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2016年3月14日 (月)

閑話休題:漱石の「夢十夜」について

いま朝日新聞に漱石の「夢十夜」が連載されている。

この最初の第一夜を読んで、驚いた。まるで漱石らしからぬロマンチシズムの香りがする作品だったからである。筋書きは新聞を読めば分かるのでここでは省略するが、一人の男と女の間で起きた「死」のイメージである。この短い文の中にこの男と女の間にある時を超えた深い愛情がみごとに表現されてる。
また第三夜では盲目の子供を背負ってひたすら薄暗い道を歩く男の暗く恐ろしい運命が描かれている。その男は自分がどこに向かうのか、なぜその子供を背負って歩くのか分からないうちに結局背中の子供に導かれて100年前の殺人現場に連れて行かれることになるのだが、最後に背負った子供がその殺した男の生まれ変わりであることが分かるという話である。
まだ連載途中であるが、これ以外の話も非常に象徴的でさまざまなイメージや意味を連想される力を持っている。ある作品はシュールリアリスティックでさえある。しかもそれぞれまったく関連のない別々の話である。
私は漱石という作家のずば抜けた表現力とボキャブラリーの豊富さにいまさらながら舌を巻くと同時に、短編という形式は、その中に凝縮された表現を行うことでかえってさまざまな意味や連想を生み出すということをあらためて感じた。多くは教訓や特定の意図を伝える内容ではなく起承転結もはっきりしない一見断片的で尻切れのように見えながらそこになにか「ズキリ」としたものを感じさせるすごさがある。小さくて重い鉛の球の様な作品集である。
何だか自分もこういう短編を書いてみたくさせる。そういう意味では挑発的な作品群でもある。

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