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2012年11月 7日 (水)

フランス社民党の資本家的本質

 今朝のNHK BSTV国際ニュースで、フランス・ドゥーのニュースが報じられていた。驚いたことに、オランド大統領が、フランスの経済的状況を回復させるために、企業への減税を実施し、その減収分を付加価値税の増加によって補うことを考えているようだ。それによると、企業への減税によって企業の税負担を軽くし、その分雇用を増やせるようにすること、そしてそれによって減じた政府の税収を付加価値税(日本の消費税に当たる税金)を増やしてこれを埋め合わせるというのである。社民党系の大統領の政策とはとても思えない。

 これをフランスの労働者は許すであろうか?消費税増額に敏感な日本なら多分この政策は通るまい。まず、第一に、「企業への減税が雇用を増やす」という考え方がそもそも間違っていると思う。資本家的経営においては、減税はそのまま「生産費用」の減少となり、資本家の獲得する利潤の増大になるが、その利益増大分は必ず新たな投資先に向けられ、労働者には決して還元されず、その反対に、企業内での「合理化」によりますます労働者を圧迫することになる。

 雇用を増やし、価値を生み出す労働力が増えれば、資本家の利潤率は上昇するが、国際市場での競争においては、同じ商品を生み出すのに要する労働力が安い国で作られた商品が圧倒的に強い。だから、資本家は労働賃金の高い自国の労働力をできるだけ「合理化」によって減らし、労働力の安い国の生産資本に投資しそこでの労働力を獲得し、搾取を拡大する。

 その結果どうなるかといえば、国内(ここではフランス)の労働力は生産部門から放逐されて不生産部門に流れざるを得なくなる。不生産部門とは例えば、宣伝広告業、レジャー・エンタメ部門、外食産業、付加価値産業(こういう言葉が適切かどうかは分からないが例えばデザイン業などもこれに入る)など、そして軍需産業や金融業も位置づけは異なるが不生産的産業である。

 企業減税によって、資本家を初めとした富裕層は潤うので、彼らの収益を私的に消費する場所として、こうした不生産的産業が活気を得て、そこでの雇用は若干増えるかもしれないが、大多数の労働者は、生活資料への出費が付加価値税増税によって、増加し、生活は苦しくなる。結局、労働者は不生産的企業での不安定な雇用に活路を見いだすしかなくなるのである。そしてこの不生産的産業でもつねに資本間の競争が行われ、倒産や企業買収が繰り返され、ここからもつねに「合理化」によって多くの労働者が放逐されるのである。

 アメリカの大統領選はいま開票の最中であり、現時点で結果は不明だが、もしロムニーが次期大統領になればこれと似たような政策をとるだろう。いまやヨーロッパの社民党勢力はアメリカ保守系の政党と同類になってしまったようだ。

 「企業は社会に奉仕するためにその業務を行っており、そこでの経営者と従業員は一心同体であり、ともに運命共同体を形成している」という思想こそ資本主義社会における支配的イデオロギーであることに気づくべきだ。

 資本主義経済の法則下においては、企業を経営する立場にある者は、どんなに優れた人格の持ち主であれ、資本の人格化された形でしか機能しえない。その経営において、雇用という形で労働者の労働力を「賃金」と引き替えに買い入れ、労働者の労働によってその賃金分を超える剰余価値を生み出させ、それを無償で資本家的経営者が獲得し、それが結晶化された商品を市場で売りさばくことで利潤をあげ、その企業の経営が成り立つという資本主義社会の基本形が「当然のこと」として認められているのである。

 ここで資本家的経営者が、企業経営の必要条件として労働者から無償で奪取している剰余価値部分は、本来、社会を成り立たせるためにともに働いているすべての労働者たちが必要な共通財として蓄積し、共通の目的(例えば、医療、教育、福利厚生など)のために支出されるべきものなのだ。それが資本家のあらたな投資のために「私的」に用いられ、社会にとって本来必要もない競争に勝つために支出され、一方で社会的に必要な共通経費は労働者の生活費として与えられた賃金から税として差っ引かれる。これが不条理でなくて何だろう?特に次世代を担う若者たちはこのことに気づき、世の中で起きていることの真実を知るべきだと思う。

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