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2012年11月18日 - 2012年11月24日

2012年11月18日 (日)

デザイン学会秋季企画大会に参加して思うこと

 昨日実践女子大で開催された表記学会に参加してきた。テーマは「これからのモノづくりとデザイン」であった。私はすこし遅れて行ったので、午前中の記念講演を途中から聴くことになった。韓国デザイン界のドン、Lee Kun Pyo氏の講演だった。彼は昔、韓国やイギリスで行われた国際学会に研究発表で出かけた際、何度かお目にかかったことがある。そのときはKAISTの教授であった。いまや日本の電機メーカーを抜いて世界有数の総合電機メーカーとなったLGの重役である。講演はLGの企業戦略についての話であった。これについて今はコメントを差し控えておこうと思う。

 午後は、パネルディスカッションだった。4人のパネラーが、「これからのモノづくり」について述べたが、その中で、面白かったのは、FabLabなる運動を行っている慶應義塾大の田中氏の発表であった。これは、前々回のこのブログでも取り上げた、クリス・アンダーソン氏の影響を受けて日本で立ち上げた、「モノづくり工房」運動である。インターネットで情報交換を行いながら、手軽に入手できる工作機械やパソコンにつなげて使う3次元プリンターを用いて、使用者の要求に応じて何でも作ってしまおうというのである。田中氏はこの草の根的生産システムによって、規格化された製品しか生み出せない大量生産システムではなく、ユーザの個別ニーズにそって「必要なモノを必要な量だけ作る」生産を社会的に実現していこうというのである。
 この「必要なモノを必要な量だけ作る」システムは私も15年以上前からいろいろなところで主張してきたことであるが、技術的にはこれがある程度可能になってきたのである。使う人が必要に応じて自分たちで作ってしまう、というFabLab運動は私も確かに面白い試みだと思う。しかし、「何でも作れる」というのはウソで、当然、作れるモノには、大きさや素材上の制限、作るモノのメカニズムやシステムの複雑さの度合いなどに制限があることは言うまでもない。そして、大規模な生産設備を要する生産物(例えばICチップやクルマなど)、社会インフラ(交通機関や発電所・上下水道など)などは個人レベルで作れるモノではない。また生活必需品に関しても、前々回のブログでも述べたように、商品市場での過酷な競争のもとで商品として売られる製品の生産は、生産コストを下げるために大量生産方式をとらざるを得ないだろう。
 そうなるとどうしてもFabLab方式は「隙間産業」的なモノやすでに大規模量産企業で作られた製品を使用者の個別ニーズに合わせて「カスタマイズ」すること、価格が高くても買い手がつく(つまり「付加価値的」商品である)奢侈品や趣味的領域のモノ作りの世界しか社会的な主導権を得られないだろうと思う。
 いわゆる「地産地消」的な考え方はかなり以前から存在し、これとグローバル市場を結びつけた「グローカル」システムなどという考え方が昨今主張されている。さらに以前このブログでも紹介したセルジュ・ラトゥーシュのような考え方もある。しかしこれらの主張はいずれも「グローバル資本」の正体とその驚くべき支配力を甘く見ていると思う。こうした一連の「草の根生産システム」は一方で「草の根流通経済システム」(例えば、地産地消地域のみで用いられる労働証書的代替貨幣のようなものなど)に支えられなければ、いまのグローバル資本の支配を脱することは難しいだろうと思う。
 すでにFabLab運動もグローバルな方向を目指しているようであるが、「草の根流通経済システム」の方もグローバルを目指すべきであろう。「草の根」と「グローバル」は対立概念であり、これをただ並列させてみても矛盾だらけであって「草の根」側はすぐにグローバル側に飲み込まれてしまうであろう。
 私の考えでは、「草の根生産消費システム」とそれを支える「草の根流通経済システム」は、初めは国内の各「草の根生産消費システム」と連携を進め、やがては国際的連携を組み、グローバル資本に対抗できる「グローバル草の根経済システム」を作って行かなければならないのではないかと思う。もちろん、これがスムースに何の抵抗もなく行われるはずもなく、ある時期には二重経済システム(政治的には二重権力)の様な状況も生じるかも知れないし、かなりの摩擦や抗議運動という形で展開されることになるだろう。
 こういう歴史的な展望のもとに「ものづくり」のあるべき姿を考えていくことが、われわれの未来を切り拓くことになるし、「デザイン」という行為のあり方自体に「革命」をもたらすことになるのではないだろうか?

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