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2014年12月19日 (金)

アベノミクスのマルクス経済学的分析(その7:再生産表式を巡って)

 総選挙の前にアベノミクスのインチキ姓をあきらかにして何とか自民公明政権の再登場を阻もうと一生懸命がんばって書いてきたこのシリーズも、自民公明「圧勝」という結果になって力が抜けてしまった。しかしそうも言っていられないので、ここで、マルクスの有名な再生産表式を使って、アベノミクスの基礎となっているケインズ型資本主義経済の矛盾を検証しようと思う。
 マルクスは資本論の第一巻で、生産物の価値がそれを産み出すのに必要な社会的に平均的な労働時間で表示されることを論証し、資本家がどのようにして労働者が生み出す価値を搾り取ってきたかが示されたが、第二巻では社会の生産から消費までの一連の活動がそれらに必要な生産物をどのように産み出し、どのように流通・分配し、どのように消費しているのかを、生産物に表れる価値の構成とその転移によって説明している。
 あらゆる生産物は資本家的な視点から見ると、生産設備・工場などの固定資本部分と原材料などの流動資本部分を含む不変資本部分c(生産物に転移するだけで新たな価値を生むことのないという意味で「不変」である価値部分)と、それらの生産手段を使って生産物に新たな価値を産み出す労働力に投じられる、つまり労働賃金として支払われる労働力の価値部分として可変資本部分v(投ぜられた価値以上の価値を生むという意味での「可変資本」である)、そしてその労働によって労働力の価値を超えて産み出される剰余価値部分mによって構成される(つまりc+v+m) 。
 いま社会的総資本が年間に産み出す生産物を生産手段(機械設備・工場・原材料など)部類の生産物「1」と生活手段(食料・衣類・住居など)部類の生産物「2」という2部類に分けてみれば、もし総資本が翌年も増えずに一定であり単純な再生産を繰り返すとすれば、1(v+m)=2(c)である。つまり1部類の、生産物としては生産手段であるが価値としてはそれを産み出すのに必要な可変資本部分と剰余価値部分の和に該当する価値部分が、2部類の、生産物としては生活手段であるが価値としてはそれを産み出すのに必要な不変資本部分に投じられる価値部分とが交換されなければ社会的再生産は行い得ない。残りの1(c)は1部類内の不変資本部分として投入され、2(m+v)は生産物としては資本家と労働者のための生活手段であり、価値としてはそれを産み出すのに必要な労働賃金とそこから生まれる剰余価値部分に当てられる。
 そしてもし、総資本が拡大再生産(つまり「経済成長」) を行うならば、1(v+m)>2(c)でなければならない。つまり生産手段部類の労働力とそれが生む剰余価値部分が、つねに生活手段部類の不変資本部分より大きくなければならない。言い換えれば資本が「成長」するためには生産手段部類での労働力が産み出す価値部分がまず増大しなければならないのである。しかしそれは市場での競争に勝つために労働生産性を上げるべく「技術革新」を迫られ、そこへの資本の投入(いわゆる設備投資)によってなされ、資本構成の高度化(c/vの増大)が行われる。そのため少ない労働力で多くの価値を産み出すことになり、 市場での商品価格は下がり「競争力」はつくが、それによって搾取できる労働力の数が減るため搾取できる剰余価値量は減る。そのため資本家はより生産規模を拡大し、搾取できる労働力を確保しようとし、それに比例してより多くの商品をさばかねばならなくなる。
 (詳しくは資本論第二巻第20章、21章、あるいはもっと要領よく簡潔に書かれた宇野弘蔵「経済原論」の第2篇、第3章を参照してほしい。)
  しかしそれはある時点で飽和状態となり、投入した資本に見合う利潤を上げられなくなり、過剰資本が形成される。(宇野弘蔵の「恐慌論」ではこういうとらえ方はしていない) そこで次に2部類の生活手段商品の生産を増やし、2(c)部分の増加を促すことになる。いわゆる「消費拡大」である。これが順調にいく間は過剰資本の圧迫に悩まされることはなくなる。これがケインズの「有効需要の原理」の(私による)マルクス経済学的解釈である。しかし、この方法はいずれ破綻をきたす。地球の資源は有限であり、際限のない消費拡大がそれを急速に消費することによる資源枯渇と自然環境の悪化は人間の生活を危機に陥れるからである。
 しかし、資本主義経済はこの絶対的破綻に至る前にそれがあたかも「自由な繁栄社会」のような印象を与えて人々をその中に安住させようとする過程を経過する。
次にその過程について考えてみよう。
(次回に続く)

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