であったそうである。震災当日、家族と連絡がまったく取れず、クルマで帰るにもガソリンがなく、どうしようもない状態が数日続いたそうである。そのときのことを淡々と語る彼は、いま沿岸地方の街を何とか復興させるべく、この大学との連携組織で毎日懸命な努力を続けている。

 もう一人の人は、内陸部の都市の職員であるが、彼は、そこで生活保護者などの支援を対象とした部署で働いていたが、いまこの大学との連携組織に来て、まったくこれまで気がつかなかった問題に気づかされたと言っていた。

 それは、いままで行っていた仕事は、税金を使って弱者の保護や支援を行う仕事であったが、この組織に来てからは、逆に多額納税した側(つまり企業)にどのようにその見返りをするかという立場で問題を捉えなければならなくなった。地元の企業はその経営を厳しい状況で切り回さねばならないことはよく分かるが、その一方で、市側からの補助がなければ営業が始められないという形で、自ら何とかして会社を維持しようとする意欲(つまり自助努力)にやや欠けた雰囲気があるというのである。きつい言い方をすれば、災害復興支援のための補助に甘えているという面も見え隠れするというのである。しかし、このことは、いまの社会状況では公言することができない。そこに問題があるというわけである。

 私は、この話を聞いて、実に難しい問題だと思った。「自助努力をせよ」と強圧的な言い方で言った大臣がクビになったといういきさつもあり、「痛し痒し」というところであろう。

 かつて1970年代に、社会保障が行き届いたイギリスにおいて、労働者が労働意欲を失い、経済的な不況が常態化したと言われた「イギリス病」という歴史的事実があったが、この場合は、雇用された労働者の側の問題である。労働者が社会保障の充実によって労働意欲を失ったとされているが、それ以前に、資本主義的に分割化され、労働の目的意識を奪われた労働者であったということが、何も語られていない。今回の場合は、労働者を雇用する企業経営者の側の問題であるから、これとはまったく異なった問題である。

 大震災以前からすでに経営が厳しくなっていた地元企業が多く、そこにもってきて災害によって受けたダメージが大きかった場合は、経営状態は致命的であったと考えられる。そしてそこに転がり込んできた災害復興支援補助金を企業再興のための引き金にしたいという思いがあり、その支援の金を出す自治体や国側との間で、双方の綱引きが生じていることがうかがえる。

 大企業と異なり、資金繰りが著しく困難な中小企業の場合は、こうした雰囲気が出てくるのもある程度は仕方がないかもしれない。しかし、そこには、こうした企業に雇用されていた労働者たちの、さらに惨めな生活があることは忘れてはならないだろう。企業に労働者として雇用されなければ生きていくこともできず、災害補助金だけが生きる手段である。彼らは補助金の金額で自治体と綱引きする余裕もないはずである。

 そして最大の問題は、「親方日の丸」的な、上意下達構造の社会の歴史が、人々の意識の中に根深く残っていることである。「上の人たち」がすべてを仕切って何でもやっている。だから「上の人たち」にお願いしなければ何事も始まらない。こういう意識が、東北地方だけではなく、日本全体にあるのではないだろうか?

 われわれの歴史の中で何千年にもわたって築かれてきた、「上の人たち」への依存による生活、そこから来る「親方日の丸」的意識構造がいまでも深くわれわれの意識の中に存在しているのだ。

 残念なことではあるが、これから長い時間をかけて、本当の意味での自立した意識を持てるように、そして何よりもそういう自立を可能にする社会を生み出していかなければならないのだと思う。

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