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2014年8月3日 - 2014年8月9日

2014年8月 9日 (土)

エボラ出血熱ワクチン開発をしてこなかった製薬業界

いま西アフリカでエボラ出血熱が流行し、感染地域の政府だけではお手上げの状態となり、WHOが危機宣言を行った。発症した患者に触れることで感染するが、致死率90%と言われ、現地の医療関係者の多くも感染死してしまった。飛行機で世界中簡単に行き来できる時代なので、いつ全世界的なスケールでアウトブレークになるかもしれないという。しかもいまのところワクチンもなく、有効な治療法もないのだそうだ。実に恐ろしい話である。

 エボラ・ウイルスが中央アフリカで発見されたのは、1976年とのこと。それ以来38年間、世界の製薬業界はエボラに対して何もしてこなかった。最先端科学を誇り、ノーベル賞クラスの研究を多く抱えている世界の製薬会社は、一方で新薬のネタになりそうな生物や物質を探すため世界中のジャングルや秘境に社員を派遣しているようだ。
なのに、なぜいままでエボラのワクチンは登場しなかったのか?答えは、儲からないからである。限定された地域しか伝染が拡がらない感染症であり、患者数も流行地で数百人のオーダーだったので、そのために多くの人材を割いてワクチンや新薬の開発を行っても採算がとれないと踏んだのであろう。
その結果がいまの状況を生み出したといえるだろう。このおそろしいウイルスは、そんな人間界の金儲け主義的科学技術に一撃を与えつつある。
 結局はお金のある人間だけが現代の科学技術の恩恵を受け、金儲けにつながらない問題はつねに後回しにされる。これが資本主義的文明の宿命ともいえるのではないだろうか?

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2014年8月 6日 (水)

広島69年目の夏

今年も広島の原爆死没者慰霊式が行われた。

 この様子を毎年TVで観ているが、いつも思うことは広島市長のスピーチと首相のそれとの著しい温度差だ。ことしは特にそれが際立った。
 松井広島市長は原爆被爆地の立場として核兵器使用を廃絶に向けて国際的な違法行為とすべく努力していることを述べ、その思想として原爆投下をきっかけとしていかに平和が重要であり、互いに武力をもって争いを解決しようとしたり、国家間の軋轢を強めたりすることは戦争につながる行為であり、断じて行うべきではないと明言した。そして原爆の尊い犠牲と戦争の悲劇を経てはじめて獲得した憲法の重さを考えるべきであるという主旨のスピーチを行った。これは安倍首相の政策を本人が着席している目の前でズバリと批判したものだと私には思えた。
 それに対して安倍首相のスピーチでは、自分が核兵器廃絶に向けてさまざまな国際的な努力を行ってきたことを「アリバイ」的に述べたに過ぎなかった。しかし、これを聞いた人たちはおそらく私と同様に、その内容の空虚さを感じたであろう。言うことと実際やっていることとの落差があまりにも大きいからだ。
 かつてオバマ大統領が就任当初、プラハで行った核兵器廃絶に向けたスピーチは少なからずわれわれを感動させた。しかしオバマもその後、それを強力に推進しているようには見えないし、広島を訪れたこともない。むしろ世界情勢は中東やアフリカなどでの戦乱や大量殺戮を拡大させている。われわれはもはや「リベラル派」を信じられなくなった。
 一方で安倍首相はその「積極的平和主義」の主張において、集団的自衛権は戦争を抑止し、むしろ戦争を起こさないために必要だと述べている。ならば聞こう、これまでの歴史の中で、軍事力の増強や武力行使の可能性を拡大することが本当に戦争を抑止してきたと言えるのか? そのことが首相の言う「核兵器廃絶」とどう関係するのか?
 20世紀後半の東西冷戦下では究極の状態まで核戦力の増大が行われたが、結果両陣営間でそのバカバカしい国家予算の浪費と、それによる「ボタン戦争」への危機の増大とそれによる人類全体が危機に陥る可能性の増大が、両陣営での核兵器削減に踏み切らせることとなったと考えられている。これを以て互いの武力の増強が相手に戦争を起こそうという気をなくさせた例だと言えるのか? 
 それは違う。事実は、東西冷戦下で起きていた核兵器増強競争が、その一方の当事者である東側陣営が戦争によらずにその体制を崩壊させたことによって非現実的になったのである。
 歴史は語っている。際限のない武力増大競争は、いつか必ず戦争を勃発させる。当事者双方ともが、「国を護るため」に戦争を始めたと主張し、いったん戦端が切られた後には、互いに殺し合いによる憎悪の拡大に歯止めが掛からなくなり、全面戦争に突入する。
そして広島・長崎に原爆が投下された。自ら戦争を起こした当事者ではない生活者たちが無差別に大量に殺戮されたのである。この当時の政府の責任を安倍首相はどう継承しようというのだろうか? その重い問いに応えることなく国家間の緊張を高めようとする安倍首相の指向が、広島でのスピーチの空虚さとなって現れているのだ。

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2014年8月 5日 (火)

21世紀の資本主義社会論を巡って

 最近再び現代の資本主義社会の行く末を論じる本や討論が目につくようになった。私はまだ読んでいないが、ピケティーの「21世紀の資本論」が欧米でベストセラーになったそうである。

 先日NHK-TV "Wisdom"で21世紀の資本主義社会についての国際的な討論が放映されていた。途中から見たのでしっかり把握はできなかったが、「超訳資本論」の著者、的場先生がその中に入っていた。しかし彼の見解は今ひとつ歯切れが悪く、結局他の欧米の論者たちが作っている流れに逆らえなかったように見えた。そしてその後に的場氏に代わって出てきた竹中平蔵氏はむろん悪名高書き非正規雇用労働者の生みの親でもある資本主義推進論者なのでマルクスなど完全に無視である。私は的場氏と竹中氏の直接対決が見たかったが NHKは(おそらく意図的に)それを実現させなかった。
 いまの資本主義社会がもはや崩壊過程に入っていることは誰の目にも明らかであるが、それをどう捉えるかは、その立場によって大きく異なる。多くのいわゆる「リベラル派」といわれる識者たちは、資本主義社会における矛盾を「富の分配」の問題として捉え、社会的格差を少なくすることが目的のようだが、そもそも資本主義社会の本質とは何かについては誰も語ろうとはしない。そういう人たちはほとんどの場合「マルクス」を引き合いに出すことはなく「資本論」に展開された資本主義社会の矛盾は、20世紀末に崩壊した「社会主義国家」と同様に過去の遺物としてしか考えていないようだ。
 しかしマルクスの視野は単に富の平等な分配の問題だけではなく、むしろそれを一つの現実的問題として内包しつつも、より巨大な歴史的遠望が本質である。敢えていえば、人間の在り方そのものの変革であり、それを実現させるための社会と文明全体の変革である。だからこそマルクスの資本論はわれわれが資本主義社会の矛盾に生きている以上、避けて通ることのできない存在なのだ。
 いまや再び「自由と民主主義」を旗印にした欧米諸国(日本もその中に入るらしいが)とそれに対抗するイスラム原理主義者などを含む民族主義勢力と、1党独裁資本主義国となった中国や「強い大国」を目指すロシアなどのぶつかり合いという外観を呈している。
 その底流にはグローバル化した資本主義経済体制があり、これがすべての対立構造の原因になっているとさえいえる。
 問題は、グローバル資本として流通する巨大な過剰資本を奪い合う競争が世界全体を動かしており、その中でその資本の価値を生みだした労働者たちが過酷な生活のうちにバラバラに分解させられ、あるいは「ナショナリズム」という不満のはけ口を与えられながら、インターナショナルな階級としての連帯を阻まれているという事態なのだ。
 次から次へと労働力が安い国々の労働者を食い物にし、むしろ国家間の格差を利用して巨大な富を築き上げていくグローバル資本とそれを支配するたった1%にも充たない連中にたいして、世界中の労働者階級はなにも抵抗できずに「自由な個人」としてバラバラに孤立し、資本家的支配の道具にしか過ぎなくなった「民主主義」に支配され生活困窮と絶望に追い込まれている。
 このような現実から出発して、腐臭を放っている21世紀の資本主義を少しでも早く終わらせ、それに代わるべき世界レベルでの新しい経済体制と人々の新しい連帯を生みだして行くことが21世紀最大の課題といってもよいだろう。
 富の再分配や中間層の増大などのような資本主義社会の「つぎあて処方」(ケインズ型資本主義や北欧型資本主義など)はすでに20世紀にその限界と虚偽性を露わにしているではないか。
 だからいま、資本主義社会の延命にマルクスを利用しようとしたり、資本主義的「自由と民主主義」を普遍的なものとしようとする論者には警戒しないといけない。むしろ資本主義的「自由と民主主義」の虚偽性をあきらかにして、それがなぜ失敗し、なぜ多くの問題を生み出しているのかを直視し、同時にその矛盾を超えようとした旧「社会主義」がなぜ躓いたのかをあきらかにすることで、その矛盾を超えた人間のあり方をつかみとるべきなのではないだろうか?
 私自身がそれを理解したとはまだ到底いえないが、マルクスの理論をそのような視点から理解してこそ、その歴史的意義が発揮されるのだと思う。その上で初めてマルクスへの批判が可能になるのではないだろうか?

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