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2014年9月10日 (水)

9日朝日朝刊の富山和彦氏インタビュー記事を巡って(その1)

 9月9日の朝日朝刊「オピニオン」欄は「成長戦略の勘違い」といタイトルで経営共創基盤CEOの富山和彦氏へのインタビュー記事が載っていた。富山氏は、アベノミクスの「成長戦略」における3つの「勘違い」を指摘し、いま必要な経済政策について語っている。

 第1は「日本の成長は製造業大手の復活にかかっている」という勘違い。第2は「地方は長引く景気の低迷で、働き口が少ない」という勘違い。そして第3は「生産制向上には徹底した規制緩和が必要だ」よいう勘違いだという。
 第1については、かつての高度成長期のようなトップに大企業があって、その傘下に多数の中小企業があるピラミッド構造では、トップが潤えば、下請け企業はそのおこぼれで潤うという構図はいまでは崩れ、大手製造業の多くは、生産拠点を海外に移している。いまや雇用者数でも付加価値額でも日本では7〜8割はサービス産業である。それはほとんど地域密着型で労働集約的な産業である。前者大手製造業の舞台をグローバル経済圏(G)とすれば、後者はローカル経済圏(L)であって両者は異なるルールで動いている。だから大手企業の法人税を減税しても国内ではその効果は少なく、おこぼれも落ちてこない。
 第2については、地方では働き口がないのではなく、逆にローカル産業では人口減少による人手不足で困っている。日本のサービス業ではサービス過剰で生産性が非常に悪い。生産性は労働時間あたりの付加価値なのでサービスに対価を支払っていないことになる。これまでは過当競争で単価が下がり、安い賃金しか払えなかったため、その分多くの雇用ができていた。生産性の低さがかえって失業を表面化させなかった。それが団塊世代の退職で労働力の需給が反転した。いまこそ生産性と賃金を上げることが必要なのだ、という。
 第3については、Gの世界では、(大手企業の競争力をつけるために)規制緩和などで市場原理を働かせることが有効だが、Lの世界では、閉じた商圏での競争なのでつぶし合いになりにくい。しかも医療や介護などの公共サービスの要求も多いので安易な規制緩和はブラック企業を利するだけだ。大切なことは、生産性の悪い企業に円滑に退出してもらうことだ。それには労働監督を含めた「賢い規制」が必要で、最低賃金を引き上げることが必要だ。最低賃金を上げれば生産性の低い企業は事業をやめざるを得なくなる。その場合、労働者が失業しないように、L圏に多いジョブ型の労働に向いた職業訓練を支援し、雇用を流動化させる必要がある、という。
 インタビューした朝日の記者は、二つの経済圏(GとL)という視点は、経済政策を巡る新自由主義とリベラル主義との対立を解きほぐす道でもある、と「賞賛?」している。
 アベノミクスの盲点を突いているようにも見えるが、私はこの「視点」は間違っていると考えている。その理由について、これから何回かに渡って述べることにしようと思う。
(続く)

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