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2012年8月24日 (金)

先端IT技術 後日談

 前回の「閑話休題」で書いたわが不具合パソコンとの格闘記の後日談である。

パソコンが2年前に買ったものであり、販売店の5年ワランティーに入っていたので、販売店に修理を頼むことにした。販売店の修理窓口で、担当者が早速わが不具合パソコンのスイッチを入れて、最初のチェックを行った結果、どうも簡単に原因が究明できなかったようで、お預かりということになった。私は承諾して家に帰った。

 2日後にその販売店修理担当者から電話が入った。「どうもマザーボード全体を交換しないとダメなようで、結局製造元に修理を依頼する以外ないようです。そうなると5万円以上の修理代がかかりますが、当店のワランティーのカバーでお客様はそのうちの3割をご負担して頂くことになります。どうされますか?」と聞いてきた。私は「う〜む、そんなにかかるんですか。そのパソコンまだ買ってから2年しか経ってないんですがねえ」というと、先方はこう言った「はあ、ま、いまのパソコンは寿命3年と考えて頂いてよいと思いますよ」と。私はしぶしぶ製造元での修理を承諾せざるを得なかった。

 要するに、いまの最先端IT技術を駆使したパソコンは寿命3年という設計であって、言わば消耗品なのである。外観はいかにも精密感・高級感あふれるデザインなのだが、中身は3年持てば良いのである。3年も経てば、その間に次のモデルが発売され、それに買い換えさせる、というのがこの種のIT技術商品製造企業の常識なのだ。修理代がパソコンの価格と同じかそれより高いことすらあるということは、要するに修理して長くつかってもらうという思想がまったくないことを意味している。しかもこれらの商品の開発とデザインはアメリカの本社で行っているが、実際にそれを製品化するのは、労働賃金がアメリカの1/5以下である中国やもっと賃金の安い国々の労働者達なのである。

 こうして、まだ使えそうなパソコンが次々と中古市場に登場し、やがては「不燃ゴミ」として有料で引き取られていく。その間では中古販売店や廃棄物処理会社などがそれによって利益を獲得するという仕組みである。これがいまの「ものづくり」産業の実態である。

 このパソコンのメーカーは、いまやアメリカで、その会社の「企業価値」が史上最高の値をつけたと報じられている企業である。この企業の創業者は最近亡くなったが、いまや伝説的「アメリカンドリームの体現者」として世界中のIT製品企業の目標となっている。

 いまや「IT技術企業」のもたらす様々な商品がわれわれの生活の周辺で大量に購入され、われわれの生活を急速に変化させてきている。いまやインターネット関連技術商品は生活の必需品となった(正確に言えば「させられた」であろう)。否応なしの生活文化の変質である。これを「便利で豊かな生活の実現」と宣伝するのが、いまの支配的イデオロギーである。

 それを推進させてきたのは、親から多額の入学金や授業料を支払ってもらっている学生や、さほど高くない労働賃金で長時間労働を課されている若い「労働者」達や、彼らを中心とした「コンシューマー」と呼ばれる人々である。そうした人々がなけなしの財布から支払った金が、IT技術企業や販売店や中古販売店、廃棄物処理業などの経営者あるいはそれらに資金を融通している金融資本家の懐に入り、それらの金は、IT技術企業の次期モデル開発資金を供給するという仕組みである。

 「コンシューマーが、新しい製品を望んでいるからであり、国際市場で競合企業が次々と新製品を出すのでそれと対抗するため」という理由で、膨大な無駄な消費によって急速に地球資源の枯渇を推し進め、自然環境の破壊を容認させているのである。

 21世紀の華やかな技術文明はこういう「経済的土台」の上に成り立っており、それゆえその土台が持つ、致命的な欠陥にほとんどの人々が無自覚な状態に置かれる中で、破滅的な状況へと刻々と進んであるのである。

 これは「こまったもんだ!」といってため息をついているだけでは片付かない問題であることは確かだ。「デザイン論」研究者の端くれとしては何とかこの問題の本質と構造を明らかにしなければならないと痛感している。

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