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2013年4月25日 (木)

アベノミクスの「値下げ禁止令」をめぐって

 昨日から、政府が、来年からの消費税増税で「消費税還元セール」などという名目で安売りを行うことを禁止する法案を打ち出したことが話題になっている。

 暮らしに必要なものが少しでも安く買えるのは生活者としてはありがたいことである。ただでさえ雇用が不安定で賃金が上がらない大部分の労働者にとって、生活資料が増税で高くなれば生活がますます苦しくなるからだ。それを「安売り禁止」とはなにごとだ!
 たしかに、一部卸売り業者や小売り業者にとって、コスト的に余裕のある大手企業が値下げ競争で圧力をかけてくるのは厳しいことだ。それはコストぎりぎりで商売する中小業者にとって死活問題になりかねない。政府は、それを防ぐことが目的であるかのように言っている。しかし本音はもちろんアベノミクスのインフレ政策にとってそれが障害となるからである。
 一方で学者先生は「政府が広告宣伝やセールに細かく口を出すのは小売業者の「営業の自由」を侵害する」(朝日新聞4月25日朝刊1面より)として独占禁止法にうたう「自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、消費者の利益を確保する」という趣旨に反するとしている。そもそも「自由な競争」とはいったい何のための誰と誰との競争なのか?そしてそれが何をもたらすのかといったことはこの学者先生にはどうでもいいらしい。
 この一件は、いろいろな意味で資本主義経済の矛盾を露わにしているといえるだろう。つまり、生活者ができるだけ安いものを買い、お金を節約して無駄な消費を抑えるというきわめて合理的な経済行動が、「デフレ」を招き、経済の支配者にとっては利益が上がらず不都合なことになるという矛盾。だから彼らはできるだけ消費(敢えて言えば無駄な消費)を促し、なけなしの貯金を使わせてものを買うように仕向ける。「消費拡大による経済の活性化」というヤツである。これ自体がすでに経済本来の原則に反している。そしてそれをスムースに行わせるためにお金を増刷(つまり価値実体のないお札をどんどん生みだ)して「天下の回り物」をできるだけ早く多く市場に回転させようと目論む(これは必然的にバブルを生む)。それによってまずお金を右から左に動かして利ざやをもうけている金融企業や投資家はカネを投資しやすくなり(つまり最初に彼らが儲ける)、次に産業資本企業はカネを借りやすくなり、それによって新規事業の開始や国際市場での競争に参入しやすくなるので、利益をより多く上げるチャンスもできる。そして政府は利益を多く上げることのできた企業から税金を少しばかり(消費税に比べればはるかに少ない税を)頂戴して、公的資金の一部に回そうというのである。
 だが考えて欲しい、アベノミクスで企業が利益を増やす前に、すでに消費税の増税が決まっている。結局、社会保障や医療保険などもっとも重要な公的資金の大半は労働者階級がその賃金から負担させられることになるのだ。ご用経済学者はこれを「受益者負担」だと言うだろうが、マルクス経済学を少しでも知っている人ならこれはとんでもない間違いであることは明らかであろう。
 そしてなによりも確かなことは、現在の国際競争下で、たとえ企業の利益が上がったとしても国内の雇用はそれに比例して増加することはなく、海外の安い労働力を求めて資本はどんどん国外に投資されるだろう。そしてたとえ国内の大手企業が利益を上げることができたとしても中小企業は大手との競争に勝てず、ほとんど大資本の傘下に組み込まれ、そこで働く労働者は相変わらず大企業との格差のもとに置かれるか人員整理されるだろう。そしてそこに消費税の増税である。
 来年のわれわれの暮らしはどうなるのか、まったくお先真っ暗である。アベノミクスで「ウハウハ」喜んでいるのは投資家や金融資本そして円安で潤う大手輸出企業と政府の方針が「人からコンクリート」にもどって潤う大手ゼネコンくらいなものであろう。

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