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2015年8月25日 (火)

グローバル資本主義経済体制の崩壊が始まった(その1)

 今年の春頃からしばしばマスコミでも取り上げられてきた中国経済の低迷が、このところの世界同時株安で、いよいよ顕著になり、もはや「低迷」ではなく「崩壊」の始まりを予兆させるような状態となってきた。これは単に中国経済の崩壊だけではなく、グローバル資本主義経済体制全体の崩壊を意味するかもしれない。

 1980年代に鄧小平の「改革開放」政策により「市場経済」(資本主義経済体制)を導入し、世界市場の一角に参入してきた中国は、政経分離の立場を取りながら、共産党独裁政権のもとで、国内の労働者や農民の労働力を資本主義的な労働力商品化することにより、世界市場における労働者の生活水準の差からくる、労働力価格の大きな差額を強力な武器として利用して、瞬く間に、低価格商品で世界市場を席巻し、大きな貿易収入を得ていった。それをテコに、さまざまな産業を政府指導で育て上げ、労働者階級の一部は、賃金の高騰により奢侈品的生活資料を購入できるようになり、それによって今度は欧米や日本の資本家企業の生み出す奢侈品的「ブランド商品」にとって最大の消費市場を形成することになった。そしてそれらの取引が生み出す収益から国家は莫大な税収を得て財政も急速に豊かになった。
 1990年代のソ連崩壊後、東側の経済をグローバルな市場へと引きずり込み、紆余曲折を経ながらも2000年代初頭に何とかふたたび繁栄期を向かえたアメリカ、ヨーロッパ、日本を中軸とする資本主義陣営も、こうした中国を世界資本主義経済を支える格好の市場としてとらえたのである。ところがそれが2008-9年の「リーマン・ショック」でもろくも崩れたのである。 しかし、そのときには中国経済がまだ「成長期」にあったため、何とかこれをつっかえ棒にしてグローバル資本主義体制は立ち直ることができた。
 ところが、今回の世界同時株安は、世界資本主義体制にとって、もっと事態が深刻である。というのも、中国経済を支えていた製造業の貿易収入は、国内の労働力価格の高騰によって、競争力を失いつつあり、これまでに蓄積された資本を回転させる役目を果たしてきた不動産業も行き詰まり、個人投資家の投資意欲を削ぎ、政府がいくら通貨政策を駆使して経済体制を維持しようとしても無理な状態となってきたからである。
 そもそも、資本主義陣営は、第2次世界大戦以後、一方で社会主義体制がスターリン派による「一国社会主義政策」のもと、独裁的政治経済体制を固定化し、事実上、労働者・農民の政府ではなくなってしまったことによる経済の閉塞と停滞に陥ったことに助けられ、他方では、ケインズらの理論にもとづく、過剰資本の処理体制としての「消費駆動型」経済に変貌して行くことにより「市民主導の自由と民主主義」というイメージを確立していったのである。
 この体制は、実は外面的には「市民主導の自由と民主主義」に見えるが、経済的には、過剰消費によって成り立つのであり、過剰消費の最大の源である労働者の生活資料商品の奢侈品化やレジャー・観光などの第3次産業を頼みにする一方、もう一つの莫大な過剰消費の源である「戦争」を必須の基盤としているのである。事実、第2次世界大戦という莫大な人命と資源の消費による軍需産業の膨大な利益がアメリカの戦後資本主義体制の経済的基礎を築き上げたのであり、その後も、東西冷戦状態をテコとした朝鮮戦争やベトナム戦争などが経済成長には事実上「必要」であった。
 そしてレーガンやブッシュによるいわゆる「新自由主義」がこの過剰消費経済体制を「普遍的な経済体制」と勘違いして登場し、ケインズ派の国家主導型資本主義体制を「社会主義的」として批判し「自助努力」を旨としたレッセフェール市場体制に向かった。それが東西冷戦が崩壊することにより「グローバル資本主義体制」といわれる世界規模でのアンコントローラブルな経済体制をもたらしたのである。
その結果、莫大な過剰消費による廃棄物や資源枯渇による自然破壊がもたらされ、消費拡大を必須条件とする「経済成長」とそれによる自然破壊のアンコントローラブルな連鎖いう相容れない矛盾が急速に顕在化してきたのだ。
 中国経済もこの流れの中に組み込まれ、やがてグローバル資本主義体制を支える大きな柱になっていった。いまやグローバル資本主義体制は中国なしには成り立たない。
 そしてそのグローバル資本主義の世界的な資本の流れの中で莫大な利益が一握りの資本家のもとに集まり、そのもとで搾取され、資本家の「おこぼれ」からも取り残された、疲弊化する国々の労働者や農民はますます貧困化し、この状態に抗しようとする人々の闘いは民族対立や宗教対立という悲劇的な形となって現れ、その戦乱の渦の中で多くの人々が命を落とし、生き残った人々も生きるために生まれ育った場所を捨てて民族大移動を始めている。
  その一方で西欧資本主義国の政府に支えられた巨大軍需産業はこうした戦乱による危機感に乗じ、世界中でハイテク兵器を次々と売り込み、莫大な利益を得ている。
 まるであの強大なローマ帝国が崩壊するときのように、いま巨大なグローバル資本主義体制はその内包する本質的矛盾ゆえに、自らの存立基盤を食いつぶしながら崩壊しつつあるといえるのではないだろうか?

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