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2016年11月23日 (水)

「グローバル化」とは何か? マスコミでは語られない事実

 今朝のNHK-TVで、NHKの解説委員達による「グローバル化の功罪」という討論会番組をやっていた。

 そこでは、いまの「グローバル化」によって進んだアメリカやヨーロッパなどでの中間層の没落・分断化と「グローバル化」によって肥え太った一握りの「既得権益」層への反発がアメリカ大統領選やEUからのイギリス離脱などさまざまな形で現れているが、「グローバル化」そのものは、国際的な貿易による相互依存関係を築くことは、かつてのブロック経済化による世界大戦の苦い経験に基づくもので、歴史的に見てもこれからの世界に必要なことであるとし、トランプ次期大統領が進めようとしたTPPからの撤退や排外主義的主張はそれに反する方向だという考え方が合意されていたように見えた。しかし問題は「グローバル化」の中身とは一体何なのだろうか?この討論会ではそれが深く取り上げられていなかったと思う。そこで私は次のようにとらえ直してみた。
 「グローバル化」をとらえるには、まずはおカネの動き、商品の動きそしてヒトの動きのグローバルな動きを見ることが重要であろう。
 もっとも「グローバル化」の影響が顕著なのが金融・為替市場でのカネの動きであって、差益によって一瞬にして莫大な富を左右しようとする投資家たちの思惑によって為替市場では一日160兆円ものカネが動いているそうだ。
 そして次には商品(モノ)の国際市場での動きであろう。これは消費財、生産財など、社会的生活に欠かせないモノである。ここでは熾烈な価格競争が展開されている。
そして最後はヒトの動きであるが、ここで気をつけねばならないのは、「ヒト」の中身である。大きく二つの相対立するグループがある、一つは企業の経営者(機能資本家)や持ち株会社、金融・投資機関の経営者のグループ(本来の資本家)、そしてもう一つは資本家層とそれらの経営する企業に雇用されて働く労働者のグループである。
  この2者の立場は決定的に異なる。前者は後者の生みだす価値を自らの富として獲得しながら、それを市場に投入することで大きな利益を獲得することをミッションとする「人格化された資本」のグループである。後者は自らの能力を資本家階級に売りに出すことによって、資本家に雇用され、自分の能力を無償(なぜ無償であるかについてはひとまずここでは述べない)で資本家階級に渡し、それと引き換えに自らの労働力を日々の生活で再生産するために必要な消費財の価値に相当する労働賃金(労働力の維持費であって決して報酬などではない)を受け取とることによって生活を成り立たせている人々「労働者階級」というグループである。
 そしてヒトの「グローバル化」は前者の資本家階級の「グローバル化」であって、後者の労働者階級ではない。資本家階級はその富であるカネの動きに関しては国境がないといってもよく、蓄積した彼らの富は全世界を駆け巡ぐりながら膨らみ続けている。
  一方労働者層は、たとえ、企業からの海外派遣などが増えていてもこれは労働者の「グローバル化」とはいえない。むしろ経営者の仕事の一部を分担する労働という意味しかもっておらず、経営者の「グローバル化」の一環を成しているに過ぎない。また労働者の中でも頭脳労働などである特別な能力を有する者は、自らの能力(労働力)を国際労働市場でも高く売ることができるので、いわゆる「頭脳流出」という形で国境を越えて雇用されることも多い。しかし本来の労働者は、その国の労働賃金体制に拘束され、その国の「生活水準」によって決まる賃金を受け取って生活する。だから労働者にとってはつねに国境の壁が存在する。
 その国境の壁の中での労働者の生活はどうであろうか? 海外で作られた安い食料や、生活資料が資本家達の「自由貿易市場」から入ってきて国内市場に出回り、生活費は以前より安くて済むようになったと思っている人たちもいるだろう。しかし、その背後では、これまで自分たちの仕事だった農業や下請け企業の工場での労働は、価格競争に負けて経営破綻で成り立たなくなり、慣れない職種や非正規雇用など労働条件の悪いところで働くことになり、子育て世代の主婦までもが働きに出ないと家計が切り回せなくなっていく。
大企業の労働者は「生産の合理化」と称してロボットや機械に自分たちの仕事が奪われ、配置転換や人員削減が進む。つまり海外からの安い生活資料が入ってきて市場を席巻することに反比例して自分たちの仕事が失われていく。そして生活必需品が海外からの安い商品で済むという理由でそれに合わせて賃金水準も据え置きか下げられていく。
 一方海外の労働者の生活はといえば、例えば中国や東南アジア諸国、また中南米など、国際商品市場で安い商品を大量に生産する国の労働者達はほとんどそうした商品を生みだすグローバル資本やその系列企業に雇用されて働く人たちである。彼らはいわゆる先進資本主義諸国の労働者よりつねに低い労働賃金を維持されながら、資本家達が国際市場に安い競争力のある商品を送り込むことを可能にしている。
 いまもし、世界中の労働者がすべて同じ価値基準で「同一労働同一賃金」になれたとすれば、いまのような馬鹿げた市場競争も国による労働賃金の差はなくなり、したがって不法移民の大集団が国境を越える様なこともなくなるはずだ。
  しかしグローバル資本家達は一方で各国の生活水準の差を利用して巨額のマネーを手にしながら、他方で「自由貿易こそ世界に平等と民主主義をもたらす経済的基盤である」と欺瞞に充ちた主張をし、そうした虚偽のイデオロギーによって「リベラル派」が生みだされる。だが彼らは決して世界中の国々が同じ生活水準、同じ労働賃金水準になることを認めようとはしない。
 他方、これにまっこうから反対し、移民排斥、自国優先、人種差別、 などを声高に唱える連中は他国の労働者階級の実情を見ようとはせず、相手国の支配層である資本家階級の主張に直対応するのである。これらは同じコインの表と裏の関係でしかない。
 われわれはもっと賢くならねばならない。マスコミの「中立的」論調などというごまかしに騙されず、この偽りに充ちたグローバル資本主義の現実の矛盾に充ちた姿を曝き出す必要があるのではないだろうか?

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