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2015年5月24日 - 2015年5月30日

2015年5月30日 (土)

憲法で保障される「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」から除外される住居

 今朝のNHK-TV「深読み」で、単身高齢者などの生活困難者の住まいの問題が取り上げられていた。

 非正規雇用を長年続けて高齢や病気で退職した人は、企業からの年金がもらえず、国民年金の月額5万円で生活しなければならない。いまの日本ではどんなに粗末な部屋でも家賃は月々数万円かかり、月額5万の年金から家賃を払うと食物も買えなくなる。しかも単身者が賃貸住宅に入るには保証人が要るが、多くの場合それができない人だ。そこで生活保護に頼ろうとすると、それを支給する自治体側は、住民登録がなければ生活保護費は払えないという。住むところが欲しいから生活保護を希望するのに住むところがないと生活保護費が払えないという、まったくの矛盾である。こうして多くの単身高齢者はいわゆる「ドヤ街」の簡易宿泊所に寝泊まりせざるを得なくなる。そしてその劣悪な環境での度重なる火災で多くの人たちが亡くなっている。
 この問題は高齢者だけではなく現役の若者にも当てはまるケースが多い。非正規雇用やアルバイトで生活する若者は、毎日生きていくには最低限必要な食物や生活資料を買うことができても、高額な家賃が払えないことが多い。このような生活を続けていけば結婚して家庭を持つなどということは「夢のまた夢」になっていく。そして世の中は「少子化」と「単身高齢化」が進む。
 ここでもう一度なぜこのような社会になってしまったのかを考えてみよう。いま社会に暮らす人たちは、何らかの形で社会に必要な労働を行い、その働き先から得た賃金で生活に必要なものを買って生きている。そしてこの「生活に必要なもの」の中には当然住居も含まれる。かって、いわゆる「高度成長期」に労働者であった人たちは、なけなしの退職金をはたけば何とか定年退職するまでに自分の家を持つことができたが、その後の世代で日本の社会を支えてきた人たちは徐々にそれが難しくなってきた。それは非正規雇用が急増し、いわゆる「分厚い中間層」が「プチ富裕層」と「貧困層」に明確に分かれていったととに呼応する。
 実は日本の社会はここからすでに持続不可能な社会へと落ちこんでいくことになったのだ。その原因は大きく分けて次の3つがある。

1  どんな社会にあっても、病気、高齢など何らかの理由で働けなくなった人々の生活を社会全体が支えていかねばならないが、いまの政府は基本的に持続的な社会保障の体制と見通しが欠けている。

2  いまの社会ではすべての生活必需品が商品として市場を通じて流通し、それらを生産した労働者もこれを買い戻すことができなければ生活できなくなる。住居は不当にもその中でもっとも高額な商品になっている。その原因はもともと労働生産物ではなかった「土地」(したがって本来の意味での価値がない)がべらぼうな高額商品として売買され資産価値化されるようになったからである。

3  労働生産性が上がり、単位時間あたりに生み出される生産物量が増大し、生活必需品のコストが下がれば、それを生産する労働者が同じ時間働いてもそこから生み出される価値は飛躍的に増えるはずであり、それはすべての社会のために働く人たちが共通に必要とする「社会的ファンド」(これが社会保障の基盤である)として還元されるべき価値であるが、現実には、生産性が向上すれば雇用は減り、労働賃金は低下する。そして膨大な量のより低賃金な労働を海外に求め、それによって生み出された膨大な価値部分は、労働者を雇用する企業によって競争の中で経営利益をあげるために投資され、働く人たちの手に決して戻って来ない。

 要するに資本主義経済体制における蓄積の法則が、資本家的企業の共同利益代表となった政府の主導のもとで進められ、そこで実際に日々働いて資本家たちのために価値を生み出す労働者は、「経済成長」のための使い捨て道具に貶められてしまっているのである。
 円安で輸出企業は莫大な利益を上げ株価が上がり投資家たちは大もうけしている。しかし輸入食品や輸入原材料に頼る日本の生活必需品販売企業は円安による利益縮小を理由に生活必需品商品を値上げする。そして現政権は、大企業が儲かればそのおこぼれで賃金も上がり生活の良くなる、などという嘘っぱちのイメージを宣伝し、インフレによる物価の上昇を尻押しする。
 かつての「高度経済成長」を支え資本家のためにその人生を捧げ尽くした人々の多くは、いま生活困窮者として住む家もなく、ドヤ街の簡易宿泊所で死を待つことしかできなくなっている。

 「 日本国憲法第二十五条: すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

 この国にもうすでに憲法など存在しないのかもしれない。

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