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2013年4月13日 (土)

アベノミクスにおける雇用法「改正」をめぐって

 さきほどのNHK-TV「週間ニュース深読み」で、表記の問題が俎上に上がっていた。安倍政権は、「3本の矢」の一つ、「経済成長戦略」の一環として、企業が、従業員つまり労働者を終身雇用する日本型雇用形態(就社型)から、欧米のような、職種別雇用(ジョブ型)に変え、それによって、すでに成長が望めなくなった企業から、これから成長する可能性のある企業に転職しやすくするため、現在の労働契約法の考え方を変え労働者を解雇しやすくするための法「改正」が必要だと考えているらしい。

 まず経済原則から言って、社会の変化(どのような変化であるかが問題なのだが)とともに社会が必要とする労働の種類が変化するからそれに応じて労働力の社会的配分が、変わることは当然と言える。現在の日本を見れば、かつての高度成長期の社会構造において中心的役割を担ってきた生産資本に労働力が吸収されていた時代と今ではまったく違うことは事実である。
 今世紀に入ってからの日本の政府は、こうした産業構造の変化に対応すべく雇用の「規制緩和」を行い、非正規雇用を大量に生みだす形で、労働力の社会的流動化を図ってきた。しかし、それは企業経営を行う側、つまり資本家側の視点で行われることであって、結果は、当然のことながら、就職率の低下や失業の増大、そして資本家と労働者の格差のみならず、労働者階級内における格差を拡大させてきたことは周知の事実である。そしてその結果労働者階級の消費欲は抑制(過剰な消費欲を抑制すること自体は経済原則からいって間違っていない)され、いわゆる「デフレ」状態が常態となったといえる。
 資本主義経済の論理から、資本はより多い利潤をもとめて、その投資先を決めていく。従って、利潤が見込めない企業から資本は撤退し、そこに雇用されていた労働者も解雇されることになる。あるいはその過程で、いわゆる「合理化」が行われ、不用となった労働者は「追い出し部屋」に追い込まれ、希望退職や早期退職という形で「合法的に」実質的解雇が行われる。こうして資本家側は、利潤の多く得られる企業への投資を行えるようになる。これが資本家的な立場から行われる社会的労働力再配分の姿なのである。
 安倍政権は、「失業なき雇用の流動化」というスローガンのもと、どのような「失業なき」なのかについて何も語らず、まず資本家側に解雇の自由を与え、それによって「成長産業」への労働力の移動を目指そうというのだ。しかし「成長」産業資本も資本の論理にしたがって、「自由に」労働者の雇用を決めるのであって、ここでも労働者側は「失業の自由」は与えられるが、自らの労働力を売りに出さねば生きてゆけない立場である以上、「就職の自由」は与えられない。けだし労働者は資本主義社会では「労働力商品」なのであって、労働力市場での需要と供給の関係でその売買も決まるのだから。
 利潤率の低下した企業から放出された労働者に対し、失業対策として職業能力を身につけされるための教育が行われたとしても、もちろん次の就職先の保障はない。
 国際化した市場での「自由貿易」が進むことで、労働力商品の買い手である資本家は国境を越えて「自由に」安い労働力を求めて海外に進出している。日本国内での労働力商品の価格(労働賃金)が下がらないかぎり、国際労働市場での勝ち目はないからである。
 一方で、日本の労働者階級は、労働力商品同士の競争(就職戦線)が激しくなり、競争に負けた労働者はさらに低い労働条件の労働に就かざるを得なくなる。労働力商品市場で勝利した一握りの労働者たちは比較的高い賃金を獲得するかもしれないが、大多数の「その他の労働者」は、常に新たな就職先を探して転職を繰り返しながら、労働力商品の価格(労働賃金)を低く押さえ込まれ、政府の「インフレ政策」によって値上がりした生活消費財を買わねばならなくなる。
 かつての生産資本への労働力の吸収が中心であった高度成長期とまったく反対に、資本の成長を助ける雇用法の「改正」によってますます労働者の労働条件の悪化をまねき、生活を圧迫することになりそうである。

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