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2012年9月16日 - 2012年9月22日

2012年9月19日 (水)

尖閣諸島問題を考える

 民主党政権が、石原都知事の「尖閣都有化」を阻止する目的もあって島の国有化を決めて以来、中国での反日運動が破壊活動を伴う激しい暴動となり、日系企業が標的となった。街では日本語をしゃべらない方が安全だという外務省からの通達もでているそうだ。
 幸い、この状況に対して日本側はいまのところ冷静で、反中運動をまだ激化させていない。朝日新聞に掲載されている「耕論 愛国」では、「右より」と見られている人物が、「愛国」について述べているが、いづれも過激な「愛国主義」には批判的である。むしろ過激なのは自民党党首候補の連中くらいなものであろう。
 NHKのニュース番組で、中国のパナソニック工場が破壊された映像を出し、この工場は30年前に当時、鄧小平氏が訪日し、松下幸之助氏と会見して協力を求め、その後日中合作の模範的企業として中国に根を下ろしてきたのだ、と説明していた。
 たしかに、日本の産業界には、日中国交回復以来、40年に渡って営々と築かれてきた日本と中国の間での経済的協力関係が、尖閣問題で一気に崩れるかもしれないという不安はあるだろう。そして報道されるように、いま反日運動を中心的に担っている若い世代は、こうした日中経済協力のプロセスに関してはあまり知らないであろうし、中国共産党の政策に基づく、「愛国教育」の「成果」がこうした反日運動として現れたとも言えるであろう。
 反対に日本の若者たちは、「柳条湖事件」などまったく知らない人たちがほとんどであり、戦時中の中国での日本軍の犯した数々の犯罪的行為にはあまり関心がないようである。長いこと自民党政権のもとで、政権担当者たちが「靖国参拝」という形で日本軍属の人たちへの慰霊を行ってきたし、戦時中の日本軍の行為を「侵略」とすることには異を唱え、歴史認識が中国とまったく異なる教育がなされてきたことも事実である。
 しかし、もう一つ忘れてはならないことがある。それは、社会情勢の著しい変化によって、中国の若者たちが、矛盾に満ちた状況に置かれているということだ。
 彼らは、中国国内での「格差」拡大の中にいる。いわゆる「富裕層」はこの30年間に、日本など資本主義諸国から投入された資本と技術によって著しい成長を遂げた中国の産業界の恩恵を受けた人々であるが、残りの大部分の人々は、その恩恵に与れず、苦しい生活を送らざるを得なくなっている。
 そうした不満が「尖閣問題」が先鋭化するよりはるか前から日系企業に向けられるようになってきていた。かつての毛沢東時代は貧しくはあったが、社会的格差はそれほどなかった。しかしその後「豊かになれるものから豊かになればいい」という鄧小平の方針に従って中国は、共産党独裁政権下で資本主義経済を導入して「経済成長」してきた。そして貧しい農村から駆り出され、工場労働者となった莫大な数の人々の過酷で厳しい労働の結果によって、今日の中国の繁栄がもたらされたにも拘わらず、その立役者であるはずの労働者階級は、いつのまにか少数の「富裕層」と多数の「貧困層」に分かれてきた。
 こうした状況が、中国での日系企業への反発に向けられ、「愛国教育」の成果と結びつき、今日のような反日状況が生み出されたのであろう。
 反日運動で過激な行動を取っている若者の何人が「釣魚島」の地理的な場所や、そこにかつて日本人が住んでいたという事実を知っているのだろうか?
 小さな島の帰属を巡って、互いに「愛国感情」をエスカレートさせていったい何が得られるというのだろうか?それによって失われるものは計り知れない。日本という地域に住む人々と中国という地域に住む人々が、ともに矛先を向けるべきなのは、互いに「愛国」の名のもとに相手の個人としての尊厳を無視し傷つけ、小さな島の領有権を張り合い「国益を守る」と称して生身の人間に無用の流血を生むような「思想」を吹き込んできた両国の支配階級なのではないだろうか?

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