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2015年11月 9日 (月)

「モノづくりの創造性」出版後の状況などについて

 昨年末、「モノづくりの創造性---持続可能なコンパクト社会の実現に向けて」(海文堂)という本を、広島国際大の井上先生と共著という形で出版した。このことは、このブログの2014 .12.17「モノづくりに革命を! 「モノづくりの創造性」いよいよ出版」というページで書いた。そしてそれから11ヶ月が過ぎようとしているが、残念ながらこの本はあまり売れていないようである。

 というのも、まず、出版が決まって出版社から知らせがきたときに、愕然としたことがある。それはまず初刷りはたった300部だというのである。「なぜ、最初からそんなに少ないのか?」と問うたところ、書店への配本を扱う業者がこれを決めるのだそうだ。要するに、有名出版社であるかどうか、本の表題や内容が「売れそう」か、といった業者の勘で、あまり売れそうもない本は書店で売れ残り、バックされてくる恐れがあるので、配本数をできるだけ少なく抑えるということのようだ。これでは最初から「勝負あった」も同然で、案の定、私が知り合いにこの本を紹介しても、「書店に置いてなかった」と言われることが多かった。書店に並んでいないと本屋におもしろそうな本を探しに来た人の目にも止まらないことになる。こうなると通販を頼りにするしかないが、この出版社では、あまり通販に積極的でないため、これも望み薄であった。まさにガックリ、「戦わずして勝負あり」である。こうして私は現代では出版物の発行は出版社のみならず、その売れ行きへの予想判断を握る配本業者の手に運命が握られていることを思い知らされたのである。 残念ながらこのままでは初刷りがなくなり次第、絶版ということになりそうだ。 たったの300部たらずで私が自身のデザイン研究の集大成として一生懸命に書き上げた本が世の中から永久に消え去ってしまうのはとても残念でならない。

 さて話が横道にそれてしまったが、「モノづくりの創造性」に私が盛り込もうとしたことは、人間がホモ・ファーベルとしてその歴史を歩み初めて以来、その社会を土台で支えてきた「モノづくり」に内在する創造性とは何か、を考察することであった。しかし、一方でモノづくりの本質がマルクスによって「労働過程」の論理として明らかにされて以来、その歴史的特殊形態であるいまの資本主義社会でのモノづくりの異常性や矛盾について何ら触れられることなく、「デザインの創造性」というコトバだけがもてはやされている事態を私はある意味で危機であると実感している。本来のモノづくりの創造性がいまどれほど歪められ、ひいてはそれが地球環境の危機をさえもたらしつつあるという事実を訴えたかったのである。
 そのため、「モノづくりの創造性」の内容は3部に分け、第1部で、モノづくりの歴史と、その視点からの現代社会のモノづくりの矛盾について述べ、第2部では、本来あるべきモノづくりに通用する創造性に関する考察や実験そしてそこから得られる論理について述べ、第3部で再び、歴史的な視点から、われわれが目指すべき次世代社会でのモノづくりについてを述べて結びとする、という構成で書いた。
 しかしいま、この3部構成が必ずしも有機的なかたちでうまく結びついていなかったかもしれないと反省している。どうも第2部だけが「おもしろい」と言ってくれる人が多く、それを挟んだ第1部と第3部には違和感を感じるという人もけっこういる。もちろん読む人の立場や視点からこういう評価の違いが出てくるのは当然予想はしていたが、私としてはこの辺を少し考え直さないといけないと感じている。一般的なデザインの創造性の本として見れば、多分第2部はそれなりに面白いと思われる(あるいはこんなことは分かりきっていると断じる人もいるかもしれないが)。 しかし、第2部と第3部はいわゆる「イデオロギー」的内容と受け止められ、嫌悪感を感じる人もいるのかもしれない。
 しかし、よく考えて欲しい、誰の目にも過剰なモノとコトに溢れているこの社会で、私たちはなぜ何のためにモノを作り、使うのか?いまの社会で本当に私たちの意志で私たちに必要なモノが作られているのか? いったい今の社会では誰が何のためにモノを作っているのか? そしてその過剰なモノで溢れた社会が本当に「豊かな社会」なのか? それは社会全体を、いや地球全体を危機に陥れているのではないか?そこでの「創造性」はどんな役割を持たされているのか? 
 このような考えを巡らせることが出来る人には、「モノづくりの創造性」は必読の書であると私は自信をもって訴えたい。
 なお、この本の内容概説はブログの2015.08.16 「モノづくりの創造性 著者解説パンフ」のページからPDFファイルでダウンロードできます。また書店になくても、まだ通販では簡単に買うことができます。

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