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2016年3月 3日 (木)

アメリカの大統領選挙と労働者階級の位置

スーパーチューズデイでアメリカ大統領中間選挙の趨勢がほぼ決まったようだ。

共和党は不動産王のトランプが最有力で民主党はクリントンということらしい。共和党ではトランプの「偉大なアメリカを!」のスローガンのよるお笑いタレント顔負けの過激な発言が受けて、ごりごりの保守主義者ルビオ、クルーズ候補も負けを認めざるをえなくなっているが、民主党では自称「社会民主主義者」サンダースが「私が大統領に選ばれるか否かよりもアメリカに政治的革命を起こすことが私の目的だ」と言って予想以上に受けている。

 この状況をどう見るか。識者やマスコミによればアメリカ国民が現状の政治にうんざりして何か別のあたらしいものを欲しがっている、と言っている。たしかにそうかもしれないが、もっと深層にあるアメリカの労働者たちの意識を考えてみよう。
  マスコミなどでは「アメリカ国民」ということばで一括りにされてしまっている人々には、一握りの大資本家とそのおこぼれにあずかる富裕な人々のグループと、どんどん暮らし向きが悪くなっていく絶対多数の労働者階級が含まれている。現状への不満は貧困層においては「格差の拡大」に向けられ、富裕層においては「弱くなったアメリカ」への不満として爆発し、アメリカがもっと強くなり再び世界支配の頂点に立って欲しいという願望として表現されているのだと思う。
 だれでもが知っているようにいま世界の富の大半が上位1%以下の人々に集中し、その他99%以上の人々は働いても収入が減り、多くの人々は働き口すら奪われてどんどん暮らし向きが悪くなっている。アメリカでも例外ではない。しかし多くの労働者階級の中には、共和党支持者もおり、彼らは支配層のイデオロギーにどっぷり浸透させられているため、「強いアメリカを!」に拍手を送る。
 2008年の大統領選では、1990年代以後、なんとか東西冷戦後の世界を「一極支配」してきたアメリカが、それに反旗を翻した中東の国々やテロリストからさらなる手痛い打撃を受け、「強いアメリカ」を全面に出してアフガニスタンやイラクに軍隊として若者を送り出してきた共和党ブッシュ政権が多くの死者を出しながらその闘いに勝てず、アメリカ全土に厭戦気分が拡がっていたことをきっかけに、「リベラル派」オバマがその波に乗って登場した。
しかし「Change America! Yes, We can.」を旗印に登場したオバマもそのかっこいい主張とは裏腹に、共和党などの反撃をうけて国内外の事態はさっぱり改善されず、そこにシリアの内戦など中東の混乱が始まってしまった。経済的にも 2009年の金融危機を何とか乗り越えたが、その結果は一部の富裕層への富の集中と多くの労働者の貧困化を招いている。
 そして今回の大統領選でオバマの後任者が選ばれるが、その選挙ではもっぱら白人系、黒人系、ヒスパニック系、アジア系といった、肌色や人種で「系」が分けられて支持層が論じられている。しかし、いまやそんなことで支持層を識別すべきではなく、グローバル資本家のグループとして世界中の労働者が働いて生み出した富を独り占めしている超富裕層およびそのおこぼれにあずかる富裕層や中間層というグループと、「働けど働けど暮らし楽にならざる」労働者階級との識別こそ重要ではないのか? こうした労働者階級には白人も黒人もヒスパニックもアジアンも入っている。しかも世界中の労働者階級は国境を越えて共通の立場に立たされている。みな自分たちが働いて生み出した富を不当に資本家たちに搾取されている人々である。
 すでに資本家達は国境を越えてグローバルな存在として世界中の労働者から労働成果を搾取し彼らの間でそれを分け合っている。しかし労働者階級はいまだに狭い国境の中に閉じ込められて、「ナショナリズム」や「国家アイデンティティー」によって他国の労働者階級や他民族と対立の構造を持たされている。実はこうした対立構造はグローバル資本家どうしの競争のための手段であって、労働者階級の国際的連帯を阻止しナショナリズムを煽って「国民」を総動員して「国家」という幻想共同体によって自らの利害を護ろうとするのが彼らの戦略なのである。そして展望を見失った労働者階級の側も宗教の対立などという構造を持ち込まれ、たがいに殺し合いをし合うという惨めな状態に追い込まれてしまうことも多い。
 こういう目でアメリカの大統領選挙を見ると、アメリカ労働者階級の怒りが正しい方向に向けられていないことが見えてくる。
自分たちが働いて生み出した富は、自分たちの手にとりもどそう! そして世界中で同じような立場にある人々とそれを分かち合おう!
 これこそいま世界中の働く人々に必要なスローガンではないだろうか?

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