« アベノミクスのマルクス経済学的分析(その2:剰余価値と消費税) | トップページ | アベノミクスのマルクス経済学的分析(その4:ケインズ「有効需要の原理」) »

2014年12月10日 (水)

アベノミクスのマルクス経済学的分析(その3:20世紀前半の資本主義)

 ここまではアベノミクスに特徴的な内容ではなく資本主義社会一般についての考察であるが、次に、アベノミクス特有の内容について考えてみよう。

 それには、少し長くなるが、20世紀において、資本主義社会が幾度か崩壊の危機にさらされながらもその形態を変貌させながら生きのびてきた過程を考える必要がある。「存在の論理は生成の論理」だからである。
 マルクスの存命中は、資本主義社会は、好況---恐慌--不況--- 好況というサイクルを繰り返しながら、その過程で資本構成(生産手段に必要な資本部分対する労働力に必要な資本部分の比率)の高度化を通じて、労働生産性を上げながら相対的剰余価値の増大 (同じ労働時間労働させても剰余価値部分の相対的比率が増大する)をもたらし、一方で絶えず、「生産の合理化」によってはじき出された余剰労働人口という形で労働者予備軍(つまり失業貧民)を社会に大量に沈殿させながら、資本の成長に必要なときにいつでも安い労働力が買える状態を維持して行った。そしてそれはやがて一方で一握りの資本家への膨大な富の集中を、他方で大多数の労働者の貧困の拡大という極限状態に達し、いずれ労働者階級による革命が勃発するはずであった。しかし、事態はそう単純ではなかった。
 20世紀になって株式会社などによる資本の社会的調達方法が普及し、また金融資本を通じて資本家の手にたまった遊休資本を「有効」に回転させるシステムが確立され、小切手や信用制度が拡充し、資本の蓄積が金融資本のもとに行われるようになっていった。こうした状況の中で極端な形での経済恐慌が起こりにくくなり、また一方で植民地の再分割などによる商品市場と労働市場の変化に伴う、戦争への危機が増大したが、他方では、株式投資などによる莫大な富が金融資本のもとに蓄積され、さまざまな形で資本家間で再分配された。こうして大資本家の「おこぼれ」を基礎として生活する金利生活者などが、いわゆる「中産階級」として育っていった。
 しかし勃発した世界大戦の中で、巻き起こるナショナリズム(「国益」という名の下に総資本の立場を普遍化するイデオロギー)にも扇動され、労働者階級は「国民」として資本家階級と一体化され、一丸となって戦争に向かうはめとなった。近代的「愛国心」はこうして労働者階級の犠牲による戦争の真実を覆い隠していった。
 結果、街々は破壊され、何千万もの死者を出し、それ以上の人々が生活を奪われ戦争は終わった。その中で、もっとも遅れて資本主義社会に移行しつつあったロシアにおいて史上初めての社会主義革命が起こった。しかしそれはやがてマルクスが予想していたものとはかなり違った形になっていった。
 この大戦と次の第二次世界大戦の間の時期は、直後のスーパーインフレが収まると、戦勝国側にとっては、戦争賠償などの取り立てなどを基礎として資本の大きな成長をもたらした。その中には日本も含まれる。世界資本主義経済の中心はイギリスからアメリカに移り、アメリカでは自動車の量産化が始まり、それにともなって道路や住居などの形態が大きく変化し、インフラや生活様式そのものも大変貌していった。株取引や銀行などの金融業はもちろん、生活資料の流通・販売、サービス業の増大などさまざまな「非生産部門」の労働者が「サラリーマン」(これが後にいわゆる「中間層」の中核となる)として登場し増大するようになった。
 しかし、1929年10月のある日突然、ニューヨーク株式市場が大暴落し、そこから悪夢のような世界金融恐慌が始まり、世界的不況の中で企業をクビとなった多くの労働者達が路頭に迷うことになった。
 一方で敗戦国であるドイツでは賠償支払い不能状態など苦境の中、ナショナリズムが台頭し、対するドイツ共産党などのインターナショナリズムと激しく衝突し、やがてドイツの労働者階級は「国家社会主義(ナチズム)」という「社会主義」と似ても似つかぬ集団の支配のもとに社会を委ねることになっていった。
 そして米英を中心とした連合国側とドイツ・日本・イタリアを中心とした枢軸国、そしてソヴィエト連邦を中心とした社会主義圏という三つどもえの第二次世界大戦に突入していったのである。
 この資本主義陣営最大の危機において、いわゆる「自由主義経済諸国(アメリカとイギリス)」では、資本主義経済体制の根本的見直しが行われることになった。そこで登場するのがジョン・メイナード・ケインズである。
(次回に続く)

|

« アベノミクスのマルクス経済学的分析(その2:剰余価値と消費税) | トップページ | アベノミクスのマルクス経済学的分析(その4:ケインズ「有効需要の原理」) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/60784014

この記事へのトラックバック一覧です: アベノミクスのマルクス経済学的分析(その3:20世紀前半の資本主義):

« アベノミクスのマルクス経済学的分析(その2:剰余価値と消費税) | トップページ | アベノミクスのマルクス経済学的分析(その4:ケインズ「有効需要の原理」) »