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2013年8月19日 (月)

「新富裕層と国家」を観て

 昨夜のNHK-TVで放映された「新富裕層と国家」という番組を観た。ここでいう「新富裕層」とは、最近株の売買や投資などによって巨万の富を築いた人々のことであり、彼らが税金逃れのため、税率の低い国々(いわゆるタックス・ヘイブン)へ移住し、そこでカネ儲けに励んでいる実情の報告であった。

 新富裕層を生みだした母国では、高額納税者が減少し、税収が少なくなっている。そのため、社会保障などのために必要な国家的財源が逼迫し、国内での増税に踏み切らざるを得なくなっているのである。一方タックス・ヘイブンの国々は、税率を下げることで、富裕層を招き入れ、彼らが落とすカネでその国の経済を潤そう(トリックル・ダウン)というわけである。

 まったく腹立たしいことである。新富裕層の多くは、自室に何台ものパソコンを置き、そこに映し出されるさまざまな金融データを睨みながら、株の売り買いをしている。カネ儲けゲームに疲れるとイタリア製の超高級スポーツカーで街に繰り出し富裕層同士の贅沢三昧の会合に顔を出す。そこでも話題はカネ儲けの話である。
 こうして世界にだぶつくカネを右から左に動かすだけで巨万の富を稼ぐ連中の私的利益を護るために、もともとそれらの富を生みだした労働者階級が苦しい生活からさらに消費税などという形で税を払わなければ国家の財政が立ちゆかないのである。こうしてますます格差が拡大する。
 これに対して、富裕層に逃げられつつある国々では、所得税率の引き上げを実施しようとするが、そこで富裕層から激しい抵抗を受ける。彼らはこう言う「なにもしないで怠けている連中のために、こうして毎日一生懸命働いて儲けている人々がカネを払うことになるような増税は絶対に反対である」と。
 彼らのいう「なにもしないで怠けている連中」とは、例えば、安い労働力を求めて海外に生産拠点を移す資本家が増え、国内での雇用が減少して、失業させられた人々である。そういう人々が生きていけなくなって生活保護などをたよりに生活している状態を「怠けてなにもしない」と言っているのだ。
 そして、もともとそうした労働者たちが、雇用者である資本家のもとでの過酷な労働の結果として生みだした富を、まずその雇用者である資本家が吸い上げ、市場競争で過剰となった資本をさらに金融資本が吸い上げ、利益を獲得すべく回転させる中で、世界中の「カネ儲けの才」がある連中がこの流動過剰資本を奪い合っているのである。彼らは一日中パソコンを睨みながら株の売り買いゲームをすることで、多くの労働者の血と汗の結晶である財貨を右から左に動かして莫大な差益を売ることが「一生懸命働く」ことだと勘違いしている。
 いまこうした状態を抑えるために世界の富裕層を生みだした国々の政府が結託して所得税などの差を減らそうという動きが出ているらしい。しかし、この動きはそれらの政府が本質的に総資本代表政府であるかぎり成功しないであろう。アメリカがその典型例である。オバマの富裕層増税提案は共和党などの富裕層代表政党から猛烈な反発を受け、挫折した。
 アベノミクスも、消費税を上げないかぎり、社会保障財源が確保できないという前提に立っている。いくらインフレ金融政策をとっても、それによって大きな利益を獲得した企業が海外での生産に投資するので国内での雇用は増えず、儲かったカネは結局幾重にも重なる税金逃れのメカニズムの中で流動資本化し、国内には落ちてこないだろう。つまり「トリックル・ダウン」は幻想に過ぎないことが明らかになりつつある。
 世界人口のおそらく90%以上である労働者階級はいま、そうした富裕層の不当な私欲への怒りをためつつある。それがいつ、どのような形で爆発するかは分からないがいずれ爆発することは間違いないだろう。

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