« トランプ次期大統領に関する論議を巡って(2) | トップページ | トランプ次期大統領に関する論議を巡って(4) »

2016年11月13日 (日)

トランプ次期大統領に関する論議を巡って(3)

 トランプ次期大統領をめぐる論議はまだ続く。今朝の朝日新聞「トランプ ショック どう考える3」では歴史学者エマニュエル・トッドの見解が載っている。トッドは選挙前から「トランプは支離滅裂でも、支持する人たちの反乱には理がある」と言っており、「米国は大転換のとばぐちに立っている」と見ている。トッドは、「生活水準が落ち、余命が短くなる。自由貿易による競争激化で不平等が募っているからだ。そう思う人が増えている白人層は有権者の4分の3。その人たちが自由貿易と移民を問題にした候補に票を投じた」だから選挙結果を「当然の結果」と受け止めている。そしてむしろ「奇妙なのは、みんなが驚いていることだ」という。

  朝日の編集委員大野氏は、これを「世論調査の予測が外れたのはエリート層が社会の現実を把握できていなかったからであり、この選挙結果が暴露したのははエリート層と大衆層の断絶の深さともいえる」とし「深刻な分断を放置した社会では民主主義はきしむ」といっている。まさに日本のエリート層代表のマスコミ朝日新聞にはショックだったのだと思う。朝日新聞もそろそろ「大衆の味方」のふりをしながら実はエリートのオピニオンリーダー(リベラル派支配層のイデオローグ) である ことを反省すべきときがきたのではないだろうか?

それはさておき、前回のアメリカ青年H氏の見解と考え合わせてみると、確かにアメリカ的民主主義が危機にあるといえるだろう。しかし、私はこれを「民主主義の危機」ではなくて、「民主主義そのものの矛盾の現れ」というべきではないかと思う。

 民主主義(正確にはブルジョア的民主主義)がその誕生から持っていた、支配層と被支配層間の分断の隠蔽という本質的機能の矛盾がこうしたほころびとして現れるのだと思う。民主的選挙による議会議員選出に始まり、政治運営のトップを選挙で選び、それが「民意の反映された代表」として国家を動かしていく。しかしそれを支える土台としての資本主義経済体制とその上部構造である「国家」はほとんど絶対的存在として動かし得ない。そして何よりもそうした社会構造を「普遍的な社会の形」と見なして支配する支配的イデオロギーが「社会常識」とされ、それに基づいた法体系とコンセンサスが形成される。そのコンセンサスを左右するのがマスコミであり、「中立」という名目でこの社会の支配層の情報宣伝部門の役割を果たすことになる。
 だからマスコミの論調はいつもこの社会の深層にある矛盾を突き出すことができず、同じ土俵の上で「進歩派(リベラル)」と「保守派」の対決としてパターン化され、あまり生産的でない馬鹿げた議論を繰り返す。被支配階級はつねに「大衆」とか「市民」とか言われて見かけ上は支配層から「市民本位の立場に立つべき」などと持ち上げられるが、本質的には決してその被支配階級である立場は変革されない仕組みになっている。だからそうした矛盾に起因する様々な不満をはぐらかすための「ガス抜き」が用意され、無責任で過激な発言や突飛なパフォーマンスがもてはやされるようになる。そしてこれがポピュリズムを生みだす。だから今回の大統領選やイギリスの国民投票の様な結果が生まれる。
  いま世界中で現れている危機の本質はこうした階級社会の統治システムがもう限界に来ているということを示しており、この支配構造の矛盾を根本から変革する必要に直面しているのだと思う。
  問題は長い間支配階級によって「衆愚化」され続けてきた被支配階級が事の真実を理解できないまま内部分裂し、互いにせめぎ合っていることである。そしてそこにはつねにこの被支配階級間の分裂を支配階級の維持のために利用しようする方向へのイデオロギー(国家主義・民族主義など)が注入され、その先にブルジョア国家間の戦争という形でもっとも残酷な結果を生む危険を帯びているということではないだろうか。
 アメリカの様な多民族国家ではこれがレイシズムのような形で表れるが、日本ではこれとは違った形で同じ労働者階級内での「差別化」が進み、やはり同じ階級内部でのせめぎ合いが激化している。ひとまずいまはこうした無益なせめぎ合いを止めるために支配的イデオロギーの虚偽性に抗して事の真実を見極める能力を持つことが必要なのではないだろうか。
(続く)

|

« トランプ次期大統領に関する論議を巡って(2) | トップページ | トランプ次期大統領に関する論議を巡って(4) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/64485727

この記事へのトラックバック一覧です: トランプ次期大統領に関する論議を巡って(3):

« トランプ次期大統領に関する論議を巡って(2) | トップページ | トランプ次期大統領に関する論議を巡って(4) »