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2015年1月 9日 (金)

モノづくりの創造性を生活者の手に取り戻そう!(その2 Appleのケース)

 (その1からの続き)

しかし、いまの資本主義社会でのモノづくりは、こうした生産手段を占有する企業を経営する人々が支配権を握っているのではなく、そうした企業に資金を提供している人々、つまりその企業に融資している金融機関、その企業の株を買った投資家や株主などによって支配されている。生産企業の経営者は「機能資本家」としてそうした本来の資本家たちに支配され、その資本の増殖の機能を果たしているにすぎない。

 こうしてモノづくりは投資や蓄財の手段とされ、社会にとって必要な物資はすべてこのような仕組みの中でつくり出されている。
 資金は持っていないが、意欲と能力の高い若者達が新しくモノづくりの企業を立ち上げようとする場合、まずその起業の主旨をアピールし、資金を集める。そしてその資金で生産手段を購入し、そこに労働者を雇用してモノづくりを始める。いまや世界一の「企業価値」と言われるようになったアメリカのアップル社もこうして起業した。
  私は1980年代の初め頃からこの会社に注目していた。起業者のジョブスは天才的エンジニアであるウオズ二アックと組んで会社を興し、ガレージの中に作ったコンピュータ製造工場を立ち上げた。当時はコンピュータがIBMなどによる大規模なシステムとして構築されたものしかなく、それに対して「21世紀の知的自転車」として誰でも気軽に使えるホーム・コンピュータの実現を目指して出発した。私は このコンセプトはひとつの革命をもたらすだろうと予測していた。そしてApple IIを世に出し、やがてLisaを出して失敗し、その廉価版であるMacintoshを世に出すことで、この革命を現実のものとした。
 しかし、ジョブスは製品開発に集中すべく、企業経営の専門家を呼び込んだ。コカコーラ社のジョン・スカリーである。スカリーは投資家や株主の要望に応えるため「売るためにつくる」ことに徹しようとした。そしてその結果、彼と対立を深めたジョブスはアップル社をやめ、スカリーの経営方針で他の競争会社との「差別化」が曖昧となったアップル社の経営は危機に立たされた。
 その後、一時Next社やPixar社を立ち上げたジョブスが再びアップルに戻ってきたが、それ以後のジョブスはもはや以前の彼ではなかった。自身のカリスマ性を全面に出した経営で、企業イメージを高め、質の高いデザインによって製品を「付加価値商品」として売りまくることになったのである。そこに投資家が目を付けないわけがない。株価はどんどん上がり、ついに「世界一の企業価値」(企業価値とは投資家達が企業をひとつの商品のように売買の対象にする場合のとらえ方である)をもつ会社といわれるようになってしまい、完全に投資家や株主に支配された企業となってしまったのだ。いまやアップル社は、デザインや製品企画はシリコンバレーの本社で行うが、アジアやラテンアメリカの「途上国」での大量の低賃金労働によるモノづくりによって成り立っている。
 このアップル社の成長過程は現代のモノづくりのひとつの典型であると私は考えている。
 つまり、いまの資本主義社会では、だれでも能力のある者は起業することができ、それが成功すればだれでもその能力によってリッチな生活ができるようになる、というのが若者向けの「売り文句」となっているが、自分のやりたいことを社会に役立てようとすれば、どこかで必ずそれが資本のターゲットとなり、巨大な資本家たちの欲望の波に呑み込まれることになり、やがて、自分は「機能資本家」として多くの低賃金労働を搾取しながらそこから吸い上げた莫大な価値を巨大資本に捧げながら生きる位置に置かれていることに気付くことになるのである。もちろん気付くこともなく新興富裕層の一員となったことに満足している機能資本家がほとんどであろうが。
 こうして意欲ある若者の能力はことごとく資本に支配され、その機能となりモノづくりは資本のもとで「売るために」行われるようになる。そして生活者は資本家企業に雇用され賃金をもらい、そのお金で資本家企業が作ったモノを買うだけ(正確には「買い戻すだけ」)の「消費者」となる。
そう、だからこそ、ここでもう一度言おう。モノづくりの創造性を生活者の手に取り戻そう!と。
(以下次回に続く)

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