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2015年11月 5日 (木)

資本主義社会崩壊後の社会建設に関する重要な論議(その6)

(前回からの続き)

 このような社会的再生産の原則はあらゆる社会にいえることであって、これを資本主義社会においては、次の様な形で行っている。
 まず資本家がすでに所有する貨幣資本によって生産手段を買う。彼らはそれに労働力を買い取り、両者を生産過程に取り込んで生産を行うが 、出来上がった生産物には生産手段の生産的消費により移転した価値部分"c"と生産過程で新たに労働によって付け加えられた価値部分"v+m"が含まれている。ここで"m"部分は労働者が自分の生活資料として必要な価値部分"v"を超えて生み出す価値、つまり剰余価値部分である。資本家はこのmを含む生産物を当然のことの様に彼の所有物として商品市場に売りに出し、それを貨幣に換える。そしてそこから労働力の再生産に必要な生活手段分として"v"部分を労働者に貨幣で前貸しし、生産手段の消費分として"c"部分を補填するが、"m"部分は彼の利潤として獲得する。そして再び生産過程を繰り返す。
 資本主義社会では、貨幣資本を媒介にしてすべての生産物が商品として売買されるが、その中には労働力も含まれる。労働者は自分が生きていくためには自分の労働力を売りに出し、 労働市場(いわゆる就活や就職斡旋)でどこかの資本企業に労働力を商品として買われ(つまり雇用され)、資本家企業の生産過程で労働力の使用価値を発揮させられる(つまり労働を提供する)。資本家は労働の報酬のごとくに見せかけながら労働者に賃金として貨幣形態で生活資料の前貸しをする。労働者はそれによって他の労働者が生産した生活資料を「買い戻して」消費することによって彼の生活の中で労働力の再生産を行う。賃金はしたがって「所得」では決してなく、生きるために必要な生活素材の貨幣形態なのである。それは資本家にとっては労働力商品として買った価値以上の価値を生み出す商品の資本形態であり、それゆえ「可変資本」なのである。
この過程では最初に投じた資本はそのまま回収されそれに加えてmが追加されるが、それは再び生産手段の補填分と労働力の買いに回され、残りは資本家自身の純粋所得となり、どう使おうと彼の勝手なのである。
 社会全体としては各資本家間でm(実際には各資本家企業の資本構成などにより異なるmの平均)の分配がm/c+vという形で行われる。つまり不変資本部分の生産を行う資本家群と生活資料の生産を行う資本家群に対して全体の利潤を分配する形になる。
 したがってこの再生産過程では労働者にとっては自ら生産した生活手段を買い戻して生活を維持するためのv部分以外に「所得分配」などどこにも含まれないし含まれる可能性もない。したがってピケティーの様に資本主義社会の矛盾を「社会的富の配分の問題」としてとらえることは決定的に誤っている。
 こうした資本家的生産過程があらゆる生産手段生産企業や生活手段生産企業を含むさまざまな企業でさまざまなサイクルによって行われることで社会的総資本の再生産が成り立っている。ここではI(c+v+m)生産手段部門の企業群が生産する商品と生活手段生産企業群II(c+v+m)が生産する商品の間には、I(v+m)=IIcという関係が保たれ、この両者を=で結ぶのは貨幣資本による交換である。そしてこの再生産過程は資本の総循環過程でもある。
 まずは、こうした状態に置かれている現代の労働者階級が、実は資本のための労働という形でしか自己実現できないという自分たちの置かれた位置を自覚し、その意味で、この「自由と民主主義」が支配すると言われている現代資本主義社会が、厳然とした階級社会であることに気づくことが必要である。
  そして資本主義社会のこうした矛盾が克服された社会として、自分と社会の関係が透明で、明瞭な形のもとに置かれ、そこでは前述したような本来の再生産過程のうちに生産物の合理的な分配が行われるようになるべきだと考えてよいのではないか。

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