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2015年1月10日 (土)

モノづくりの創造性を生活者の手に取り戻そう!(その3 ソフトとネットの世界)

(その2からの続き)

 かつて、ホーム・コンピュータの目指した世界では、誰でも簡単に自分が欲しい機能を持つソフトウエアを作れる、という目標があった。Appleは最初、AppleSoftという名前のBASIC言語をApple IIに内蔵させることで、これを果たそうとした。やがてコンピュータのハード的レベルが上がり、それに対応してシステムやアプリの世界もレベルが上がったため、コンピュータ言語の世界も変化し、Macintoshには HyperCardというカード型データベース兼イベント処理型のソフトとその世界でアプリを自由に作れる言語(HyperTalk)が内蔵されるようになった。
 私はこのHyperTalkでいくつものスタック(HyperCardの世界で使うアプリをこう呼んでいた)をつくって楽しんだ。そこにはホーム・コンピュータの目指す、ユーザがアプリを自作する喜びの世界があった。
 しかし、やがてアプリをつくることは専門家の仕事になり、ホーム・コンピュータは「パソコン」として単にアプリを買って使うためのマシンとなってしまった。やがて、インターネットの普及によってパソコンは学生を始め、生活者の必需品とされるようになり、生活者はそれに高いソフトを買ってインストールして使うことを余儀なくされていったのである。ここで当初の「21世紀の知的自転車」という理想は崩れ去り、やがて生活者は稼いだ賃金の大半をパソコンやスマホの購入、そのアプリの購入、そしてインターネットの通信費などに支払わねばならなくなり、再びそれらを浪費する「消費者」に貶められてしまう道を歩むことになって行ったのである。
 インターネットというボトムアップ的ネットワークが世界規模で広まっていったときにチャンスはあった。それを世界中の生活者のイニシアチブの元に置くことができれば、ソフト的世界は、グーグルやマイクロソフト、アップルなどの巨大資本に牛耳られることのない自由な世界が切り拓かれる可能性があった。しかし、残念ながら生活者に組織はなく、世界中の生活者が連携する組織的基盤がなかったため、巨大な資本にバックアップされた強力な企業組織の前にその可能性はもぎ取られてしまったのだ。
 同様なことは電子出版の世界にもあった。紙の書籍の出版は出版業界という世界が牛耳っているが、それに対して、電子出版技術が進み、誰でも自由にインターネット上で出版ができる電子出版の時代がやってくるという期待があった。しかし、これもいまでは「ブログ」や「ツイッター」などという形でしか行えない。電子出版の世界では相変わらず「著作権」や「知的所有権」という形で大手出版業界がイニシアチブを握っており、生活者の自由な出版活動は押さえつけられてしまった。
 こうしてソフトの世界でも生活者は「つくるよろこび」や「生み出すよろこび」を奪い取られてしまったのである。
 一方、こうした巨大企業によるネット社会支配への反抗として「アノニマス」のようなハッカー集団が登場した。しかし、他方でそうしたパワーは、「サイバー戦争」に見られるような国家によるネットワーク支配体制に吸収されつつあるか、あるいはテロ集団化への危険な道を歩んでいるようにも見える。
 こうした世界の流れの中で生活者は翻弄され、稼いだ賃金をどんどん使わせるために資本のもとでモノがつくられ、生活者は、どこかの企業が激烈な市場競争の元で生み出した「スマホ」の新製品を競って買い、それによってこれもどこかの企業が少ない元手で多額の利益を得ようとして生み出したアプリ製品を買い、通信会社に高い通信費を払って、日がな一日、スマホの世界に入り浸らせられてしまっている。そしていつのまにか、そのコントロールされたネット世界から与えられた麻薬のような情報群に犯され、従順な「消費者」として何の疑問も感じなくさせられ、選挙があれば、それらの世界を牛耳っている巨大資本の頂点に立って、「経済成長(実は資本の成長のことである)こそわがすべて」などと叫んでいる権力者たちを選出してしまう。なんと惨めなことか!
そう、だからこそ、またまた言おう。モノづくりの創造性を生活者の手に取り戻そう!と。
(次回に続く)

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