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2014年9月19日 (金)

危うい世界経済体制

アメリカのFRBが当分金融緩和を続けるということを表明すれば、たちまち世界の株価は上がり、それがマスコミで報道され、一般大衆までが、「景気が良くなって安心だ」と思わせられる。

日本でも安倍首相が中国に対抗してインドに日本企業へのバックアップを通した多額の支援を約束し、中国でもインドにそれに対抗した支援を約束するなど、世界には「お金」が余っているようだがそれでもまだFRBも日銀もどんどんお金を市場につぎ込んでいる。
 本来、お金は、社会的に必要なモノを生み出すために要した労働の量によって測られる「価値」をモノに代わって表示するものであり、モノとモノとの交換を媒介するものであった。だからお金は、社会的に生み出されたモノの量によって決まる流通量で回転していたはずであるが、もうずっと以前から、実際に必要な流通量をはるかに超えてお金が発行されるようになった。それによってお金の実質価値はどんどん下がるはずであるが、いわば仮幻的にその価値の維持を可能にするメカニズムができたからだ。だからその意味で今ではお金は実効的価値をつねに上回る「仮幻的価値」を表示し、その意味で「余っている」のだ。
 その余っているお金の争奪戦で世界中の投資家や資本家たちは必死に競争する。それが「グローバル市場での競争」であり、それに勝ち抜くために、それぞれの企業で働かされる労働者たちは「市場で勝ち残るため」と尻を叩かれ、長時間労働や過酷な労働環境に耐えねばならなくなる。そして「規制緩和」のかけ声のもとで、労働者保護の法律はどんどん実質的に無内容化され、非正規労働者の使い捨ては日常化する。
 一方でお金のだぶつく市場ではそれを「儲け」につなげるべく、あまり必要でもないモノがどんどん作られ、生活者たちはその宣伝や売り込みに踊らされて安い給料をはたいてどんどんモノを買う。娯楽産業がどんどん新手の娯楽を売り出し、若者が未来に抱く不安感を一瞬ではあるが忘れさせる役割を果たしている。そして政府の鐘と太鼓で観光産業がどんどん外国の富裕層を招き入れ、日本を「おもてなし国家」に仕立て上げようとしている。
 こうして市場ではお金がどんどんつぎ込まれスピードを上げて回転する。それによって「成長業種」関連企業は莫大な利益を上げるが、その利益の大半は競争に勝つために再び投資される。だから世の中のために一生懸命働いて価値を生みだしている人たちにはちっともお金は回って来ず、途中で吸い上げられてしまう。これが支配層のいう「経済活性化」の実情だ。
 好景気で求人難だといわれているが、それは企業が利益を上げるために必要な「人材」(労働力商品)を確保するためだ。資本主義社会とは人間の能力が企業で利益を上げるための手段としてしか見られていない社会なのだから。
 こうして世界にだぶついたお金はどんどん投資家や資本家を肥やし、互いに競争を煽らせ、そこに雇用されて賃金と引き換えに労働力を支出させられる労働者たちは使い捨て化される。モノづくり企業の資本家は安い労働賃金を求めてどんどん国際的賃金水準の低い国々へ進出し、新たな金儲けを目論む投資家たちはそういう「成長国」にどんどん投資する。そして格差はますます増大する。
 だが、この世界中を回っている膨大な量のお金は、実はほとんど実体的価値がないのである。それはビットコインと同様、単に約束ごとで結びついた「記号」に過ぎないのだ。ビットコインの場合はルールを設けてその発行額に制限をすることで「交換価値」を維持させているが、いま、一般に流通するお金は、発行元の「中央銀行」がその価値を保証するからその信用で成り立っている。つまり「国」という企業が中央銀行を通じて発行する株券のようなものである。
 だからいったんその信用が崩れだすと、あっというまに貨幣価値は下落する。ローンの焦げ付きにより金融企業が危機に陥ったリーマンショックなどはそのひとつの現れである。
 日本政府は国債を発行して得たお金を海外にばらまいて人気取りをしている。そして日銀がどんどんその国債を買って、国債とお金の信用を維持しようとしているが、国債の信用がなくなったとたんに、お金の価値は崩壊し、それが単なる根無し草であったことが証明されることになる。現に天文学的数値になっている国債発行額はいったいだれがその信用崩壊のつけを負うのかを考えてみればよい。
 いまのグローバル経済(正確には世界資本主義経済体制)はそういう危うい状態にあるということは、それを支配している人々は絶対に口にしない。そして彼らにはそれ以外の道を見いだせない。
 だがその「成長」の危うさと虚偽性にうすうす気づいているのは、その支配層のために日々、労働を搾取され、自分の人生の明日をも知れぬ運命に翻弄されている絶対多数の人々である。それが世界中を充たしつつある不安感となっていろいろな形で噴出している。世界中で力を増しつつあるナショナリズムや、過激な行動で資本主義社会に代表される西欧文明を否定する「イスラム国」などもそのひとつといえるだろう。
 ナショナリズムやテロの頻発・増大はそうした出口を失った人たちの「爆発」と見るべきだろう。しかし、こうした世界的な危機意識から来る「爆発」を乗り越え、真実にもとづく危機への共通認識を深め、そこから一歩を踏み出すためには、世界中の働く人々がたがいに手を結んで団結するしかないだろう。

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