« 迫り来る世界経済危機の本質 | トップページ | またまた資本論を読み直す »

2012年6月 4日 (月)

ボトムアップ経済システムを構築しよう

 現代の資本主義社会に対する分析と批判を続けているが、ここでそれとの関係で、さきほどNHK BS-TVで面白い海外レポートを放映していたのでそれ紹介しようと思う。

 場所はイギリスのロンドンであるが、ここでは最近Ethical Sourcing (倫理的な供給)という考え方が注目を浴びつつあり、その一例として、People's Supermarket という新しいスーパーマーケットの経営が紹介されていた。People's Supermarketは、会員制の顧客が交代で従業員の役割を果たし、経営も会員全員の討議のもとで行っているという店である。日本でも地域生協などがこれに似た方式で店を経営している例もあるが、People's Supermarket では、専従職員がほとんどおらず、会員の互選で選ばれた代表がCEOを勤めている。会員になると20%の割引の恩典を受けられる。しかし、その代わり会員は必ず1ヶ月に4時間以上店で働かねばならず、仕入れ、品揃えからレジまですべてがこうした会員の仕事で切り回されている。会員はもちろんこの店の購買者であるが、当然すでに自分の仕事を持って他で働いている人も多いであろうし、またリタイアしたボランティアもいるらしい。言い換えればさまざまな分野のプロが会員になっているのである。これは前にもこのブログで紹介した「プロボノ」という労働形態(プロボノという労働形態 2010.07.26参照)にも似ている。

 だからこの店は、いたずらに安さを競う既存の大手スーパーなどとは異なり、多少高くても購買者である会員が納得するような品質の商品を仕入れることができ、そこに品物を納入してくれる生産者とも、ある契約を結んでいる。それはもし、品物が売れ残り店が仕入れ先に代金を支払いきれなくなった場合は、ある程度までそれを棒引きにしてもらうという約束である。大手の生産者や納入業者ではありえないが、中小の生産者や納入業者はそれでもPeoples Supermarketと取引できる方がいいので、契約してくれる。

 さらに、このPeoples Supermarketではコミュニティーのたまり場的役割も果たしており、店で仕事がないときでも会員たちが集まっていろいろ生活上の問題を話し合ったりしているのだ。

 こうした形の経営の最大の特徴は、資本家がいないので、企業間での競争に打ち勝ち利潤を増やさねばならないというミッションがないことである。そして、生産者である農業、漁業、酪農、牧畜などを小規模に経営する人々とのネットワークを通じて、生活資料の生産と消費のサイクルをボトムアップ的に作り上げていることである。

 私は、こうした資本蓄積を目的としない地産地消的システムを食生活以外の生活資料にも適用できると思っている。家具、調度品、簡単な電機製品、発電や給湯システムなど、中小企業の技術をネットワークで結んでいけば、もっと大きな規模のボトムアップ経済システムができると思うのだ。現にこれに似たシステムは世界のあちこちで現れている。

 こうしたボトムアップ的経済システムが徐々にわれわれの生活基盤を作って行くことにより、現代の資本主義社会のような、資本を維持拡大させるために膨大な浪費を強い、そのために地球の資源を食いつぶし、環境を破壊させ、労働者の生活をめちゃくちゃにしなければ経済が維持できないという(これを資本家たちは「経済成長」と呼んでいる!)、本末転倒の、完全に矛盾した経済体制から一歩一歩解放され、必要なものを必要なだけ作ることでやっていける本来の経済システムが出来上がっていくと考えている。

 前にもこのブログ(日本のものづくりとデザインの行方(2) 2012.04.30参照)で書いたように、このボトムアップ的経済システムの内部で通用する貨幣(ポイント制のようなもの)を作って、資本の循環によって支配された生産・消費システムの内部から、それに取って代わるべき労働者階級自身による経済システムを段階的に生み出して行くことが可能ではないかと考えている。それはさまざまな新たな問題をそこから派生させ、さまざまな形での試行錯誤が必要であると思われるが、基本的方向としては歴史的な必然性を持っていると信じている。

 そしてその試行錯誤の「導きの糸」としてマルクスの理論が大きな役割を果たすに違いないし、そういう本来の経済システムにおける「ものづくり」を目指したデザイン労働のあり方を考えて行くべきではないだろうか?

|

« 迫り来る世界経済危機の本質 | トップページ | またまた資本論を読み直す »

新デザイン論」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/54874661

この記事へのトラックバック一覧です: ボトムアップ経済システムを構築しよう:

« 迫り来る世界経済危機の本質 | トップページ | またまた資本論を読み直す »