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2012年6月20日 (水)

閑話休題:ゴーン氏の報酬と超小型車

 マルクス価値論に関するディスカッションはまだまだ続くが、ここでちょっと本日の話題を入れて気分を変えてみよう。

 本日の朝日新聞朝刊に、日産自動車のカルロス・ゴーン氏が慶応大学で行った講演のことが出ている。経営管理研究科の学生480人を前に彼が語ったことは、日本国内の企業で最高の9億8200万円という報酬が「ふさわしいか?」と質問した学生に対して、「日本では衝撃的かもしれないが、99年に240万台だった世界販売台数は倍になり、1%だった売上高経営利益率は約6%に向上した。恥じることはない」と豪語した。また競合他社からのヘッドハンティングに関しては、「報酬は採用したい人材を引きつけるツールに過ぎない。日本のルールに従っていては、私が採用したい人たちを採用できなくなる」と言い、さらに「自動車産業は容赦のない競争にさらされており、グローバル企業はグローバル市場の基準で報酬を払う必要がある」とブチ上げた。

 だが、考えてもみよ、日産自動車を初め、日本の自動車産業は労働賃金が高くなった(といってもそれは資本家に前貸しされふたたび資本家の手に還流させるための資金に過ぎないのだが)国内の労働者を捨てて、労働賃金の安いアジアや中南米の国々で低賃金で働く労働者を求めてはそこから搾取をくり前しているではないか!もし「グローバル企業はグローバル市場の基準で報酬を払う必要がある」のなら、なぜ労働者はグローバルに見て一番賃金の安いレベルで支払われねばならないのか!販売台数が増えたことは一体だれの犠牲の結果なのか!そして売上高営業利益率はどのようにして引き上げられたのか?そこにはグローバル資本家どうしの激烈な利益獲得競争のために、何千人もの労働者が「合理化」という名のもとに放逐され、残された労働者たちの血のにじむ様な労働強化があったからではないか。ゴーン氏の私有財産となった9億8200万円は、こうして資本家どうしの醜い競争のためにその人生を捧げ尽くした労働者たちの膨大な量の労働から搾取された結果の富なのである。

 昨日のniftyニュースでは、この4日に国交省がまとめた「超小型モビリティ導入に向けたガイドライン」をめぐって、自動車業界で波紋が広がっている、というニュースが載っていた。最近、税金の安い軽自動車が国内で売れているが、それに対して軽自動車主力メーカーのダイハツやスズキなどとトヨタ、日産などの税制上不利な普通車主力メーカーとの間で確執があり、国交省の超小型車ガイドラインで登場するであろうその政府助成策に投入される予算は、軽自動車税の優遇を撤廃することによって賄われるのではないかといううわさがあるのだそうだ。そしてその超小型車生産に日産のゴーン氏がなみなみならぬ意欲を示しているという。

 何ということか!税金の安い軽自動車が生活の足になっている人々に、その優遇税制を撤廃させることで、軽自動車を持っていることにあまり意味を感じなくさせ、そこにあたらしい超小型車への需要をむりやり作り出そうというのだ!これが日本一「有能な」経営者の本性であり、9億8200万円の報酬を自ら「グローバルスタンダード」と言い切る男の正体である。

 そしてまだまだ使えるクルマが次々とニューモデルに乗り換えられ、その生産には膨大なエネルギーと資源が消費され、廃棄物の山はさらに高くなり、その陰で「合理化」により生産ラインから放逐された労働者が非正規雇用で生きて行くしかなくなっていく。政府は労働者から増税で取り立てた税金を、そういう資本家たちの「経済が活性化」するために、惜しげもなく使うのであって、税制もそうした資本家たちの支援のために「改正」されるのである。

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