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2012年7月18日 (水)

マルクスの価値論めぐるディスカッション(11)

 mizzさんから新しいコメントを頂いた。

 前回のブログで、私が少しいらだち感情的になっていたことへの諌しめでもあり、私への励ましでもあると受け止めました。mizzさんは、「社会科学は科学ではない」という人たちに対して、次の様に言っています。

「この話は、将棋理論や麻雀理論ではなく、実生活、実社会、実歴史の理論であって、趣味やゲーム・賭け事の話ではないのである。避けることは何人もできはしないのである。投票や民主主義も歴史の産物に他ならないが、どうでもいいと思っていても、その成果を捨てることはできはしない。投票に行かなくても、他人の投票や、他人の投票妨害に影響される。やはり今度は投票しようと考えることになるだろう。これが社会科学理論であって、その理論的追究も人間が生きている限り続く。民主主義の理論に発明者名はないが、小学生でも知っている真理であろう。」その通りだと思います。そしてさらに「理解してもらうまで、続く一つの作業なのである。野口さん、いつものように続けるだけのことです」と。うれしい励ましです。

 mizzさんの励ましに応えて、マルクスの価値論をめぐる問題をさらに続けようと思う。

 価値論という経済学の基本問題は、実は、いまわれわれの眼前で起きている重大問題と深く関わっている。

 例えば、いま、モザンビークなどアフリカの豊かな農地をもつ国々で、欧米や中国による農地の収奪が急速に進んでいるそうだ。何千年も前から生活してきた多くの住民たちは、土地を追い出され、生活の糧を失っている。土地を収奪しているのは、グローバル農業資本家たちであり、彼らの思惑は、やがて世界的供給不足になることが確実な農作物の生産手段(つまり農地)をいち早く収奪し、これを資本化して食料品輸出でぼろ儲けをしようというのである。しかもそれが「国家的戦略」の一環として国家規模で行われている。まるで19世紀末から20世紀初頭にかけて激しかった植民地争奪戦(その結果があの第一次世界大戦である)のような醜い国家エゴが世界の食料品調達の名の下に行われているのだ。

 この問題では、次の様なことを知っておく必要があるだろう。もともと大自然の一部であり、基本的に労働生産物ではない土地(荒れ地を豊かな農地にするまでに要した多くの労働力を考慮に入れるとしても)が、あたかも商品のように価格が付いて売買されるということは、実は、その土地の価格が価値によらず、買い手と売り手の関係のみによって勝手な恣意的価格で売られるということを意味する。モザンビークの農民たちはおそらく、彼らが長年住み続けてきた土地を、ほとんどタダ同然の価格で売ったであろう。

 彼らをそうさせたのは、彼らの生活が商品経済のメカニズムに取り込まれつつあり、現金収入がなければ生活ができなくなりつつあったという状況であろう。彼らが組み込まれつつある商品経済社会(つまり資本主義社会)においては、こうして大自然の産物であり人間の労働による産物ではない(したがって本来商品になり得ないものである)土地や人間の労働力それ自体を「商品」化することによって、大自然そのものを資本の利潤追求という飽くなきエゴの餌食にしていく。

 そしてそれは同時に、人々の生活が、自立した自給自足の経済システムによるのではなく、グローバル資本の市場の中にいやおうなしに組み込まれ、それに依存することなくしては生きて行けないようにさせるのである。

 そしてその資本の利潤追求の渦中にいる人々(資本家の意図を代行する人々)にとって、それは「普遍的経済法則」として何ら疑問を感じさせないようだ。こういう人たちに対して、「あなた方が支配されている経済法則つまり卑俗なコトバで言えば市場の法則は、あなた方が日々実行者として押し進めている行為の産物なんですよ」と言ったところで理解できないのは当然であろう。資本家にとっては「利潤を生み出すもの」として映り、賃労働者や農民にとっては「奪われた能力や奪われた生産手段の体化物」である商品の「価値」とは一体何なのか?これが問題なのである。

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