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2012年7月13日 (金)

America is made in China

 今朝のNHK BS国際ニュースで、アメリカのオリンピック出場チームの着るユニフォームがすべて中国製であるという事実が伝えられ、それに対する非難がTwitterなどで盛り上がっているというニュースがあった。アメリカ人の多くは、特に「愛国的アメリカ人」はこの事態に大変な憂慮と危機感を表明し、何としてもユニフォームをアメリカ製に切り替えて出場させたい、と息巻いているそうだ。

 私はこのニュースを見て、笑ってしまった。ひょっとして日本チームのユニフォームも中国製かもしれない。もしそうだったらきっと石原都知事などは「許せん!」というに違いないと思った。

 どちらにしても、これが現実なのだ。いま「先進資本主義国」と言われている、アメリカや日本、ヨーロッパでは、すでに自分たちが日常生活で使うモノはもちろんのこと、パソコン、クルマ、スマホ、デジカメなどいわゆるハイテク製品と言われるモノのほとんどが自国では作れなくなっている。そのもっとも大きな理由は、労働賃金の水準が高いからである。

 アメリカの産業界の有力者たちとオバマ大統領の討論を報じた、昨年春のあるTV番組で、オバマの隣に座ったアップルのスティーブ・ジョブス(当時はまだ生きていた)に、オバマが、「モノづくりが再びアメリカの戻ってくることはあるのでしょうね」と問いかけたところ、ジョブスは「2度とないでしょう。中国でのように、アメリカの十分の一以下の賃金で働く膨大な数の労働者がいて、瞬く間に最新の製造設備を集中させ、すぐに優れた技術を身につけることのできる優秀な労働者を集めることなどいまのアメリカでは到底不可能です」と言ったそうである。

 いまのアメリカのオリンピック委員会よりもジョブスの方がはるかに現実をよく知っている。

 しかし、そのアップルが中国でMacBookやiPad, iPhoneなどのほとんどを製造させている企業(台湾資本の企業)では、その労働条件の過酷さから自殺者が続出しているのである。

 これがいまの「グローバル資本主語社会」の現実である。その現実とオリンピックチームのユニフォームがアメリカ製でなければならないと息巻く連中との間にある、この驚くべきギャップ、そして彼らの現実感覚のなさに、私は思わず笑ってしまったのだが、その後で、これは笑って済まされるような問題ではないと感じた。

 日本の多くの若者、そして「若者文化」を造り出していると自負するデザイナーたちもやはりこうした連中と同じ水準なのではなかろうかと思うからだ。この上滑りする安っぽい文化とそれを支えている資本のもたらす驚くべき矛盾の根底にある真実を見るべきある。

 デザイン界の「オピニオンリーダー」たちの様に、驚くべき低賃金で過酷な労働に耐えている製造部門の労働者たちを忘れて「デザインによってよりよい社会をうみだそう」などというべきではない。デザイナーたちは自分たちがいかなる状況に置かれた頭脳労働者であるのかを知るべきであろう。

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 上にに書いただけでは、誤解される恐れがあるので、追記をすることにした。中国でもいまヨーロッパ市場が不調であることや、アメリカも日本も「景気」がよくないため、輸出が伸びず「経済成長」が7%台に下がった。中国国内では、物価が高騰し、労働者の賃上げ圧力も強まり、外国資本がミャンマーなどのさらに労働賃金の安い国へと流出し始めている。そこで中国政府は、国内需要を活性化させることで「成長」を維持させようとしているようだ。しかし、ここには、一つの大きな矛盾がある。国内需要を活性化させるには、労働者階級の「購買力」を高めなければならず、そのためには労働賃金を相対的に上げねばならない。一方、グローバル市場では、労働賃金がさらに安い国々で作られた商品が市場に登場し、中国製の商品はそこでの競争力を失って行くことになる。

 そこで中国では、省エネ家電やエコカーなどの高付加価値商品に力を入れようとしているが、これまでの急成長政策で国内の労働者の格差は増大し、こうした高付加価値商品を買える人々はいわゆる富裕層に属する人たちしかいない。国内的な労働者階級の格差は民族問題という形でも爆発しており、政府はそうした国内的な矛盾から労働者階級の目をそらすために、対外的な領土問題などによってナショナリズム的感情をあおり立てているようだ。

 元はといえば、鄧小平以来の「改革開放」政策で、外国資本を導入して、生産技術を吸収し、自国の農民や労働者の労働力をグローバル化した資本のもとに提供したことがそのような結果をもたらしたのであるが、いまの共産党政府にはそれに対する反省は何一つない。

 中国の「高度経済成長」でもっとも大きな利益を獲得したのはそこに進出したグローバル資本家たちとそれを導いた中国共産党政府の官僚たちであって、もっとも過酷な労働と搾取にさらされたのは、他ならぬ中国の労働者階級と農民たちなのである。

 彼らは、いまやかつての日本製品に近い高品質の製品を生み出す能力を身につけ始めたにも拘らず、やがていまの日本の労働者と同じ運命をたどることになるであろう。過当競争と過剰消費によってしか生き延びて行けないグローバル過剰流動資本のもとで、自ら臨んだわけでもないのにエネルギーの無駄使いや環境破壊の従僕としてこき使われ、見たことも聞いたこともない小さな島の帰属をめぐって「上からの」キャンペーンで「侵略者日本をぶっつぶせ!」と叫ばされ、日本の労働者階級からも総スカンを食っているという悲しい事実を知るべきであろう。

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