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2016年6月24日 (金)

労働者階級の「右傾化」を巡って

イギリスのEU離脱を問う国民投票が世界中の投資家たちの注目を集めている。離脱ならポンド安となり、グローバル大企業がイギリスから撤退し、イギリス経済は危なくなるという見方である。一方で「離脱派」には現状に不満を持つ労働者階級が多く含まれている。現状では移民の数がどんどん増え続け、低賃金で働く移民労働者が増え、イギリス人労働者の賃金水準や雇用が下がるというわけだ。つまり投資家に代表される資本家階級はEU残留を望み、労働者階級は離脱を求めている比率が高いと言えそうだ。 昨今の政治状況は複雑で、「離脱・独立派」がいわゆるナショナリスト的右翼であるとは決めつけられないが、一般的傾向として、ヨーロッパの労働者階級は、現状に不満を持ち、それがEUによる締め付けのもとで移民抑止への対策ができないことへの不満として「EU離脱」という方向を求めているようだ。

 そしてアメリカの大統領選挙の前哨戦を見ても、労働者階級の生活の現状への不満が既存の民主党や共和党候補への不満という形で爆発し、トランプやサンダース支持という形で現れている。トランプは過激な発言で「アメリカ第一」をアピールし、既存の政党指導者にはないカリスマ的雰囲気を持っているということと、サンダースはこれまでアメリカでは「禁句」とされていた「社会民主主義」的政策を掲げ、「政治革命」を目指すことを主張しているからであろう。

 こうした傾向の背景には、「自由・平等・民主」を表看板としている欧米資本主義諸国の 労働者階級全体がいまの自分たちの生活状況に不満や不安を持ち、「なんとかしなければいけない」という意識を共通に持っていながら、そのはけ口を本来の意味での階級意識に結びつけられずにいるということであろう。
 その背景には、自分たちに働く場を与えてくれる資本家企業がもっと利益を上げられるようになり、雇用のチャンスやその分け前を労働者にも分配してくれること(トリクルダウン)を願う、という意識構造が根強く存在していることであろう。
これはひとくちに言えば「賃金奴隷根性」 である。「格差是正」「雇用の拡大」「賃金水準の向上」が最大の政治目標になっていることにもそれが現れている。
 本当の問題はこうである。
何故、大量の移民を生みだす中東での悲惨な状況が起きているのか? 
何故、そこから命からがら逃げ出してきた移民たちを、労働力商品市場での競争相手としか見ることができないのか? 
何故、あの悲惨な⒉回の世界大戦の反省として生まれてきたEUでの内部矛盾を、国境を超えた労働者階級の連帯の形成という方向ではなく、国境線を高くしてナショナリズム的に排除しようとする方向でしか解決しようとしないのか? 
そして何よりも、何故、全世界で社会のために働く人々が生みだした膨大な富を、一握りのグローバル資本家階級が独占し、その利益の奪い合いの闘いを展開している状況に圧倒的多数である全世界の労働者階級が団結して対抗できないのか? 
つまりとっくの昔に国境線を越えてグローバルに支配を拡大している資本家階級に対して各国の労働者階級が未だに一国内での「国民的利害」という形でしか対抗できないのか? である。

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