« コメントにお応えして | トップページ | 橋本努氏と稲葉剛氏の「消費税批判」を巡って »

2013年9月30日 (月)

労働者の犠牲で資本家を護ろうとする安倍政権の本質

 来年4月から消費税を8%に増税する決意を固めた安倍政権であるが、一方で「解雇特別特区」法案を画策中で、この特区では、雇用される働き手との契約で、労働基準法で護られるはずの労働時間への制約や、残業手当、理由なき解雇の禁止など働き手の基本的権利を雇用者が守らなくてよいことになっている。ここでは、働き手は労働時間による賃金ではなく、会社への貢献度で賃金が決められる。言い換えれば、完全なる労働者使い捨て企業のための特区である。厚生労働省はあくまで労働基準法は例外なく運用されるべきであるという立場からこの法案に反対しているが、安倍政権では、新しいベンチャー企業の育成や企業の国際競争力を付けさせるための起爆剤という位置づけでこれを推進させようとしている。要するに安倍さんの本音は日本全国が「解雇特別区」になれば「経済はもっともっと元気になる」ということであろう。

 もう一つ、今日からNISAという新たな投資減税制度が始まったが、これは個人が100万円までの投資に関してその売却利益を獲得した場合に税金が課せられないという制度である。安倍政権の思惑は、莫大な金額にのぼる個人貯蓄を投資の形ではき出させ、「経済の活性化」を図ろうというものだ。しかし、これは結局、働く人たちが一生懸命働いて得た賃金の中から節約して老後の生活維持のために貯金してきたお金を、個人投資などを通じて金融界に吸い上げ、投資や投機という形で人のカネを右から左に移して莫大な利益を上げている金融資本に提供させようというのである。
 そしてもうひとつ、復興特別法人税の撤廃である。この税は東日本大震災への復興資金を調達するために、日本全体で痛みを分かち合い、復興を支援するという目的で企業に期限付きの特別税を課したものである。しかし、安倍政権は、「景気回復のため」という名目で、この復興特別法人税を期限が来る1年も前に前倒しで廃止し、企業の税負担を軽減しようというのである。安倍さんは企業を経営する資本家が利益を生みだすためには、家族を失い職場を失って絶望の日々を送っている東日本大震災の被災者たちが一日でも早く実現してほしいと願う復興が、資金不足などでまったく遅々として進んでいない現状などどうでもいいのである。
 安倍政権は、経済が活性化し、企業が利益を上げることができるようになれば、雇用も増え、賃金も上がる、と何度も言っているが、現実には決してそうはなっていないし、その原因も見えている。
 いま世界経済は、アメリカ、中国、日本などの中央銀行が「量的緩和政策」によって大量にばらまいているおカネが世界中を駆け巡り、新興国への思惑投資が過熱してバブル崩壊の危機に瀕している。そしてそれを引き締めようとする中国やアメリカの中央銀行による「量的緩和引き締め」の気配が明確になると世界の投資家や投機家が敏感に反応して投資先を変えたり、おカネの支出を控えたりするので、それによって世界経済が大きく揺すぶられる。つまりグローバル化した資本が過剰生産と過剰消費(これによって地球資源の枯渇や自然破壊が促進されている)によって生みだしている過剰な資本と、それをおカネ儲けのために動かしている金融資本家たちによって世界の経済が支配されており、もともとそれらの富を生みだした労働者たちはそのアクロバティックで空中楼閣的な「根無し草経済体制」の犠牲となり、貧困化させられているのである。
 だから、安倍さんがいくら「経済成長こそすべて」と言っても現実には、企業の利益は、この過剰なマネーから利益を吸い上げようとしている連中を太らせる結果となり、労働者たちには決して還ってこない。一見、賃金が上がったように見えてもそれ以前に生活資料の値上がりが先行し、結局実質的には労働者は貧困化せざるを得なくなるのである。
 安倍政権を支持し、次々と打ち出される労働者犠牲の政策にほくそ笑んでいるのは、これによって莫大な利益を期待でき、財産を殖やせる「富裕層」たちなのである。この安倍自民党を選挙で選んでしまった労働者たちは結局自らの首をしめることになり、自分も「新富裕層」の一員になれるかもしれないという幻想を抱いてNISAでなけなしの貯蓄を投資に回しても、増大するリスクによってそれを失う確率がどんどん高まっていることを忘れてはならない。

|

« コメントにお応えして | トップページ | 橋本努氏と稲葉剛氏の「消費税批判」を巡って »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/58293330

この記事へのトラックバック一覧です: 労働者の犠牲で資本家を護ろうとする安倍政権の本質:

« コメントにお応えして | トップページ | 橋本努氏と稲葉剛氏の「消費税批判」を巡って »