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2015年7月16日 (木)

歴史は繰り返すのか?(その2)

ついに安保法案が衆議院で強行突破されてしまった。

ここで、いささか私事に関わることなので忸怩たる思いもあるが、前回のブログで書いたことの補足と、その後考えたことを記しておく。

 私は1960年の第一次安保闘争には積極的参加しなかった。だが1970年を挟んだいわゆる70年安保闘争には積極的に加わった。当時大学院を修了したばかりの私は大学に助手として残ることが決まっていた。しかし、学生達との何日にもわたる徹夜の討論の中で、私は彼らの主張の正しさを感じ取り、学生達とともに闘争に加わる決心をした。自主ゼミを開講したり、国会周辺のデモに参加し、官憲から暴力をふるわれたこともあった。しかし、やがて学生の運動は一方で過激さを増すとともに、同時に大衆の支持を失い、敗北していった。私は学生運動に関わったことを理由にそれから11年間にわたり事実上業務から外され、「干され」続けることになった。30歳代は研究者としてもっとも成長できる時期であったが、私はそれを完全に失った。何のために自分が存在してるのかが分からないということはつらいことであった。しかしもとより覚悟の上でのことであったから耐えるしかなかった。その間私はマルクス関係の本を読みあさった。
 幸いにも40歳を過ぎた頃、私はある教授のお陰で業務に復帰することができ、それから研究者として自立するための必死の努力をした。そしてなんとか大学での研究歴と職歴を重ね、10年ほど前に定年を迎えたのである。
 その間、世の中はバブルを挟んで「なんとなくクリスタル」なのに「限りなく透明に近いブルー」な時代を経て、長期の不況という事態に入り、学生達の就職もままならなくなっていった。一方で人々はほとんどが「中流意識」を持つようになるとともに他方ではいわゆる「格差社会」化が進んでいったのである。しかし多くの若者達は社会の動向や世界情勢への関心から遠のき、漫画やゲームに血道を上げ、中年層も、「IT革命」の中でビジネスに埋没していった。
 私はリタイアした後になって、自分の専門領域(デザインの創造性に関する研究)のもつ矛盾に悩み出し、悶々としながら再びマルクスの資本論と取り組む日々が訪れた。
 そのひとつの結論が「モノづくりの創造性---持続可能なコンパクト社会に向けて」(海文堂 2014)という本に書いた内容である。しかし、もちろんそれだけが結論でないことは充分に承知している。私の悩みはまだまだ続くだろう。
 そしてかつて学生運動を担っていた仲間たちは、いまやほとんどが「ノンポリ中間層」となり、もっぱら趣味の世界に生きているのを見て、実に苦々しい思いをするのである。
 結局、 安倍は「安保条約もPKOもあれだけ反対があったのに、いまは国民のほとんどが当然のことのように許容しているではないか」と言いたいのであろう。そしてまさに過去の反対運動はそのような結果を生んできたのである。「経済大国ニッポン」が音をたてて崩れていく中で、矛盾と腐敗だらけになった自民長期政権はいったん崩れるべくして崩れたのだが、それに取って代わろうとした民主党政権の見るも無惨な崩壊と敗北が安倍政権のいまをもたらしたのだ。「ほかの政党よりましだから」という理由で自民・公明同盟に投票した多くの人々はいまになって安倍政権の本性を知り、「なんとなくリベラル」な意識をよみがえられ、安保法案への反対運動に加わっているのかもしれないが、それは安倍政権の手のひらの上で展開されているデモでしかないのではないだろうか? 安倍はしばらくはガス抜きをやらせておけばいいと考えているにちがいない。そんな事情もあって、私はいまの安保法案反対のデモに加わることに積極的になれないのである。
 もちろん反対運動そのものに異議を唱えるつもりはない。もっと盛り上がってほしいと思う。だがしかし前回選挙で安倍自民党とその同盟である公明党を「なんとなく」支持した人々が多数派を占め、議会では安倍政権が提出する議案のすべてがどんどん可決されていってしまうことになるのはその必然の結果なのだ。いま安保法制に反対する人が60%を超えたそうであるが、ならば何故あのとき自民・公明に投票したのか? それへの反省からしか新たな状況は生まれないだろう。
 残り少ない人生でどこまでの「結論」が出せるのか分からない。しかしそこに向かって歩むしかないと思う。

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