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2014年6月25日 (水)

アルゼンチン大統領府の訴えを巡って

 15日朝刊各紙にアルゼンチン共和国大統領府から前面広告紙面を使った訴えがあった。アルゼンチンは、数十年にわたる過重債務と低成長が原因で、2001年に世界金融市場最大の債務不履行国となり、1000億米ドルを超える借金を抱え、これを返却し金融を正常化するために債権者と、債務返済を可能にするための財源を確保すべく、経済成を成長させることを前提に返済の方法について交渉してきた。

 さまざまな困難を乗り越えて交渉を進めた結果、IMFへの返済も済ませ、ほとんどの債権者がアルゼンチン側の提案を受け入れ、事態は解決に向かって動いていた。

 ところが、債権者の一部で、しかも本来のアルゼンチンへの債権者ではなく、アルゼンチンの経済破綻をビッグビジネスチャンスとしてとらえ、デフォルト債を最安値で買って、そこから漁夫の利を得ようと狙ってきた投資家グループがこれを阻んだ。それらの投資家グループは、他の債権者と合意に達した債務返却の条件が自分たちに不利になるとアメリカの裁判所に訴えたのである。そしてニューヨーク地裁のトーマス・グリーサ判事はこの訴えを正当として判決し、濡れ手に泡をねらった投資家グループはまんまと漁夫の利を得ることになったのである。
 しかし、その判決に従えば、アルゼンチン政府は借金の返済が困難になると同時に、これまで交渉に合意してきた大部分の債権者が同じ条件を要求することになる。そうなればもはやアルゼンチンは再び莫大な債務を抱え、債務不履行国になることは確実である。さらに、こうした事実を、むしろアルゼンチンが借金を返済し渋っているからのような印象を世界に与えるためのさまざまな情報が意図的に流布されている。アルゼンチンの大統領府が出した前面広告紙面にはざっとこのような内容のアッピールが載っていた。
 なんということであろうか!たった一握りの、私利私欲の権化となった投資家グループによって一国の経済が破綻に追い込まれようとしているのである。しかもアメリカの司法までもがこうした連中に与するようになってしまったとは!
 アルゼンチン政府の怒りには共感を覚えるが、しかし、そもそもアルゼンチン政府がやってきた経済政策の何が原因でそのような債務不履行状態になってしまったのかもよく考えるべきであろう。
 「アベノミクス」にも見られるような、大規模な金融緩和という「景気刺激策」は、実体経済をはるかに超えて大幅にだぶついたカネは、資本の回転を速め、「経済成長」を推進させるかに見えるが、一方でそれは国債の発行量をどんどん増やし、これを中央銀行が買い支えることで成り立っている。そして、一見経済が活性化したかのように見えても、経済界は結局世の中の90%以上の働く人々の労働や生活を脅かし、このばらまかれた膨大な量のカネは、ある一握りの「超富裕層」に集中するのである。
 彼らは、「平等な権利」と「自由経済」を旗印に、あらゆる努力と戦略戦術を用いて、世界経済を自分たちのカネ儲けのために有利に振り回そうというのだ。しかしいったんこの国債への信用が崩れれば一気にその国は経済破綻に向かうことになる。そこでもまるでハイエナのようにデフォールトとなった債権を操って莫大な利益を得ようとする連中がいるのだ。
 グローバル資本の動向に歩調を合わせ、TPP交渉を押し進め、中国や韓国との関係を改善することに努力を払わず、もっぱら憲法の実質解釈改変による集団的自衛権確立に全力投球する安倍政権はこのようなあやうい経済体制の上に乗っかっているのである。いつ日本がアルゼンチンと同じようなことになるやもしれないのである。そしてそのときに犠牲になるのは労働者たちなのである。
 

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