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2014年12月12日 (金)

アベノミクスのマルクス経済学的分析(その6:破綻への道)

 アベノミクスは、結局、資本家企業全体の利潤を減らしている「デフレ」状態を脱却させるため、全体として流通する貨幣量を増やす(いわく大規模な金融緩和)ことで、インフレ状態を生じさせ、それをテコに資本の回転を上げ、「機動的な経済政策」によって再び企業に莫大な利潤獲得を可能にさせる。それによって雇用つまり労働需要を増やし、名目賃金を上げることで労働者から税金を取りやすくし、生活資料の消費を促すことで、生活資料商品を生産販売する資本家企業に莫大な利益をもたらす。それらの利潤を資本家階級全体で再分配し、資本家達を活気づけ、労働者もその「おこぼれ」に与れるようにさせよう(いわく成長戦略)というのである。

  アベノミクスは結局1960年代に池田政権などが行ってきた「高度成長期」の手法を再現しようとするもので、当時、国内市場でも国際市場でも莫大な利益を上げていた資本だからこそ可能であったインフレ政策を基盤とした賃金の上乗せによる消費拡大という路線は、いまのような国内市場も縮小し、国際市場でも不利な競争を強いられている日本の資本家達にとって「賃上げ」などは到底不可能であることは明白だ。それにもかかわらず一部の高利潤企業で「賃上げ」している様に見えるのは、実はそれらの企業が、生産物の資本構成のうち可変資本部分(つまり労働賃金に要する資本)を若干増やしても、全体として利潤(剰余価値部分の生む利益)の低下をもたらさない範囲に収まるという見積もりがあるからである。高利潤の大企業の下請け中小企業が大企業のおこぼれをちょうだいできたのは 1960-80年代での話であっていまでは幻想に過ぎない。

 しかも大企業で蓄積された資本は国内に投資されることなく、海外の低賃金労働者を獲得するためと、海外市場での販路拡張や企業買収のために投資されるため、「お金」はほとんど国内に還ってこない。たとえ一部が国内に環流しても、それは労働者には決して回って来ず、利益を生みそうなビジネスにカネを注ぎ、そこから儲けを得ようとする投機家たちの手に落ちるのだ。 国内では利益を生まない生産企業ではなく、より高い利潤が見込まれる金融企業、サービス産業、レジャー産業、あるいは得体の知れないビジネスなど不生産的企業への投資が行われ、そこにある程度の労働力(大半は非正規雇用の)を吸収することになる。これを安倍さんは「雇用が増えた」と言っているのだ。
  こうして日本の資本主義社会は海外の低賃金労働の産み出す剰余価値への寄生的依存度を高めると同時に、内部でも不生産的企業の比率を高めその「腐朽度」を高めていく。
 しかもこれまでの長期自民党政権は、いずれも資本家企業中心の立場を取ってきたことによる 社会保障・複利厚生・医療など(本来は社会共通経費 )の膨張を補う(資本家の利益を損なわずに) ために莫大な国債発行による借金を積み上げてきた。これらは本来すべて資本家達が労働者達から無償で奪取している莫大な剰余価値部分から賄うべきものであるが、企業間の利益獲得競争をうまく機能させるためにそれを資本家、労働者双方からの租税によって賄ってきた。当然のことながら企業の国際競争力をつけさせるなどの理由で企業よりも労働者への税負担が増えていく。そもそも労働賃金は、資本家の利潤とは異なり、労働力の維持費である。それは資本家に剰余労働を無償で提供するための資本家にとっての必要経費(可変資本)なのであり、決して「所得」ではないのだから、この租税は一見「平等」のように見えてもその本質はまさに不平等である。
 国債も外国の政府や資本が買うより、むしろ国内で中央銀行が買い取ることがほとんどである。こうして国債は中央銀行が発行する「円」の価値を借金で保証しつつ、インフレ政策を強引に押し進めるための切り札となっている。
 いま、もし「異次元の金融緩和」による円の価値の大幅な暴落が現実化し、国債の信用が急落し、借金の利子が増大すれば、その債務額はいっきに天文学的数値になり、日本政府は財政破綻する。いくら金本位制ではない管理通貨制度のもとだとはいえ、いやむしろそれだからこそ貨幣の価値の実態が姿を現すとき、資本主義経済はその根底を揺さぶられることになる。
 こうした危うい綱渡りをしながら、資本家企業を優遇して、利潤が上がれば、雇用も増え、賃金も上がり、消費も拡大して、企業はますます利潤を上げるようになっていく、という「好循環」の絵空事をさもさも実現出来るかのように宣伝している。これがアベノミクスの本性である。
これでも「景気回復はこの道しかない」と叫ぶ安倍さんを信じ、14日の投票日に自民公明に投票しますか?
おまけにその先には憲法改定と再軍備が待っている。
(次回に続く)
 

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