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2016年9月29日 (木)

大学の軍事技術開発研究受託をどう考えるか?

このところ、大学での自衛隊からの軍事技術開発研究受託が問題となっている。私が大学在職中には学術会議がこうした流れに全面的に反対の立場を表明していたし、学生からも猛反対が出されることが予測されたので、大学でもこうした軍事技術の開発研究はほとんど公には行われていなかった。しかし、個人としての各教員はそれぞれの考えにもとづき、こうした委託を積極的に受け入れていたケースもあったようである。

 その後、世の中は様変わりし、最近は自衛隊の存在を肯定的にとらえる人が多数派となった。 その背景には中国や北朝鮮の急速な軍拡や領土拡張、核開発などに対して「国を護るために自衛隊は必要だ」という意見が主流になってきたことがある。安倍政権はそれに便乗して憲法の改定を行おうとしている。
 特に最近は自衛隊からの研究受託は「デュアりティー」と称して、軍事技術と同時にわれわれの生活に関連した民間の技術開発にも用いられる可能性が高い研究が多い。これに対して、学術会議は、大学での自衛隊からの技術開発研究委託が民間にも活用できる場合は、これを受け入れてもよいのではないか、と言い出した。しかし、大学関係者からはその場合、どこまでが軍事技術でどこからが民間に活用できる技術なのかの判別が難しいという反対意見もだされている。この議論を見ていて私は次のように思った。
 そもそも第二次大戦の戦勝国側では、アメリカもヨーロッパもかつてのソ連でも大学の研究が軍事技術に結びつくことに抵抗はなかったようである。例えば、アメリカでは東西冷戦を背景にしてソ連との激しい軍拡競争の中で、産軍学コングロマリットが形成され、有力な理工系大学とハイテク企業が巨額の軍事予算を大学研究費として積極的に導入し、核ミサイル技術などの開発と同時に宇宙開発技術も急速に進展した。確かに戦争は技術を「進歩」させるのである。
  しかし、その結果はどうであったか。「核抑止力」の名の下に、膨大なカネが使われもしないミサイル網やミサイル探知システム、原子力潜水艦などなどに投じられ、やがてはそれを維持管理するための莫大な国家予算が組まれ、東西冷戦の終息後、ロシアではそれが国民への大きな負担となって経済的苦境に苦しんだ。アメリカではその後、軍事費が削減され、湾岸戦争やアフガニスタンなどでの軍事的行き詰まりなどで「世界の警察官」としての役割を放棄し、オバマ大統領はついに世界的な核廃絶を訴えるまでになった。いま日本ではその二の舞が始まりつつあるともいえるだろう。
 自衛隊からの研究委託が軍事技術に結びつかないはずはないのである。大学やそこの教員がこれを受け入れたがるのは莫大な研究費がそこから獲得できるからなのである。その背景には今世紀の初めに、文科省が国立大学への研究予算を大幅に削減し、独立行政法人化とすることで外部資金を積極的に導入させることでそれを補おうとしたことにあるだろう。そこから大学での研究が企業の資金と結びつき、いわば企業の利潤を上げるための研究開発の一環に組み込まれていったという経緯がある。
もし自衛隊の軍事技術研究開発と一線を画そうとするならば、防衛省からの研究費がなくても済むように文科省が大学の研究予算を大幅に増やすべきなのである。
 すでに日本の国立大学はその自律性を失い、いまや産業界と国家の軍事政策に追従しその「下請け」となりつつある。本来、大学の研究とは、企業の利益や軍事技術という大量破壊大量殺人のためのおそるべき技術の開発やそれによる莫大な無駄遣いのためにあるのではないはずだ。歴史の中での将来を見定め、いまは何の役に立つかは分からないが、人類の発展のためにはいずれ必要となるかも知れない研究のタネを生みだして行くことにあるのだと思う。
それにしてもいまの大学の「リベラル派」研究者といわれる人たちを含めて研究者の意識にある支配的思想風土は、戦争というものの本質とそれがもたらす結果、そしてそれがなぜ何回も繰り返し起きるのかという根本的問題に対する問いの意識がほとんどないことには失望するばかりである。「現実的な考え方」として安易に受け入れる前に、これまでの戦争の内実とそれを可能にしてきた軍事技術を生みだしてきた人々との関係を振り返るべきではないだろうか?

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